ナーロッパと揶揄されるのに西洋史は商業で需要がない?じゃあ中世ヨーロッパの小説を投稿して検証してみます!
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・ナーロッパ (なーろっぱ)
ナーロッパとは、ファンタジーで用いられる中世欧州風ではあるが似て非なる世界のこと。
概要
小説家になろうに投稿される作品に散見される中世ヨーロッパ風の異世界への揶揄として誕生した用語。
具体的には作中の異世界において、現実世界における中世ヨーロッパではあり得ない描写が発生することへの揶揄を指す。
ナーロッパ (なーろっぱ)とは【ピクシブ百科事典】(https://dic.pixiv.net/a/ナーロッパ)より引用。
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史実・史料に基づいた小説と比較して、中世ヨーロッパ風の世界観を模した小説を「ナーロッパ」と揶揄しているのでしょう。
なお、中世ヨーロッパと似て非なる異世界であることを宣言するために、作者側があえてこの言葉を用いることもあります。
他人に対して使えば「侮辱を込めた揶揄、粗探し」と受け取られかねず、自作に対して使えば「自虐、開き直り」とも受け取れる言葉です。
侮辱というと大袈裟かもしれませんが、からかっているのは間違いない。
ですが、じつは商業出版では「西洋史モノは需要がない」そうな。
……私が言われたんですけどね。
誤解のないようにフォローすると、貶す意図ではなく好意的な意味で、です。
大手出版社KD社様が運営していた小説投稿サイト・セルバンテス(サービス終了・涙)で重複投稿していたときに、タグをつけるだけでエントリーできるレジェンド賞で拙作が最終選考に残りまして、後日、短評をいただいたときの評価です。
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7番目のシャルル 〜狂った王国にうまれて〜
C・クラルテ
〇
・レジェンド賞内随一の文章力。
・物語がテンポよくサクサクと進む点。
・西洋歴史ものならではの雰囲気が非常に魅力的。
×
・1章の終わり辺りからここは12歳のシャルルの視点なのか、成長したシャルルの視点なのか分かりにくいところが多くなる。
・彼の行動や言葉と地の文とのギャップを感じるところもある。
・面白い小説だとは思うが、歴史が苦手だと2章の中盤辺りからついていくのが辛くなっていく。
・ゲーム要素の薄さ。
・他部署への推薦も考えられる水準の完成度ではあるが、残念ながら西洋歴史ものは、今や塩野七生レベルでないと商業として市場がない。
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(※)文中に出てくる「ゲーム要素の薄さ」について補足します。ジャンル不問・未完も可でしたが、系列のレジェンドノベルスは「ゲーム文化を背景にした要素」を重視しているため、拙作はその観点からズレているという意味です。ようするにカテゴリーエラー。
メールの文末に「なお、この作品は投稿当初から編集長が気に入って読んでいた作品でもありました」と追記が添えられていて、感激もひとしお。
ちなみに、15世紀フランス・百年戦争の時代——中世ヨーロッパ末期の話です。
初めて書いた小説で(ただし、二次創作の経験あり)この時はまだ未完。
レーベルがもとめる「ゲーム要素」が薄いなどのマイナス要素を差し引くと、想像以上に高く評価していただけたと感じました。
ただ、内容の評価とは別に、「西洋歴史ものは、今や塩野七生レベルでないと商業として市場がない」が気になり、小説界隈のフォロワーさんその他いろいろ……に探りを入れてみました。
私の交友範囲で聞いた話であって、例外もあるかもしれませんが——
最近の商業出版全体の傾向らしいです。出版社やレーベル単独の話ではないと。西洋史フィクションは需要がないとされ、どうしてもやりたいなら歴史をもとにした西洋史風ファンタジーに改編するよう求められるとも。
確かに、商業出版は慈善事業ではありません。
数字(売上、部数など)がついてこなければ、西洋史というだけでハードルが高くなる。
このときの評価で、それなりに面白い話が書けていると自信がついた一方で、「西洋史は需要がない」という厳しい現実を突きつけられました。
それか、塩野七生先生並みの完成度とネームバリューを求められると……。
紫綬褒章受章の超大物エリート作家様を引き合いに出された拙作って、じつは結構すごいのでは?!(超ポジティブ!)
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あらためて、本当に西洋史ものは需要がないのでしょうか。
ナーロッパと揶揄されるほど中世ヨーロッパ風ラノベが読まれている(=需要がある)ということは、西洋史ものに馴染む「下地」はあると考えられます。
レジェンド賞にエントリーしたときは未完だった拙作。
執筆スタートからおよそ二年半を経て、2021年5月に完結しました。
ちょうどいいタイミングで、小説投稿サイトのアルファポリスで6月から「歴史・時代小説大賞」を開催すると知りました。
読者投票制で毎日ランキングが入れ替わるシステムです。
自作品に投票するのは不可。
「読者投票=需要とするなら、拙作(西洋史)はどのくらい?」
需要の有無を試すつもりでエントリーしました。
ランキングの変動を定点観測すると、次のような推移をたどりました。
・初日17位→6位→7位(6日連続)→6位→4位→5位→4位(19日連続)
最終結果と受賞作の発表は7月末。
拙作は全492作中、ななんと4位でした!
募集要項ページの雰囲気と受賞作・候補作から推測して(明言されてないものの)日本史・江戸時代ものが有利とされる中で、しかもランキング上位は受賞・出版経験のある作家さまばかりという状況下での4位は大健闘でしょう。
ていうか、読者いるじゃん! 需要あるじゃんーーー!!(大興奮)
自分の作品に投票できないシステムですから、応援・投票してくださった読者さまのおかげです。心より御礼申し上げます。
マイナージャンルな上に、需要がない(といわれる)西洋史・中世ヨーロッパ。
日の目を見るのは容易ではありませんが、逆にいうとチャレンジ精神・開拓精神を刺激されるのも事実です。
今のところは「需要=自分ひとり」だとしても、自給自足で読みたい話を書きながら、縁ある読者さんにおもしろさを伝えることができればもっといい!
ひとまず「7番目のシャルル」は完結しましたのでね(してない)。
ちかぢか公開予定の次回作にご期待ください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
なお、このエッセイはダイマです。
拙作「7番目のシャルル」は完結済みです。
受賞経験はありませんがこのまま埋もれてしまうのは惜しいので、よろしければ小説本編までお付き合いいただけましたら…!
心よりお待ち申し上げております。
▼少年期編「【完結】7番目のシャルル、狂った王国にうまれて 〜百年戦争に勝利したフランス王は少年時代を回顧する〜」
・カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614
・アルファポリス:https://www.alphapolis.co.jp/novel/394554938/595255779
・小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/
▼青年期編「7番目のシャルル、聖女と亡霊の声 〜百年戦争に勝利したフランス王は600年ぶりに復活したので文句を言いたい〜」
・カクヨム:
・小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n8607hg/
↓時間がない人向け。シリーズの原型となった短編。
▼短編「追放された王太子のひとりごと 〜7番目のシャルル étude〜」
・カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816700427708759899
▼英訳版「Musings of an Exiled Dauphin -7th Charles, Étude prologue-」
・カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859416353761
▼日界线さん訳の中国語(中文)版「流离太子沉思录」
・pixiv:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16719947#1