一夜城
トラックからリフトでサッカーのゴールに似た馬防柵を下ろす
違いはネットの代わりに金網と有刺鉄線を貼っている
金網伝いに登らせない為だ、橋の両側に隙間無く置いて行く
丸い鉄パイプを下に這わせてジョイントで繋ぐ
その上に黄色いプラスチックで出来た樽をリフトで置いて行く
樽の中には水が入っていて1トンを超える
ボルトとナットで樽を固定すれば、まず動く事は無い
それが終わると橋の幅で両側に馬防柵を設置する
橋の角から一直線に丘に向かってただ真っ直ぐに伸ばす
その行き止まりは射撃用の遮蔽物だ
ビルの工事に使う仮足場を使って壁を作る
厚さ1センチのベニヤ板を重ね貼りして強度を上げて射撃用に三角の窓を開けていた
3階建ての建物の高さと同じだけの高さに銃眼を無数に開けてある
100丁以上の銃が一斉に火を噴く用に考えられていた
「橋からの長さは400メートルある、ここ(フロンティア)で標準の弓の届く距離は100メートル」
作っている馬防柵を見ながら監督にマクマザーンが説明していた
「後ろの丘を囲む形で城砦を作る、その為の防衛線だな、破棄する際はベニヤを燃やす
時間稼ぎと再利用の防止の為だ」
あくまでこの馬防柵は仮の陣地で時間稼ぎが目的だ本番は王国正規軍、それが来るまでに砦を建設する
まる一日をかけて仮の陣地が出来上がった
丘のふもとに車両を置いて簡易テントを張って野営する
川の水をバケツに溜めてジョウロで水を懸ける簡易シャワーを浴びて村から運ばれた食事を交代で取る
見張りは領軍が交代で行う、夜勤番は昼間に寝て交代で行なっていた
次の日の朝、見張りからの報告で起こされた
「橋にブロッケン領軍らしき姿が見えております」
全員戦闘隊形に入れ、その命令を聞いてフロンティア領軍は飛び起きた
銃と弾の入ったアリスパックを背負うと銃眼に張り付く
マクマザーンは1番上の銃眼に行くと双眼鏡で観察する
橋の向こうから皮鎧に身を包んだ兵士が馬に乗ってこちらに来た
壁の手間150メートルの所で止まる、弓を警戒しての事らしい
「これは一体どう言うつもりだ?王国に対して戦でもするつもりか?」
相手の兵士がそう言うとマクマザーンが姿を見せて言う
「王国?ブロッケン領はいつ王都になったんだ?謀反でも起こしたのか?」
それを聞いて相手が顔を赤くして
「貴様、戯言を言うと後悔するぞ」
マクマザーンは涼しい顔で
「戯言?わが領主様を辺境の僻地に押し込んで、商人を追い返し、わが領を日干しにした時点で戦は始まってるんだよ」
そしてマクマザーンは殺気を込めた視線をしながら
「戦ならさっさと掛かってこいや坊主、それとも王国のスカートに隠れ無いと戦も出来んのか?」
ブロッケン領兵は顔を赤くながら
「後悔するぞ、貴様!」
そう捨て台詞を残して戻って行った
マクマザーンは下に降りると監督に
「ドローンで偵察してくれ、領兵は持ち場に待機のままだ、その場で食事を渡す」
トラックから軍用携帯食を皆に配る、中身は水で温める主食と副食のクラッカー、チョコレート、コーヒーなどだ村から来た志願兵にも渡して使い方を説明する
監督もドローンを飛ばしながらクラッカーを齧っていた
馬に乗った兵士を追って行くと、広場に集まっているブロッケン領兵が見えた
向こうも食事中らしく、所々で焚き火をしていた
「1時間おきに偵察して、動きがあったら連絡してくれ」
そう言い残してインクブとボーヴァンのいる所に向かった
「向こうは500くらいだな、馬が50騎、弓隊が100、あとは歩兵の槍隊だな、攻城兵器の類いは無いようだ」
「すぐだな」
コーヒーを飲みながらインクブが言うと
「一瞬で終わる」
そうボーヴァンが返した




