無い袖は振れない
インクブとイザベラはアラモ銃砲店を出た後に、ウオー・ストリートにあるスーパーマーケットに向かった。
ウオー・ストリートにあるスーパーマーケットは合衆国にあるスーパーマーケットの出張店で、銃からトイレットペーパーまで何でも揃う。
インクブは家電売り場に行くと店員に、
「再生専門のDVDプレイヤー、液晶画面付属で一番デカイ奴を」
出てきたのは14インチの液晶画面が付いたタイプだった。
「あとバッテリーをくれ」
店員の説明によると単三電池が使えるらしい。
「単三電池の60個入りワンカートン、………あとこれも頼む」
清算所の近くに置いてあるDVDコーナーから1つ取って店員に渡す、その商品には。
映像で見る第二次界大戦、ヨーロッパ編と書かれており、チョビ髭の軍服を着た男が独特の敬礼をしていた。
Mのマークの付いたファースト フード店で素早く食事を済ませた2人は、急ぎフロンティア シティを目指した。
2人を乗せた四輪駆動が道を爆速する。
夕方にはフロンティアシティの領主館に着くと、急ぎ領主に面会を求める。
領主館の執務室、アルフレッド伯にこれまでの経緯を話し、ロックにもらった写真の束を渡して説明する。
一通り説明した後に、対帝国装備の為に対戦車ヘリの購入の分にこれだけ要るとメモを渡すと、そのメモを一読したアルフレッド伯の第一声は。
「無理だ」
ため息と共にその一言を言うとインクブが部屋に響き渡る大声で。
「無理って何でだ?………戦車が来るんだぞ!!」
そう言うと領主に 詰め寄った。
さながら牛の暴走である、側で見ていたイザベラはハラハラ物だった。
それでもアルフレッド伯は冷静に。
「落ち着け、…今は金が無いから無理なだけだ、要塞建設に予算を取られてるんだぞ?」
「……………!! あー、確かに〜w………」
インクブがそう言うとイザベラが震えた声で。
「何とかなりませんか、アルフレッド伯?」
アルフレッド伯はイザベラに。
「要塞建設だけではありません、…畑の拡張、金山の採掘、街の整備、どれも金がかかります」
そこまで言うとアルフレッド伯はそれにと付け足した
「…現状では戦車は重量が重すぎて石の橋ばかりの王国では進行速度が落ちます、つまりここ開拓地まで来るのは余裕がある」
それを言われてインクブも頷きながら。
「確かに…フロンティア領軍もそれがあって改造戦闘車両とホイールローダーで渡ったんだった!」
砦の建設までは持つな、そうインクブが言うとイザベラが慌てた声で
「ちょ!!王都は?」
何とかしてくれと言いながらインクブの胸ぐらを掴んで揺するのだが、いかんせん体格の差でビクとも動かない、それを見ながらアルフレッド伯が。
「資金が無いから作るしか無いですな」
そう言うとイザベラの方を見ながら。
「王都の危機なんです、王都にも金策をしてもらわないと割りが合わない」
そう言って突き放した、それを聞いてイザベラは慌てて。
「し、資金と言っても現状では王都も予算が………」
アルフレッド伯は少し考えてから、手はあると言い。
「隣のブロッケン領を王都直轄地にして異世界(地球)の開発援助を受ければ良いんです」
アルフレッド伯は開拓地領でも同じ事をして成功していると言い。
「彼らは我々王国では使わない希少金属や薬草などを高値で引き取ってくれます」
それにとインクブの方を見ながら。
「対戦車ヘリ(ハインド)を買ってそれだけでは済まんだろう?」
整備、燃料、人員、それらはどうする?、そう言われてインクブはタジタジになる。
「………確かに、ヘリポート、格納庫、燃料施設、整備スタッフ」
それだけでもメモの倍以上の資金がいるがそれにしても。
(アルフレッド伯の慧眼には恐れいる、的確に現状を見ている)
そう思いながら、これが領主か…そう思いながら感心していた。
アルフレッド伯はインクブに。
「要塞建設地に帰って、マクマザーンと相談しろ、場合によっては王都までイザベラ卿と同行しろ」
話は終わりだ、そう言われて執務室を出たインクブとイザベラは一路、要塞建設地まで向かった。




