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婚約者の王子は女嫌い? 真相を確かめるため私は男装した。 男装令嬢と呪われ王子  作者: 柊遊馬


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第27話、商会の挨拶と献上品


 アンガル商会が、グニーヴ城を訪れた。

 対応したアルフレド副団長から、レクレス王子は話の内容を聞く。王子付きの私も当然ながら同席した。


「レドニーの町に拠点があるそうで、商業ギルドからの許可証もありました」

「……これがアンジェロが言っていたお師匠の仲間の商会か?」


 王子が私を見た。


「はい。そう聞いてます」

「いつ聞いた?」

「あ……えっと、前回、レドニーの町で物資調達した時です」

「あの時か」


 食料を含め物資不足に陥ったグニーヴ城。橋が壊れていたから徒歩で私とクリストフ、そしてレクレス王子で出かけたあの時……というふうに装う。


 あの時、アイテム袋を持っている私が物資調達だったから、その時に聞いた、で誤魔化す。


「なるほど、その時にそのアンガル商会というのができたのか」


 頷くレクレス王子。アルフレドは口を開いた。


「今回、アンガル商会の商会長自らご挨拶にきたのですが……」


 領主に顔見せというところだろう。それだけでそれなりの商会だとわかる。小さな露天や小規模商店では、目通りもかなわない。


「商会長が女性ということもあり、殿下はご多忙という体で遠慮していただきました」

「女性の商会長か。珍しいな」


 いなくはないが、大きな商会ともなるとその長は男性である場合が多い。


「せっかく来てくれたのに、済まないことをした」

「仕方ありませんよ。体質ですから。先方も殿下の女性嫌いは理解していましたから」


 それでも敢えて、商会長自ら来たというのは、王子殿下のお膝元で商売をするのに代理を寄越すのは無礼と考えてのことかもしれない。


「下手したら、オレの機嫌を損ねて商売許可取り消しもあり得たのにな。ずいぶんと度胸があるな」


 レクレス王子は言うのである。世間では女嫌いで通っている王子である。王族とは、とことんその人の気分次第で、人も建物も簡単に消えるものである。


 女性の商会長が気に入らないから潰してやる、なんて理不尽が通ってしまうのが世の中である。


 王子は女嫌いではなく苦手体質ゆえ何事もなく済んでいるが。


「殿下がそのようなことをなされないと判断したのかもしれませんね」


 アルフレドはそう言った。


 実際、アンガル商会を立ち上げたメイアは、私と普段の王子様を見ている。体質のことも知っているから、理不尽なことにはならないと確信していた。


「それはともかく、ご用命とあれば、あらゆる物を手に入れ、また買い取りますと豪語いたしましたから、役に立ってくれることを願いますね」

「豪語か。新参者は、何かとご機嫌取りに調子のよいことをいうものだ」


 レクレス王子は皮肉げな笑みを浮かべた。


「この領は、いちおう王子が治めているからな。王族御用達になりたがる商人も多いだろう」


 王族御用達のお墨付きがつけば、世間にはこれ以上ないほどのアピールになる。御用達というだけで客のほうがやってくるのだ。


「だが、御用達を狙うならば、それなりの土産がなくてはなるまい」


 要するに献上品である。新参者のご挨拶ということで、ご機嫌取りも兼ねて、高品質な代物や、珍しい物品、高価な贈り物などを送るのが、貴族や王族相手には暗黙のルールとなっている。


「それで、アンガル商会は何を献上したのかな?」

「魔道具ですね」


 アルフレドは眼鏡を指で押し上げた。


「通信機、というものです。魔法使いが使う念話を、魔法が使えない者でも行えるという代物です」

「……なに?」


 レクレス王子の目の色が変わった。


「念話とは、その場にいなくとも会話ができるというアレか。戦場では、ランクの高い魔術師が部隊間の連絡や命令を飛ばすことができるという」

「そう、それです。それがこの――」


 アルフレドは机の上に、板状の物体を2枚置いた。


「魔力式通信機で、念話を飛ばし、これを持っているもの同士で会話することができるようになります」


 ガタン、と王子が立ち上がり、魔道具に手を伸ばした。


「これは画期的ではないか! これまで念話の使える魔術師なくば、伝令が走らねばなからなかった戦場でも、これがあれば人員を割かなくて済む!」

「はい、アンガル商会の宣伝通りの性能があるならば」

「そんな貴重な魔道具を……。なるほど何でも手に入れると豪語するだけある」

「しかも恐ろしいのはこれが、量産できるということです」


 さらっとアルフレドは言ったが、レクレス王子は驚いた。


「なに、この二つだけはないのか!?」

「はい。アンガル商会は、これを10枚置いていきました」

「10だと!?」

「商会長の説明から考えますに、各小隊に1枚ずつ、偵察分隊、そしてこの城にあれば、魔の森で敵の攻勢があっても報告に伝令を走らせる必要がありませんし、即時指示を飛ばすこともできます」

「便利過ぎるではないか!」


 愕然としているレクレス王子。それはそうよね。だってお城にいながら、遠くの前線で起こっていることがわかるのだから。


「アンガル商会が、優れた魔道具を取り扱っていることがわかった! アルフレド、商会に遣いを出せ!」

「はい?」

「アンジェロのアイデアである魔法杖を作らせる! 通信機なる魔道具が作れるならば、こちらの構想も実現できる能力があるだろう」

「それでしたら――」


 アルフレドが手のひらを上に、通信機を指した。


「こちらで、ご連絡を取られて見ては。どの道、足を運ぶことになりましょうが、伝令を挟まなくていい分、早く話が進むかと」

「おおっ、商会にもこれで連絡が取れるのか!」


 レクレス王子は興奮していた。まるで新しい玩具をもらった幼子のよう。あまりにキラキラしていて、優しい気持ちになって私は見守る。


 可愛いなぁ、王子様。可愛い!

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