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第9話、やらかしてしまったので、買い出しに行きます!


 翌朝、メイアに早くに起こされた。料理番のお仕事だ。


 調理場に行き、朝はどうしようと考えていたら、今日の当番だという騎士がやってきたので、まずはご挨拶。


 昨日のメシ、美味かったよ、と言われ、朝からいい気分。先輩騎士たちの態度が、冒険者相手とは思えないほどよかったので、私も相談してみる。


 そして発覚した問題。朝はここでの定番であるオートミールと麦パンにしたが、オートミールは湯ではなく、牛乳を使った。


 メイアに言えば『取り寄せます』の一言で本当に調達してくれるのは実にありがたい。……っと、それどころではなかった。


 私はアルフレド副団長の元へ行った。レクレス王子もアルフレドも、よほど忙しくなければ食事は食堂で摂られるそうだけど、皆の耳に入れるのも憚れたから個室アタックだ。


「おはよう、アンジェロ」

「おはようございます、アルフレド副団長」

「その制服、割と似合ってますね」

「ありがとうございます。……割と?」


 私は支給された青狼騎士団の制服を着ているのだけれど……これが白と青でパリッとして、なかなか格好いいのだ。男装していることもあって、私も気分は男なのだけれど……そうじゃなくて!


「申し訳ございません」


 まずは謝罪。アルフレドは首を傾げた。


「何についてですか?」

「この城の状況を知らず、昨日は食材を多く使ってしまったことです」


 そうなのだ。この城の食料備蓄は、あまりよろしくない。何より町と行き来するために用いられる橋が先日から壊れて通行止めとなっているため、物資が届かなくなっているのだ。


 私もここへ来る前に、橋が壊れていたせいで徒歩移動してきた。補給物資は橋が直り、馬車が通れるようになるまで、ほぼ来ないと先輩騎士から聞いた。


 橋だって一日二日で直るものでもないので、本来なら食料も節約すべきだったのに……。


「なるほど、どうりで昨日は豪華だと思いました」


 アルフレドは額に手を当てた。


「我々は料理に疎い者ばかり。必要なものとわかっていても、日々の不味さで感覚で麻痺していたのですね。不味い食材などなくなってしまえ! などと思ったものですが、これはとてもよろしくない状況です」


 そんなことを思っていたのね……。


「はい。なので、町へ食材の調達に行くべきと思い、そのご許可をいただきたく」

「貴方が行ってくるのですか?」

「はい。食材を消費を早めたのはボクにも責任がありますし、このまま補給が滞っては、皆が餓えてしまいます」

「しかし、橋は使えないのでしょう。貴方ひとりが行ったところで、運べる量など高がしれていますよ?」

「アイテム袋がありますので、そちらに入れればかなりの量が輸送できます」


 私は、アルフレドの机に、魔道具のアイテム袋を置いた。副団長の眼鏡が動く。


「これがそうですか? 魔道具は知っていますが……それでも容量はピンからキリまであると聞いています」

「ダンジョンで手に入れた特別製です。これでそこらの倉庫ひとつ分の物資を運べます」

「本当ですか?」


 アルフレドは眉を動かし、驚いた。


「その話が本当なら、伝説級の魔道具ではないですか! よく持っていましたね」

「ダンジョンで見つけました。ただ、ちょっとした呪いがあって、ボクしか使えないのですが」

「どういうことです?」


 本当はメイアが作ったもので、ダンジョン産ではない。ただ、私にしか使えないようになっているのは本当だ。


「最初の手に入れた人間しか使えないようになっているんです。……試しに開けてみてください」

「……袋の口が開きませんね。結び紐もビクともしない」


 こんな伝説級の魔道具を作ってしまうなんて、つくづく私専属のメイドをやらせておくのは惜しいわね、メイアったら。


「最初は、商人に売ってお金にしようとしていたのですが、どうもボクから一定距離離れると勝手に手元に戻ってしまうようで。盗難対策の魔法文字が刻まれているみたいですが……おかげで、ボク以外に使えない上に、販売も譲渡もできないんです」

「それは残念ですね」


 もし私が言うような性能を持つアイテム袋なら、誰もが欲しがるだろう。それは王国だろうが騎士団だろうが同じだ。


「そんなわけですので、ボクが食料調達して運ぶのが最適かと」

「そうですね。しかし……すみません、貴方はまだここに来て日が浅い。はいそうですか、と調達資金を渡して、そのまま持ち逃げされても困ります」


 そんなことはしないわ! と、正直ムッとしたけれど、騎士団からしたらそうなのよね。昨日きたばかりの新人に大金持たせる馬鹿はいないわ。


「では、誰かお供に」

「そうですね。それが無難でしょう。正直に言えば、確かに補給物資は必要です。貴方の言うとおり、ここで皆で餓死するわけにもいきません」


 アルフレドは立ち上がった。


「わかりました。団長と話をして、人員を手配します。貴方も出立の準備をしてください」

「承知いたしました」


 頷く私だが、アルフレドがマジマジと見つめてくる。……私、何かやらかした?


「いえ、失礼。アンジェロ君は若いのにしっかりしているな、と」


 いや、あなたもお若いでしょうに。20代そこそこでしょう? ……まあ、私はまだ18ですけど。


「君のような若者は手柄欲しさに戦いの場に行きたがると思っていたのですが……。低級だと侮っていましたが、さすが冒険者上がりは経験がある分、違いますね」

「ど、どうも……」


 褒められたんだろうな、たぶん。私は副団長の部屋を退出し、一度部屋に戻り、騎士団支給のマントと装備を身につける。


 そして、調達組ということで、私と同行する騎士と顔合わせした。


「よう、アンジェロ」

「クリストフさん!」


 大柄マッチョな騎士、クリストフが笑顔で迎えてくれた。どんな先輩騎士がくるだろうと、少し不安だったけど、この人なら上手くやっていけそう。


「町まで俺が同行する。よろしくな!」

「はい、よろしくお願いいたします!」

「それで……こっちにいるのが」

「レグ。よろしく」


 フードが頭を隠した若い騎士が無愛想に言った。長身で、装備は青狼騎士団のものだけど……えっと、この人。


 レクレス王子では? なんで!?


 あ、いま目線逸らした。レグと名乗った騎士が、レクレス王子にしか見えない件について。

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