擦り合わせ
翌日、インクブ達が帰ってきて報告を聞く事になった
司令室として使われている二階の部屋に。
インクブ、マクマザーン、ボーヴァン、イザベラが集まる。
まずインクブ達の話を聞いてから、昨日の話を聞いて擦り合わせを行う。
「纏めてみると」
マクマザーンが次に。
カール・ブロッケン・ジュニアは王都に居た時代から女性を攫っては手篭めにしていた。
王都時代は家に返して居た為、ばれて王都より一番離れた領地に領地替えになった。
領地替えになった10年前から開発中の開拓地にも出張して女達を攫い出した。
攫った女達を隣国、帝国に売買している。
攫われた女達は白人、金髪の娘が多く帝国内の特別施設、天使の里で強制的に出産させられて居る。
そこから脱走した被害者は現在、帝国内の抵抗軍の保護を受けて壁の街で生活して居る。
「そして帝国の事なんだが」
帝国は元々、共和国と言う名前だったが80年前に帝国と名乗る集団に占領された。
帝国は俗名で正式にには、新興 第三帝国。
かつて旧ドイツから、ブラジルに逃亡する際に魔石山脈の霧に運ばれた最後の軍隊の生き残りで戦車も保有している。
「そしてその対抗策として」
対戦車ヘリを納入したいが資金が無い。
アルフレッド候の案として、隣領のブロッケン領をカール候からお取り上げにして王都直轄領とし、洞窟の向こうの異世界(地球)の資本を鉱石と薬草で行い資本を手に入れる。
「ここまでは良いかな?、そしてこれからの事なんだが」
マクマザーンの案として。
インクブはイザベラと同行して王都に行く。
イザベラは王を説得する際にブロッケン領を王都直轄領とした時の代官として赴任する。
「そしてブロッケン領に侵攻する際は開拓地領軍も手を貸そう、時間が惜しい」
そう言うと、インクブとイザベラに王都に行く用に言うと資料としてDVDを何枚か渡した。
「ブロッケン領との戦闘と、例の奴隷売買の証言が入っている」
インクブとイザベラは部屋を出ると、装備を整えて、王都に向かった。
トマスは今日も飽きもせずに、マリーを連れて日々作られて行く要塞を眺めて居た。
マリーはトマスと居ながら、少しずつ自分の事を話し出した。
両親は農場をやっていた事。
両親が病で亡くなってから姉と2人で農場をやっていたが、不作で年貢を納められなくて農場は取り上げ、姉妹も城に上げられる事になった事。
カールもまた、自分の事を話し出した。
10年前に、妻が連れて行かれた事。
娘が嫁に行く事。
「妻は10年前に連れて行かれる途中で崖から落ちて死んだそうだ」
そうトマスは言うとマリーの方を見て
「似た者同士だな………」
そう言って苦笑いをした。
マリーもトマスの方を見ると寂しく笑う。
トマスは少し躊躇ってから。
「マリー………良かったら………うちの娘になるか?」
そう言うとマリーはまじまじとトマスを見ている。
トマスは続けて。
「勿論…マリー次第だけど?………ど!」
そこまで言った時にマリーがトマスの胸に飛び込むと震えながら。
「ほんと?…本当に?…お父さんになってくれる」
それを見てトマスは。
「ああ、本当だ………」
そう言うとトマスはギプスを嵌めた手で、優しくマリーを抱きしめた。
お昼を知らせるサイレンが鳴ると2人は食堂へ向かった。
今日は焼飯のようだ。
マリーはローズに何か耳打ちするとローズは眼を見開きながら。
「え?え?………嘘!!」
そう言うとトマスのトレイを受け取ると、トマスの焼飯を持って来た際に
「………私も行く、マリーの事が心配だからなんだからね?………絶対にトマスの家に行くからね?………」
そう怒涛の如く、トマスに宣言すると厨房に戻って行った。
トマスはそれを見ながら。
「………なんなんだ?………あれは?」
そう言ってからマリーを見ると、さあ?っとマリーは言いながら。
「トマスの家で、私のお母さんになるって、事じゃ無い?」
そう言ってから焼飯を食べ始めた。
トマスはそれを聞いて。
「そうか、俺の家でマリーの母親にな!っ…る?…………………えっ?えええええ?っ!!」
絶叫するトマスを皆が、生暖かい目で見ていた。




