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婚約者の王子は女嫌い? 真相を確かめるため私は男装した。 男装令嬢と呪われ王子  作者: 柊遊馬


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第21話、お金がありません


「――団長?」


 アルフレド副団長の言葉に、レクレス王子は視線を戻した。


「ん? 何だ?」

「何だ、ではありません。話の途中ですよ」

「すまん」


 そう謝りながら、王子は、チラと部屋で直立している私を見た。


 先ほどからレクレス王子は、こんな調子だ。アルフレドと、打ち合わせの最中にも関わらず、王子の視線は泳ぎっぱなしである。


 鼻血の時、処置したせいか? 体が密着し、膝枕までしてしまった――ひょっとして女だとバレるようなことをしてしまったか?


 熱心な目で見られるようになったのを感じる。疑われているのかしら……?


「コホン。アンジェロ、すみませんが――」


 アルフレドが言った。


「立ち位置を変えてもらえませんか? ……そう、そちら、団長の後ろに」

「はい」


 つまり、王子の視界から逃れろ、というわけですね。ありがとうございます。


 ホッとしつつ、移動。これでレクレス王子が振り向かない限り、あの視線を浴びることはない。


「それでは話を続けましょう。正直言ってこの騎士団の状況は大変よろしくないです」

「なに?」

「お金がないんです。元々、この領地は特産品もありませんし、魔の森の脅威にさらされている土地ということもあり、人口もさほど多くはありません。国から定められた税を収めたら、手元に残るのはわずか」


 アルフレドは眼鏡を指先で持ち上げた。


「人もない、武器もない、物資もない、お金もない。……この傾向は続いており、いよいよマズイところまで来ています」

「……」


 確かに、ここにきて城に騎士しかいないな、とは思っていた。王子の女苦手体質のせいとも思ったけど、普通に男性でもおかしくないコックや、専属の従者とか、裏方業務の人間がほとんどいなかった。


 お金がない、というのが、他のないまで影響しているのだろう。戦闘要員しかいないのは、それ以外の人を雇えないほど困窮しているからか。騎士たちにも給料を払わないといけないから、その分を考えれば、あまり余裕がない。


 だが、やはり騎士だけでは立ち行かないから、人材募集を再度掛けた、というところか。


 で、ここ最近、私がきて、コックが3人増えたことで、やっぱりカツカツだった財政がいよいよ危険域になったというオチだろう。


「そうは言っても、ここは魔の森しかないぞ」


 レクレス王子が鼻をならす。


「闇の力に汚染された魔獣どもしかいない。こいつらは倒しても肉も食えなければ、素材にもならない。冒険者でさえ、旨みがないと見放す始末だ」


 素材にもならない? そうなの?


 そういれば、レドニーの町には冒険者ギルドがあったけど、魔物狩り放題の環境が近い割には、どこか閑散としていたような……。


 そこで会った冒険者は、私が魔の森の話をした時もどうでもよさそうな対応だった。まあ、頑張りな、だったか。冒険者にとって魔物や魔獣を倒して手に入れる素材は、お金になる。


 その土地の領主が、冒険者たちに何かしら税を掛けない限りは、狩り場があるところのギルドは繁盛するものだが……。


 素材にならないんじゃ、確かに旨みはないか。


「あるものといえば、汚染された魔石だけだ」

「汚染された魔石……?」


 私がつい口にしたことで、レクレス王子は振り返った。


「そうだ。魔の森には瘴気が漂っていてな。そこの魔物どもは闇の力によって汚染されているんだ」

「その汚染のせいで、倒しても素材にならないんですよ」


 アルフレドは肩をすくめる。


「汚染された魔物は、闇の瘴気から生まれているとも言われています。だから倒した時、闇の魔石という汚染された魔石以外は消えてしまうのです」

「それで、その闇の魔石は、回収して森から遠ざけないと、また魔物になってしまう」


 レクレス王子はため息をついた。


「だから、闇の魔石は回収している。グニーヴ城の貯蔵庫には、回収した闇の魔石だけが山のようにあるというわけさ」

「なるほど」


 汚染された魔石か……。


「やはり、危険なものなのですか?」

「そりゃ、闇の瘴気が宿っているからな」

「一応、魔石なので魔法杖などの素材にできないか、町の職人にも相談したのですが、うまく行きませんでした」

「商人も、呪いの品は受け取れないと買い取りを拒否した。かと言って、おいそれと捨てるわけにもいかないからな」

「あのぅ、ちなみにその闇の魔石は浄化はできないのですか?」

「浄化?」


 私の言葉に、レクレス王子とアルフレドは顔を見合わせた。


「どういうことだ、アンジェロ?」

「いえ、呪いの品と聞いたので、教会の司祭様とか神官の神聖魔法で浄化すれば、瘴気も祓えるのではないかと」

「……聞いたか、アルフレド」

「聞きました」


 アルフレドは頷いた。


「盲点でした。確かに魔を祓うは教会の専門。何故、その可能性を考えなかったのか」

「この城に神官はいなくなって久しい。それに闇の魔石は闇の魔石で、瘴気を呪いとは思っていなかったからな」


 レクレス王子は腕を組んだ。


「もし瘴気を祓うことができれば、魔力が豊富な魔石だ。高値で取引される。あの魔石の山が宝の山に変わるぞ」


 使い道のなかったゴミがお金に変わるのだ。しかも聞くところによると、沢山あるようだから、財政難を補う分にはなるのではないか?


「名案だぞ、アンジェロ」


 再度振り返ったレクレス王子が笑みを浮かべた。……いえいえ、お役に立てたなら嬉しいですが。

 アルフレドが口を開く。


「実際に汚染魔石がきちんと浄化できるか確認する必要があります。……町へ行き、神官を――」

「……あのぅ」

「何です、アンジェロ?」

「一応、浄化魔法を覚えていますので、私がやってみましょうか?」


 私の提案に、アルフレドが口をあんぐり開けて固まる。レクレス王子は皮肉げな顔になる。


「そうだった。アンジェロはひと通り属性魔法が使えるんだったな。さっそく試してみよう」

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