赤鬼のトマス
フロンティア領軍の作った馬防柵、その後ろにある丘、その丘を180度グルリと回り込んだ所に、フロンティア領軍の要塞建築基地が作られていた、要塞を作る為に現場事務所、作業員宿舎、食堂、厨房、シャワールーム、などの建物の前にまず、臨時の夜戦病院が作られていた、大きなテントの中に診察室と病室、外には災害派遣の時に使う動く手術室と呼ばれるドクターカー、そのドクターカーの中でトマスの治療が行われていた、
手術室の治療が終わりトマスがテントの中の病室に運ばれると、手術をしたドクターは外で一服する為に喫煙所に指定されている場所でタバコを吸っていた、そこにボーヴァンが現れた
「先生、トマスの具合は?」
「骨は全部、掻き集めて繋いでおいた」
そこまで言うと、タバコを一服着いて
「医者は身体はな、治せる、治せるけど心までは無理だ」
そう言うとボーヴァンの方を向いて
「そっちは任せてたからな?」
そう言うと仕事に戻って行った
ボーヴァンはそのまま、マクマザーンの所に行くと医者の言葉を伝えた
マクマザーンは机にある要塞の設計図を見ながら
「今回の件だが、トマスは作業中に転んで怪我をした、領兵は最初から死んでいた」
地図から目を離し、眼鏡を外してボーヴァンの方を見て
「領主様にはそう報告しておく、勿論、作業中の怪我だから治るまでは領軍で面倒を見る」
それを聞いてボーヴァンは
「すまんなマクマザーン、恩に着る」
それを聞いてマクマザーンは
「なあグッド、おかしいと思わないか?」
「何がだ?マクマザーン?」
マクマザーンは聞き取りしたメモの束を見ながら
「トマスの嫁さんが連れて行かれたのが10年前、それから度々女達が何人か連れて行かれたって話があるんたが」
メモをめくりながら
「帰って来たって話が出て来ないんだ」
ボーヴァンは眼を見開いて
「なんだって?」
マクマザーンはメモをボーヴァンに渡すと
「連れて行かれた女達の特徴を見てみろ」
ボーヴァンはメモを見た
場所や歳はそれぞれバラバラだが
比較的若くて、白人種、金髪、その3つが共通していた
「確かにフロンティアは白人種が大半だが、髪の色はバラバラだぞ、それに亜人種が1人もいない」
異世界開拓地は白人種が多いが髪の色は黒色や赤毛などバラエティに富んでいる、亜人種の女性も耳だけネコミミで後は人間と変わらない人も居る
「トマス達義勇兵の話しだと、トマスの嫁さんが最初らしい、10年前だ」
「そして捕虜の話の聞き取りによるとブロッケン領にカール候が来たのも10年前らしい」
そこまで言うとマクマザーンはボーヴァンの方を見て
「この話、ただの女好きだけではおかしすぎる、消えた女達、彼女達は何処に消えたんだ?」
トマスはテントの中の病室のベットで点滴を受けていた、その頭の髪の毛は白いモノが増え、さながら老人の様に見えた
「入るぞ」
そう声が聴こえてボーヴァンが病室に入るとトマスは慌てて起きようとするが、慌ててボーヴァンがそれを止める
「点滴してるのに動くな、そのまま寝てろ」
手には何やら紙袋を持って小さな女の子を連れて居る
「その子は?」
そうトマスが聴くとボーヴァンは
「今回、ブロッケン領兵の駐屯地から保護された女達の中の1人だ」
女の子は歳の頃は12歳くらい、白人種の金髪が人形見たいで可愛い
「名前はマリーって呼んでる」
それを聞いてトマスは
「呼んでる?」
ボーヴァンは顔をしかめて
「ああ、喋れ無いらしい」
ボーヴァンは紙袋の中から缶詰と紙の皿、プラスチックのフォークを取り出すと
缶を開けて中身を取り出す、黄色い桃を皿に移すと
「その手だと飯も食えんだろう、マリーに手伝ってもらえ」
マリーに皿を渡すと一口サイズに桃をカットしてトマスの口元に持ってくる
「すまんな」
そう言ってトマスが桃を食いだす
「後でマリーも食べなさい、桃はまだあるから」
ボーヴァンはそう言って紙袋を側に置く
「すみません、ボーヴァンさん」
そうトマスが言うとボーヴァンは
「グッドって呼んでくれ、赤鬼のトマスさん」
それを聞いてトマスが桃を喉に詰まらせる
「!!……………ゲボッ、 なんなんだ?その名前?」
ボーヴァンは笑いながら
「ウチの領兵もブロッケン領の捕虜もそう呼んでるぞ、赤鬼のトマスって」
そう言いながら自分も缶を開けて桃を食いだした
「お前、返り血と自分の血で全身真っ赤になりながら、人1人殴り殺してるんだぞ?そら2つ名も着くわ」
「2つ名て!! 俺ただの百姓だぞ?」
それを聞いてボーヴァンが呆れながら
「百姓なら鍬なに鎌なりあるだろうが、素手は無いわ素手は」
それを聞いてトマスが思わず
「何それ?何処の百姓一揆?」
それを聞いてボーヴァンは腹を抱えて笑いだした
「一揆って暴動かよ? まあそれだけ元気なら後で散歩でもしてみろ」
そう言って立ち上がりながら
「お前さんの怪我は作業中の事故って事にしてある、領軍では労働災害は保証対象でな、治るまでは面倒見るし給金も出る」
骨休めしとけ、そう言って出て行きながら笑っていた
後日散歩の為に外に出ると、フロンティア領兵達から声を掛けられて握手を求められ
あれが赤鬼のトマスかと言う声を聞いて
頭を抱えるトマスだった




