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聖騎士リエーヌ 共通1
ある日の朝、公国ルクスダリスの庭園で聖騎士リエーヌは男爵の息子から求婚された。
「できません」
毅然とした態度で、きっぱりと断る。
聖騎士は一生婚姻禁止の掟があり、それは彼女も例外ではない。
「わかっている。言いたかっただけなんだ」
残念だがしかたがない。そういって彼は去った。
結婚制度が改訂されて3日、やたらと求婚する男が絶えない。
「リエーヌは俺の妻となる女だというのに、あの身の程知らずが……」
「トラジュディ様……何度も申し上げているように、私は貴方の騎士です」
恋心……それは身分関係なく、平等に芽生えるもの。
いかに大公の息子であっても、例外ではないようだ。
公国はこれといった争いもなく、思慮深い大公や誇り高い騎士が平和に暮らしている。
たった一つ問題があるとするなら、それは公子トラジュディの婚姻だ。
身分の釣り合う尚且つ年の近い貴族の娘がいない。
公国の貴族は血族が近いもの同士での婚姻で成り立っているのだ。
時代が変わる時がやってきたのだろうと、大公は自国の者ならば相手を問わないことにした。