先祖返りの断罪
アイリスが家に来ることになった。
カイトみたいに養子という形じゃなくて、男爵家に籍は残したまま、家に居候という体になっている。
それからの私の日常は、とても充実していた。
アイリスとドレスを着てお茶会したり、カイトと男の子服で運動したり。
お母様とお父様だってラブラブだ。
絵に描いたような幸せな家族(+居候)
そんな私は、10歳になりました。
部屋を出ると、アイリスとカイトが待っててくれた。
「シャーロット様、素敵ですっ!本当に天使様のような、愛らしさ、麗しさと洗練された仕草が、ドレスによって引き立てられていて〜」
「シャーロット、綺麗」
…アイリスとは、親友になるくらい仲良くなりました。
間違っても信者じゃない。うん、違う。
「ありがと、2人とも。でも、2人だって主役でしょ?似合ってるよ」
今日はシルヴァ家の10歳誕生日パーティー。
同い年の2人だって主役なのだ。
アイリスが着てるのは、瞳に合わせた可愛らしいパステルグリーンのドレス。
出会った時は肩までだった金髪は、腰までになり、編み込んでまとめ髪にしてる。
カイトはすべて漆黒で揃えており、ネクタイだけが赤色だ。
こっちも髪の毛が随分伸び、背中までのを、1つに括ってる。
似合ってたから、言ったんだけど。
「いや、私なんかっ、その、勿体無いお言葉で…」
そんな赤面で慌てる事じゃないと思うんだ、私は。
カイトに至っては無言だけど、物凄い笑顔だ。
笑顔安くない?良いの?
取り敢えず紫のドレスに 、髪を軽く編み込んで下ろしてる私は、2人の手を引いて、会場へと乗り込んで行く。
ぼーっとしてないで、歩いてほしい…。
右手にカイト、左手にアイリスを伴って入場すると、拍手と同時に、侮辱してるかのような視線が突き刺さる。
魔の子、特例の金色と来れば、そうもなるかな。
そもそも、居候や養子と誕生日パーティーを行う自体、異質らしいし。
(作戦通りに行くよ!)
(分かりましたわ!シャーロット様の為なら、火の中水の中!)
(了解。…シャーロット離さない)
その後ろについてるやつ要るかい?
何か、ヤンデレ度が、加速してる気がする…。
お父様が待つ舞台に上がると、刺すような視線が突き刺さる。
私はそうでもないけど、2人は大丈夫か。
「シャーロットシャーロットシャーロットシャーロットシャーロットシャーロットシャーロット」
「天使様が見てらっしゃるの。シャーロット様の為なら、シャーロット様といる為、シャーロット様」
…聞かなかった事にしよう。
「皆様、この度は我が子達の誕生日パーティーに来て頂き、感謝致します。黒、特例の金と異質な髪を持つ彼等ですが、長年の研究により、先祖返りからなる物だと分かりました」
お父様が言い切ると、会場がざわざわし始める。
王族もいらっしゃるみたいだ。
さあ、断罪を始めよう。
カイトが前へと進み出る。
「初めまして、カイト・クローディアです。魔の子と虐待されてきた僕ですが、そのような事実は、ありません。大昔は、寧ろ黒髪が主流だったそうです。その昔の血が濃く出てしまっただけの僕に、それでも魔の子だと嘲りますか?クローディア様!」
名指しされたクローディア当主、周りにいるご子息達、夫人がビクリと肩を震わせる。
虐待したのが彼等だと分かると、周りの目も冷たくなっていく。
群衆とは無責任なものだ。
魔の子と罵るのに、事実とカイトの強さを見せつけただけで、クローディア家を罵る。
でも、利用させてもらう。
カイトと比べればこんなもの、軽いくらいだ。
一生罵られて、生きて行けばいい。
「アイリス・アーカスと申します。私の金髪は、とても古い先祖から引き継いだものだと分かりました。私は、どんなに少なくても、王族の血を引いています。もちろん母方ですよ?自分勝手に母を罵り、殺し、私を軟禁して髪を奪うような外道、違うに決まってるでしょう。売り捌いた私の髪、いくらになったのかしら。ねえ、アーカス様?」
アーカス家はここからでも分かるくらい青くなっていた。
ガタガタと震え出す彼等は、何を相手にしていたか分かったのだろう。
少なくても血を引いてる以上、アイリスの髪は王族の髪。
この国では、売り捌くのは、重罪に値する。
アーカス家は、没落だ。
実際もう兵士に囲まれてる。仕事が早い。
「シャーロット・シルヴァです。皆様、ご清聴ありがとうございました。2人は、私の親友と幼馴染です。傷付ける者は、シルヴァ家を敵に回すと理解してください」
私達3人を敵に回すとどうなるか分からない。
そんなイメージを与えられた事だろう。
実際アイリスの悪役感は私でも怖い。
とにかく、誕生日パーティーを再開しよう。




