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婚約者の王子は女嫌い? 真相を確かめるため私は男装した。 男装令嬢と呪われ王子  作者: 柊遊馬


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第39話、バラしました。なお性別とは言っていない


 翌朝、レクレス王子のベッドで目が覚めた。


 警護のくせに、一緒に寝てしまうとかあり得ない。私は半身を起こす。


 添い寝する形になってしまった。傍から見れば、同衾(どうきん)と受け取られる状況だ。しかも男同士で!


 この城には男しかいないのだけれど。


 女に見える男を男が襲うとか、そういう話も聞かないでもない。お偉い貴族や騎士様は小姓に性欲をぶつけて発散したなんて話も聞く。


 この状況を、青狼騎士団の面々が目撃したら、間違いなく王子は私――アンジェロを抱いたと受け取るだろう。たとえしていなくても!


 束ねたままの髪の毛に変な癖ついていないかしら。私はつけたままだった紐をほどく。髪がばさりと広がった。


「……うーん、アンジェロ?」

「おはようございます、レクレス様」


 王子様がお目覚めのようだ。寝ぼけ眼をこする彼も、可愛らしいと思う。


「よく眠れましたか?」

「いや……、いつの間にか寝ていた……」


 そこでレクレス王子が硬直した。私を見て、驚いた顔になる。


「アン、ジェロ……?」

「ええ、私はアンジェロですよ」


 女がするように自分の髪を払ってみせる。


「あなたがいけないんですよ、レクレス様? 私、女の子になってしまったんです」


 わざと女らしく振る舞う。


「ドキドキしてる……」


 レクレス王子は目を見開いている。


「本当に女に……?」

「こんな胸のない女なんていませんよ」


 さらし巻いて胸をつぶしているこの胸に手を当てて私は言う。


「お加減はいかがですか?」

「うん……悪くない、かもしれない」


 自身の胸に手を当てながら考えるように言うレクレス王子。やはり、女苦手体質の王子様に、女のふりは刺激が強すぎたかもしれない。私も、まだ少し寝ぼけているかもしれないわ。


「お前が女だったら、と本気で思ってしまった」


 レクレス王子は頭を抱える。えー、そんなに? いやまあ、女ですけど。


「それでオレの苦手体質が出ないのならって……」


 あら、物凄くガッカリさせてしまったみたい。そりゃそうよね。自分の呪いじみた体質から解放されたかも、って思ったのなら。


「申し訳ありません、レクレス様」

「いや、アンジェロが謝ることじゃない」


 レクレス王子はこちらを見た。


「アンジェロ、もう少しだけ、その……女らしく振る舞ってくれないか?」

「よろしいのですか?」


 女を意識すると、具合が悪くなったり距離反応が出るのでは?


「頼む」

「わかりました」


 さて、女らしい仕草ね。髪を払う仕草? 男の人にもわかるものだと、髪をほどくところとかなんかそうだけど、もうやってるのよね。


「櫛を借りますね」


 ベッドに戻ると、彼の見ている前で長い髪を梳かす。あんまり男性の前ですることでもないし、見られていると思うと少し恥ずかしい気持ちになるが、王子様がご所望なのだ仕方ない。


「ずいぶん、手慣れているんだな」

「自分の髪ですよ」

「いや、その……女っぽい」

「ボクは、レクレス様より大勢、女性を見ていますから」


 繰り返すけど、その女ですからね、私は。王都のお屋敷にいた頃は、毎日鏡台で自分の顔を見ていたわけだし。


「アンジェロは、ひょっとして女と付き合ったことが……?」

「それは特定の異性が、という意味ですか?」


 一瞬、手が止まる。恋人なんて、いませんよ。ええ。正体は女だから、女と付き合うなんてあるわけがない。男とは……ええ、ベッドを共にしたのは、あなたが初めてですよ、王子様?


「アンジェロって、実はかなりモテたのでは?」

「可愛いねって、言われることはありますよ」


 私は、拗ねるフリを演じる。


「女性に可愛いと言われるのは、どうかなって思いますけど」

「そういう奴は、女にモテると聞いたことがある。……どうなんだ?」

「さあ……。でも女性は強い殿方を好みますよね」


 あとイケメンだ。貴族のお嬢様方の理想は、一に権力、二に美形、三、四が男らしい強さ。権力が一にきているのは、親が結婚相手を決める都合上、だいぶ歪められてしまった影響だとは思うけれど。でもできれば、美形であってほしいとは皆思っていることだ。


「ボクみたいな……可愛い系は、お喋りしたり遊んだりするくらいは持てはやされますけど、異性としての付き合いとしては……どうなんでしょうね」

「友達感覚でモテる、ということか」


 レクレス王子が腕を組んで考える。真面目だなぁ。私は髪を梳かし終わると、いつものように紐で髪を束ねる。


「なあ、アンジェロ」

「はい?」

「お前、姉、もしくは妹がいるか?」


 ……これ、私の素性を探りにきている? 先日、アルフレド副団長と話していたもんね。私が、アンジェラ・エストレーモの双子、だったかしら? 名前も似ていれば、顔立ちも似ていて、ここでの所業もアンジェラのそれと重なるって。そりゃ重なるわ。本人だもの。


「どうしてそんなことを?」


 敢えて反応を窺う。レクレス王子にしろ、アルフレドにしろ、私アンジェロがアンジェラ・エストレーモの血縁だろうが、深く介入するつもりはないって言っていた。


 アンジェロがアンジェラの弟や兄だったら何だ、というところだろう。今は青狼騎士団の一員だ。


「アルフレドが、お前の素性を気にしていてな。お前を見て、アンジェラ・エストレーモの兄弟ではないか、と」


 素直におっしゃるんだ。メイアと一緒に覗き見していたから、別段ショックも受けないけれど。……知りませんって答えるべきかしら。


 構わないつもりと言っていたけれども、やはり機会があれば知りたいってことよね、聞かれるってことは。


 じゃあ、いいか。案外すんなり話したほうが余計な詮索をされないものだ。


「レクレス様、これから話すことは、誰にも内緒ですよ? 姉様にもお父様にも」


 私は振り返り、イタズラがバレた子供のように振る舞った。


「ボクは、アンジェロ・エストレーモ。アンジェラの双子の弟です」

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