ショートショート㉒ 独身最後の飲み会
ゆっくり煙を出す
20歳で初めて吸った時はむせたし、涙が少し出た。それも昔
今ではタバコがないと生活できない歳になってしまった
明日は俺の結婚式。今日は独身最後ということで学生の頃からの友人達と飲み会がある。
「よー新郎様じゃん!」
飲み会の場所を提供してくれた漁師の友人から声をかけられる。
「あれまだみんな来てないの?」
「今から駅まで迎えに行くところ。しばらく1人で留守番していてくれ」
そう言うと軽トラに乗って行ってしまった。
今日の飲み会はあいつがいつも自分の船を止めている倉庫ですることになった
なので網、ドラム缶、タイヤなど色々落ちている
中央にある机には沢山の海産物と酒が積まれていた
「待ってる時間も暇だし先飲んじゃお」
暇だった俺は酒を飲みながら昔を思い出していた
みんな馬鹿で、でも毎日楽しい学生時代だった
さっきの友人は特に馬鹿でテストはいつも赤点
よく俺らは漢字と数学は小学生レベルだったことを馬鹿にしていた
そんなことを考えながら缶を潰して2本目に手を伸ばしたところで彼女の言葉を思い出す
「絶対明日は寝坊しないでよね!明日式場に遅れたら結婚やめにするから」
あの目はマジだった…まだみんな来てないし酒はやめておこう
そう思いタバコをポケットから探しながらお腹を満たすものを探していると
「おっと…こんなことで明日式に行けないのはまずい」
俺は苦笑いしながらタバコを吸うのをやめた
結婚は無くなった…結婚式に行けなかったのだ
俺は今病院にいる
なんでこんなことに…これも全部あいつのせいだ
そんなことを考えているとその友人が見舞いに来た
「お前のせいだぞ!結婚できなかったのは!」
俺が怒鳴ると友人は
「だから紙に書いて置いといただろ…」
だからってひらがなで書く奴がいるか
昨日俺はタバコを吸うのをやめて机にあった生牡蠣を食べ、見事にあたった
机にはあいつが書いた文字が
『かきげんきん』