金色の王子様
「意外と簡単に受け入れられた…」
「そうですね。王族直々に認めてくださいましたから」
誕生日パーティーも終盤。
私達は、ダンスを申し込む子息達を一蹴しつつ、壁の華と化す。
あの後王族に認められたこともあり、見目麗しい2人は囲まれていた。
カイトに恋焦がれていた令嬢も少なくなかったらしい。
そのカイトは、私の後ろで令嬢達を威嚇してる。
猫かお前は。
そんな時、誰かが近づいてくるのが分かった。
「シャーロット嬢、私と踊ってくださいますか?」
目の前には恭しく膝をつく男子。
先程までのように断ろうとすると…金髪が目に入った。
面倒臭い。断言する、絶対面倒臭い。
「そうですわね、アデル・ハースト様。父から彼女を任されてまして。残念ですけど…」
顔を上げるその方は、金髪に金の瞳の王子様。
正真正銘この国の第二王子だ。
可愛い系美少年って感じですね。
とっても愛らしいロリショタだけど、細めるその目は、断ることは許さないと伝えてくる。
強引な人はいたけど、この人は権力的に逆らえないし…。
カイトの威圧と、アイリスの黒いオーラに耐えられる人も初めてだ。
こんな事、前もあった気がする。
どうしてこうなった…?
カイトとアイリスが囲むのは、もちろんアデル。
私はその2人に庇われるようにして立っている。
仕方なくダンスを踊り終えた途端、2人がブチ切れたのだ。
「アデル様。私、権力を振りかざして自分勝手に行動する方を嫌悪しますわ。この最低王子、シャーロット様と1番に踊るのは私でしたのに!」
「シャーロットが嫌がってんのわかんないの…?しかも、シャーロットの婚約者候補…。許さないから」
2人ともどっかに飛んでる。王子震えてるし。
最後のは初めて聞いたけど、私のじゃなくて、私が王子の婚約者候補なんだと思うよ?
「き、貴様ら、私は王子だぞ!?こんなことして、どうなるか分かってるのか?」
「知ってる、でもここ死角だから。王子の証言誰も聞かない」
「私がそんな事やらせるとお思いでして?当然、陛下に話は通してありますわ。裏からの根回しも」
怖い怖い。どす黒いオーラがやばい。
なんでこんなふうに成長してしまったんだよ。
ほら王子俯いて震えてるし、あれ泣いてるんじゃ…。
「何で逆らうの。僕は金髪だから、王家の一族なんだよ。ちゃんと父様の息子なんだからっ、母様の子供でっ、兄様の弟…金髪の僕の方が金髪なんだからぁ…」
ナンダコレ。俺様王子の本性はヘタレ王子って事?
ていうか、泣き出すって…。
10歳なんだから仕方ないにしてもさぁ。
元高校生の私としては泣き止ませなきゃ義務感が…。
「金髪である事を誇りに思うのは良い事ですわ。ですが、それは貴方の価値が金髪にしかないと言ってるようなものです。貴方は貴方でしょう?王子ではなくアデル様のお気持ちをお聞かせ下さい」
そう言って微笑むと、アデルは泣き止んだ。
「金髪じゃない僕に価値なんてあるの…?」
何か、可哀想になってきた。
ざっくり言うと、優秀すぎる兄は金髪では無く、自分には金髪、つまり血筋にしか価値が無いと思い込んだ的な。
子供らしいといえばらしいけど、このまま大人になったら末恐ろしい事である。
絶対拗らせてた。
あとこの世界髪に因縁有り過ぎない?
「貴方、馬鹿なんですか?私も金髪ですけど、誇りになんて思いませんわ。ずっと苦しめられてきたんですから。自分の価値など自分で決めるものです。今の私にはシャーロット様が、全てですし」
そう言って微笑むアイリスは、美しい筈なのに悪魔の微笑みのようだった。
怯える王子をついなでなでしまして、何故か感謝されまして、秘密だと約束をし、何故か赤面している王子を送り届けました。
やっぱり美少年は、お姉さんには目の保養だ。
背後から殺気を感じる…!
〜その後の2人〜
「シャーロット様になでなでされるなんて!あの王子、許しません!」
「またライバル増えた?あれはシャーロットなのかこの女なのか…」
「聞き捨てなりませんわね、カイト。私は貴方の事も認めてないんですから!シャーロット様は渡しません!」
「僕とシャーロット、離すの許さない…!」
「やってみなさい!返り討ちにして差し上げますわ!」
シャーロット「…仲良いなぁ」




