プロローグ
私の名前はシャーロット・シルヴァ。公爵令嬢。前世は日本の女子高生だった。
前世の記憶があったり、周りが美形だらけだったり、複雑すぎる家庭環境に変だなとは思ってたけど…まさかここが、乙女ゲームの世界だとは思わなかったよ…。
だけど、生徒会長が挨拶する様子は、乙女ゲームのスチルそのもの。他にもヒントはあったはずなのに、気づけなかった自分の頭が憎い。
段々とシャットダウンする意識の中で最後に目にしたのは、慌てる親友と幼馴染の姿だった。
「シャーロット様っ!お目覚めですか!?入学式で急に倒れたのですよ」
目が覚めると、そこは学園の保健室のようだった。流石貴族の学校、広いし綺麗だ。
安心させるため、過保護気味の親友に目を向けると…ヒロインがいた。なんで気づかなかった私!? 髪型が違うとはいえ、それは確かに乙女ゲーム、『金色のアイリス~学園恋愛ゲーム~』のヒロイン、アイリス・アーカスだった。
いや幼い頃の絵は少ないけどさっ!金髪翠眼の整った容姿なんて中々いないでしょうよ。
思わず幼馴染に目をやると、そこには当然というように、全ルートをクリアすることで解放される隠しキャラ、カイト・クローディアの姿があった。
待て待て待て…ここまで来ると、もはや確実に私も登場人物だろう。この乙女ゲームは甘々な代わりに色々と設定が鬼畜なのだ。ついでにサブキャラの設定が細かい。キャラによっては普通に死もありえる。くそっ、良いの来いっ!
私の叫びも届かず、鏡に写ったのは悪役令嬢シャーロット・シルヴァ。
全登場人物のなかで1番の破滅フラグ持ちだった…。
名前は知ってるけどさ…。姿見ないと記憶戻らないんだよ…。せめて子供の時に気づかせてよ…。
「シャーロット、どうかした?具合悪い?」
鏡の前で固まっている私に、カイトが声をかけてくれる。だけど、この状況かなり不味い。カイトはどのルートでも最終的に私を殺すキャラだし、アイリスは敵対するヒロインだ。
分かったからには…。
「殺される前に逃げた方がいいかも…」
気づかないうちに声に出していたらしい。ボソッと漏らしたその声に、空気がピリッとする。
「誰…。俺とシャーロットを離そうとするの許さない。シャーロット…守るから側にいて」
「シャーロット様を殺す…?何処の馬鹿ですかそれは。今すぐ殺してこなくては…。シャーロット様を不安にさせるなんて、私は何て事をしてしまったの!」
いや、何処のヤンデレ乙女ゲームだコレは。そして思い出す。2人は何故か私を慕ってくれているし、私に害をなす者に敵意を示す。
腹黒最恐ヒロインと、束縛最強隠しキャラ。あ、コレ破滅フラグフルボッコだわ…。