人間狩り
いよいよ佳境に入ります
魔石山脈の麓、ブロッケン領の山間のその村は、エルフ属の中でもダークエルフと呼ばれる黒い肌の人種が住んで居た。
早朝まだ日が昇る前に、一機のヘリコプターがその村を奇襲した。
旧ソ連軍の攻撃ヘリコプター、ハインド。
そのハインドが村の近くに降下すると中から黒い戦闘服の男達がMP5を手に降りてくる。
そして村を襲うと、抵抗する男たちに躊躇なく鉛玉を撃ち込む。
悲鳴も怒号も哀願も、何の意味も無かった。
彼らは通訳の魔石を身に付けては居なかった、その為にダークエルフの言葉は雑音にしか聞こえない。
抵抗する男達を全て射殺すると、今度は女達の中から数人を選ぶと、無理やり小屋の中に押し込んで交代で凌辱し出した。
女達の悲鳴を聞きながら、外に固められているダークエルフの中に、妊娠したお腹の目立つ女性、ラダが居た。
ラダは村長の娘で、数ヶ月前に村の戦士のウンスロポカーズと夫婦となり、夫は昨夜から狩り出かけて留守だった。
ニヤついた顔でズボンを上げながら、下卑た笑い顔の男達を睨み付けると、その中の1人がラダの視線に気が付いた。
「…なんだ…その目はぁ!…」
そう言うと、ラダの髪を掴んで引っ張り上げると、ラダの口から押し殺した悲鳴が出かける。
「…妊婦かよ…この際だから、やっちまうか」
そしてそのまま、小屋の中に引っ張って行こうとする。
ラダは男の行動で、この先に待つ未来に戦慄すると、必死に抵抗し出した。
男が笑いながら、ラダの髪を掴んでいると、胸にドンと衝撃が走る。
見れば自分の胸に、弓矢の矢が刺さっていた!
絶叫を上げる男の悲鳴が、広場に響き渡ると、村の家の影から1人のダークエルフの戦士が飛び出した。
ラダの夫のウンスロポカーズだ!
「…あなた、ダメ!逃げて!」
妻のその悲鳴を聞いて、ウンスロポカーズは黒い服を着た、人間達に襲い掛かる。
その時にラダの喉元に、コンバットナイフが当てられた。
「…動くな!…嫁と腹の子供が死ぬぞ!」
1人だけ通訳の魔石を身に付けている民間軍事会社(傭兵)の隊長がウンスロポカーズに叫ぶ!
ウンスロポカーズはピタリと動きを止めると、持っていた狩猟ナイフを地面に落とした。
そのまま他の傭兵達に、襲い掛かられたウンスロポカーズは殴る蹴るの私刑を受けると、両手に簡易手錠カップタイラップ)を付けられて拘束される。
他の傭兵達にトドメを差されるのを隊長が止めると。
「…お楽しみはこれからだ………」
そう言うと、捕らえられた女達と一緒にハインドにウンスロポカーズを乗せる。
異世界の上空をハインドが飛ぶ、その後ろの搭乗ゲートは開かれて、両手にロープを巻かれたウンスロポカーズが吊り下げられて居た。
ロープの端はウンスロポカーズの妻のラダが握っている、その顔は蝋の様に白く、ロープを握る手からは摩擦で出来た火傷と切り傷で血が滲んでいた。
ロープを離せば夫の命が無くなる、離さないと2人とも落ちる。
究極の選択を傭兵達はニヤニヤと笑いながら見ていた。
「…離す方に10ドル」
「離さない方に5ドル」
「なんだよシケてるな」
口笛を吹きながら野次る者、飲んで空になったビールの空き缶をラダに投げる者などがいる中、遂にラダがロープを離した!
悲鳴を上げながら外に出ようとするラダを隊長が止めると。
「…ゲートを閉じろ、刑務所に帰投する!」
その時ウンスロポカーズは、ロープを離された感覚に安堵していた。
「…生きろ…生きて子供を産んでくれ…」
そしてそのままウンスロポカーズは、深い河に手を拘束されたまま落ちる、河は深く骨折する事も無かったが、手を拘束されて泳げない!
そのままウンスロポカーズは、闇の中に意識を落とす………その前にロープを引っ張る感触を感じながら意識を失った。
次の回はあのお方登場




