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婚約者の王子は女嫌い? 真相を確かめるため私は男装した。 男装令嬢と呪われ王子  作者: 柊遊馬


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第25話、とある侵入者


 部屋を明るくして、私は、魔法杖の案を考えた。


 王都から持ち込んだ羊皮紙と筆記用具で、案を書き出す。部屋が明るいと書きやすい。


 と、そこへ扉をノックする音が聞こえた。おや、いったい誰だろう?


 メイアが黒子装備で姿を消す。私は自分の格好を確認。胸よし、男装よし。


「はーい」


 扉を開ける。そこには剣の柄に手をかけている騎士パウルがいた。


「わっ!? 闇討ち!」

「ち、違う! 悪かった」


 パウルは剣から手を離した。


「お前の部屋の扉から妙な光が漏れていたから、何かあったかと思ってな」

「あ、魔石照明ですか?」


 ロウソクなどより断然光が強いので、扉の隙間から漏れる光も強かったのだろう。


「魔石照明? 魔道具か? めっちゃ明るいな、この部屋」


 パウルは私の部屋を見回し、ちぇっ、と舌打ちした。


「何です?」

「いや、お前は個室だなって思ってさ」

「あー、パウル先輩は二人部屋でしたっけ」

「まあ、ひとりなのは相方がいないせいなのはわかってるけどな。後輩がきたら、お前と一緒になるんじゃないか」


 ……このまま、誰も来ませんように。女子が男装して暮らすのは大変なのです。


「ところで、パウル先輩は見回りですか?」

「まあな。……お前はいいよな、見回り免除だもん」

「そのかわり、休日がありません」


 王子様付なので、人員不足と相まって、直接休んでいいと言われない限りは、毎日出勤です。


「私から言わせてもらえば、お休みがあるだけ先輩が羨ましいです」

「……それもそうか」


 パウルはジト目で見てくる。


「な、なんです?」

「お前が『私』なんて言い方すると、本当女っぽいなーって」


 あ、つい私なんて口走った!? 迂闊!


「はっ!? ボ、ボクは男ですよ!」

「んなことはわかってるよ。わざわざ――」


 ガタン、と通路の向こうから何かが倒れる音が響いた。


「何だ?」


 パウルが警戒する目になる。床に置いていたランタンを取り、音の正体を確認しに行こうとする。


「ボ、ボクも行きます!」


 部屋に戻り、剣と魔石照明を取る。光の方向を前方に指向させて、っと。


「先輩!」

「助かる」


 私の魔石照明の明るさは、ランタンの比ではない。パウルと一緒に石造りの廊下を走る。少し進んで曲がり角を照らすと、そこに四足の獣の影が浮かび上がる。


「ダークラッドだ!」


 パウルが叫んだ。


 魔石照明に照らされたのは、80センチくらいの大きなネズミのような獣。ダークラッドということは、ネズミの一種だろうか? ネズミ……? 大きすぎるんですけど!


「くそっ、何で城の中に!」


 パウルは剣を構えた。私も左手に魔石照明、右手に剣を持つ。


「先輩、あれは何ですか? ヤバイやつですか?」

「何言ってるんだ? 魔の森の汚染ネズミだろ……って、そういや、お前まだ森で戦ってなかったっけ?」

「はい!」

「じゃあ、仕方ねぇ。おれがやるから、お前は後ろで援護しろ。間違っても噛まれるなよ!」


 パウルが前に出る。強い光を浴びせられているせいか、ダークラッドは威嚇の姿勢。……何か凄く怒っている?


『おそらく、光で思考が攻撃一辺倒になっているのでしょう』


 メイアの念話が聞こえた。え、それってあまりよろしくないのでは――


 シャッ、とダークラッドが跳んだ。正面のパウルはそれを真っ直ぐ一刀両断にした。


「お見事です、先輩……」

「森で、嫌ってほど戦っているからな。先輩なめんなよ」


 パウルは一息ついた。


 後ろで、足音が聞こえた。


「何の騒ぎですか――うっ、眩しい!?」

「あ、すいません、副団長」


 アルフレドだった。反射で照明を当ててしまったので、向きを変える。暗いところから急に光を当てられたら、それは驚くわね。


「ダークラッドです、副団長」


 パウルが報告した。


「いま一匹仕留めましたが……」

「汚染ネズミが城内に」


 眼鏡の副団長は険しい顔をした。


「パウル、非番連中を起こして、城内の調査。ネズミが一匹とは限らない。調べてください」

「了解しました!」

「副団長、ボクは――」

「アンジェロ、明日も殿下につくので貴方はいいです。……妙なものを持っていますね? 何ですそれは?」

「あ、魔石照明です」


 中に魔石が仕込まれていて、刻まれた魔法文字により点けると光が辺りを照らす――と説明したら。


「今から、私の部屋に来てください」

「えっ、副団長の部屋にですか?」


 そんな深夜に女子を連れ込んでどうするつもり――。


「なに、さほど時間は取らせませんよ。ちょっとその魔道具を借りたいだけですから」

「あ、はい」


 そうでしたか。まあ、いまの私は男装して普通に男子ですから、そういういかがわしい誘いのわけないじゃないですかー、やだなー、もう。


 というわけで、騎士たちが城内でネズミ狩りをしている頃、私はアルフレド副団長の執務室へとやってきた。


 机には紙の束があって、どうやら書類仕事をしていたらしい。


「アンジェロ、魔石照明を」

「あ、はい」


 前方照射をやめて、室内全体に変えて……と。


「かなり明るくなりましたね」


 アルフレドは席につくと、途中だった作業を再開した。


「さほど時間は取らせません。その辺の椅子に座っていてください」


 ……どう見ても、すぐ終わるような量には見えないんだけど。


「副団長、もしよければ魔石照明、ここに置いていきますから、ゆっくりやってもいいですよ?」

「大変ありがたい申し出ですが、外は暗いですよ?」

「あ、照明の魔法が使えるので、部屋に帰るくらいは大丈夫ですよ」

「そうですか……。すみません、お言葉に甘えて、お借りします。余計な時間を取らせて申し訳ない」

「いいえ。……その、頑張ってください」


 作業の方。私はエールを送って副団長の部屋を後にした。

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