鬱金花の記憶 1
(ここはどこ?)
少女は平地で目覚め、辺りを見渡す。所謂、記憶喪失と自覚するのに時間はかからなかった。
幸いにも名前は覚えている。
(ここでとどまっても、何も解決しない。先に進もう)
少女は決意するも、束の間でその場に膝を折る。空腹でめまいに襲われ、再び意識をなくすのだった。
<村を出よと天からの啓示。昨夜の海は荒れていたのに船は出せるか?>
青年は嵐に晒されていた船の様子を見に行くと、倒れた少女を見つける。
「お嬢さん、大丈夫ですか!?」
<とりあえず運ぼう>
「う……」
「気がつきました?」
目をゆっくり開き、シバシバとする感じに耐えられず軽くこする。
薄い紫の髪をした男が枕元の椅子に座っていた。
「助けて頂き、ありがとうございます!」
「たまたま、通りかかっただけですから、それと
ここは医者がいないので、家に運んでしまったんですが……」
さっき言われた通り、寂れた田舎のここには医者がいない。
だからまずは、腹ごしらえをするのだ。
「実は空腹でして、お食事処あります?」
「小さい村ですから……ないんです。リンゴでもどうぞ」
どうして倒れていたのか問われたので、コンカのは事情を彼に説明することにした。
「えっと、私の名前はコンカです。嵐で流れて記憶もなくしました」
「もしかすると啓示……」
「え?」
「いえ、こちらの話です」
今度は彼が素性を説明してくれた。名前はエン、一人暮らし。
牧師を目指しているが、教会のないこの村でうだつの上がらない生活をしている。
「一緒に旅をしませんか?」
「いいんですか?」
とにかく先へ進む目的が一致する二人は、共に旅へ出ることにした。
「まずはどこへ?」
「隣町へ行きましょう。そこなら医者がいます」
地図で隣、しかし近くにあるわけではない。
「そこのカップルさん。アクセサリーはいかが?」
「カップルじゃないです!」
「君かわいいね、俺と……」
「私の恋人がなにか?」