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ガラスの刃

捕虜達の仕事は、トラックから降ろしたパレットからセメントの袋を現場まで運ぶ仕事が大半だった。

建築の道具は使い方では武器になる。

捕虜達は素手で出来る仕事を割り振られ。

仕事をする捕虜は食事面などで優遇され。

反抗的な態度の捕虜は檻に閉じ込めて1人づつ独房に入れていた。

捕虜達の大半は徴兵された農民で、私服に槍だけ待たされた者達が大半だった。

マリーの姉を殺した兵士も、模範囚の振りをして脱走のタイミングを探していた


(脱走する前にあの餓鬼を始末しないと)


そう思いながらも、道具が無い事を考えている時にそれは起こった。


プレハブの窓ガラスが突然割れて高い音が響いた。


ガシャンと高い音がして窓の一部が割れていた。


「ちょっと!何してるの?!!」


食堂のローズの声がしたかと思うと


「掃除用のモップが倒れて来たんやわぁ〜!、ビックリしたぁ〜!!」


見ると赤毛の髪の少女、自称ブロッケンいち不幸な少女ユリアナだった。


ユリアナは赤い髪の毛とオレンジのツナギの囚人服が良く似合っていた。


騒ぎを見ていた監督が、


「それ、手を怪我するから触らないで!!」


そう言うと軍手とホウキとチリトリ、そして新聞紙を持って来てガラスを処理し出した。


「ガラスって本来は石を高熱で溶かして薄く伸ばしてるから、切れやすいんだよ………

こうして新聞紙で包んで捨てないと」


そう言うと新聞紙をゴミを纏めて捨てている、バッカンコンテナーに放り投げた。


男はそれを無言で見ていると、新聞紙を捨てた場所を記憶した。



その夜、男は寝ている捕虜宿舎から夜の闇に溶け込んだ、顔に炭を塗り手と首にも塗ると少しずつ移動してバッカンコンテナを目指す。


バッカンコンテナの中に潜り混むと新聞紙の中のガラスを用意したタオルで包んで持つ。


男は女性用宿舎の裏側に回ると、石を拾って歩哨の女性兵士の背後に回った。


隙を見て後頭部を殴ろうと観察していると、トイレなのか持ち場を離れた。


チャンスだとばかりに中に入って闇の中を餓鬼の居る部屋を目指す、朝に窓から餓鬼が顔を出す部屋を目指すと、ドアを薄めに開けて中を確認する。


2つあるベットのうち、シーツの盛り上がりが小さい方を目指して這い寄ると、髪の毛から口がある場所と思われる所を手で塞ぐ。


その時違和感を感じた。


……………顔が硬い!!………⁇


そう思った瞬間、部屋の電気が点いた。


餓鬼だと思っていたのはカツラだった、人の頭に似た人形に被せていた。


「マネキンって言うそうだ、俺も始めて見たよ」


男の声が背後からしていた。



「…待ってたよ、アンタがあの娘を見てたのは気が付いていた」



男は振り返って声の方を見た。


そこには赤鬼トマスが居た。


「あ、………赤鬼!!?」


(このままだと、…られる!)


そう思った時には身体が動いていた、


タオルで包んだガラスを持った右手で上段から斬りつける、


赤鬼トマスはそれを左手のギブスで受けるとガラスが割れて粉々になる、


(………!!?、糞ガァ!!)


右手の割れたガラスに気を取られている間に赤鬼が近づくと、右手のギブスで鼻頭を殴られた、


ガンっとした衝撃の後に鼻が熱くなり、潰れた鼻から赤い鼻血が出た、


「がぁ!!」


男はそう吠えると赤鬼トマスの脇をすり抜けてドアから出ると廊下を出口に向かって走ろうとした、そこには!青い上下の作業服を着た男が両手を前に出して待っていた。


ドンっと腹に響く音が廊下でしたかと思った瞬間。


右脚の太ももに衝撃が走る、男はそのまま前に倒れると後から太ももに激痛が走る。


「確保しろ、右手を押さえ付けろ」


音がした途端に他のドアから刺又さすまたを持った兵士が飛び出して来て男を取り押さえる。


「拘束してから治療しろ、油断はするなよ」



男が拘束されたのを確認してから。


「…もう、出て来て良いぞ」


そう声を掛けると、別の部屋からユリアナに付き添われて、マリーとローズが出てきた。


トマスはマリーに近づいて屈むと視線を合わせて。


「もう大丈夫だ、悪い奴は捕まえた」


そう声を掛けると、マリーはトマスに抱きついて泣き出した。


トマスはその頭を撫でながら、優しく抱き締めるとマリーを泣かせるに任せた。


やがてマリーは泣きながら


「………あ、………あ、いつ、が………

お………お…ね………え…ちゃ…ん、を…


殺したの、途切れ途切れに、そう、トマスに言った。



トマスはグッドことボーヴァンの部屋に来ていた。


「マリーの事でおかしいって言う人がいてな」


そうトマスはグッドに言うと、いくら借金の片にとは言え、あんな子供だけ連れて来るのはおかしい、そう言われたと言い。


そのうちマリーを連れて来た兵士の目がマリーに明確な殺意があり、マリーもそれで怯えて居たと。


「マリーは喋れないんじゃ無い、脅されて口が聞けない振りをさせられて居たんだ」


兵士が捕らえられてやっとマリーが喋り出した、その内容にグッドは驚愕する。


「それじゃあマリーは、あの兵士が姉を殺した現場を見ていたのか?………糞だな」


マリーまで殺して、手ぶらで帰るのはマズイ、そう思ってマリーを脅していたそうだ。


「それでマリーの姉の遺体は?」


川に捨てて来たらしい、せめて埋めてくれってマリーが頼んだら。


「………殴られて、口を開くな、………そう言われたらしい」


それを聞くとグッドが。


「…糞が………奴には色々と聴きたい事がある」


そう言うと、トマスのギプスを見ながら


「そのギプス…先生に怒られるぞ………」


トマスのギプスは兵士を殴った時に割れていた。


後日、医者にギプスを修理される際に散々絞られて、赤鬼も医者には勝てない、そう皆にからかわれる赤鬼トマスだった。

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