夢
あなたは、どんな夢をみますか?
授業を受けてたり、 友達と遊んだり、仕事したり こんな日常的な夢?
それとも、 空を飛んだり魔法を使ったり冒険したりそんな非日常な夢?
わたしの、夢はね………………
*********
気がついたら、森の中にただ1人、ぽつんと立っていた。
どこを見ても、木ばかり。
一本だけ黄色い花が咲いている木もあるけれど。
やはり木だらけ。
ここは森だろうか。
耳を澄ましても風が木の葉を揺らす音しかせず、人が少なくとも近くにはいないことがわかる。
あれ、てか私なんでこんな所にいるんだっけ?
此処に来るまでの経緯がどうしても思い出せない。
「これから、どうしよう」
まわりに人がいないことをいい事に、独り言をブツブツ呟きながら近くをうろちょろ
5分位そうしても、何も起きなかった。
ここにずっと居ても仕方がないから、太陽を背にして歩くことにした。
これに特に意味はないが、強いて言えば日焼けを気にしてかな。
白い肌だけは、私の自慢だしね。
目的地なんてないが、兎に角歩いていればどこか建物のあるところには着くだろう。と、期待も込めた推測からただひたすら歩く。
普段は整備されたコンクリートの上ばかりを歩いているため、でこぼこな土の上を歩くのに慣れてないせいかすぐに疲れてしまう。
日頃の運動不足だな。
思わぬ所で転けないよう、足元を見ながら慎重に歩く。
そこでようやく私は気づいた。
ていうかなんで今まで気づかなかったのか不思議だ。
私、裸足なんですけど。
足の裏を覗くと、やはり泥だらけ。
それに加えて格好は、なんと白いロングのワンピース。
なんちゅう格好で森歩いてんのよ、私。
こんな軽装備で外にいるだなんて、ちょっとコンビニに行くとしてももう少し着こむよ。
ましてや裸足だなんて、幽霊じゃないんだから。
それか野生のゴリラに育てられた人間ね。
ツルに捕まって「あーああー」なんて叫んでね。
私の運動神経だと木に激突してそのまま永遠にこの世とさようならー、なんてこともありえるね。
幸いなことに足元には細かい石や鋭いものもなかったため、足の裏に怪我はしていない
どうしてこんな格好なのかも、考えてもよくわからなかったから、考えることを諦め、歩き続ける。
でも、もし人に会いでもしたらこんな格好じゃ恥ずかしいよね。
その時は隠れよう。
「うん、そうしようそうしよう」
____………
かれこれもう3、4時間は歩いているはずなのだが、まだ周りの景色は最初と変わらず木だらけ。
そろそろ景色変わったってよくないだろうか。
山を登っている感覚はなく、ひたすら平面を歩いているはずなのだけど…
こんなただひたすら平面の森なんて日本にあったっけ。
ここは北海道とか?
それとももしやジャングル?
それにしては動物とか、いないような。
「もう訳わかんない」
本日何度目かの独り言。
考えたところで、大したものは得られることはない。
休み休み歩いているが、もうそろそろ体力の限界。
休憩中は木にもたれて座っていたので、白いワンピースは泥だらけ。
何度目かの休憩中。
木にもたれ、地べたに座る。
最初は汚れるからと、さすがに抵抗があったけれど、ここまで疲れるとそうも言ってられなかった。
疲れからか、眠気が襲ってくる。
しかしこんな所で寝るわけにはいかず。
なんとか眠気をこらえながらも再びひたすら歩く、歩く。
そうしていると、少し辺りが薄暗くなり始めてきた
「ちょっと、休憩するね」
誰かに行ったわけではない、またもや独り言。
独り言は多い方だと思う。自覚はしているが、治らないものだ。
休むためにまた木にもたれて座るが、眠気から、自然と瞼が閉じるのを抗えない。
こんな所で寝たらダメだ、と瞼を開こうとする。
そうは思っていても疲労と眠気にはどうしても勝てなかった。
そのまま私は森の中で寝てしまったのだった。
********
_________ある日の夜中
教会の裏、目の前には茫々と森が広がっている。
そこは月明かりすら聳え立つ教会に遮られているため薄暗く、どこか不気味な雰囲気を醸し出していた。
そこで一服するのが私の日課だ。
この教会は、街にあるただひとつの教会。
さらに身寄りのない子供たちのための孤児院でもある。
私はそこで神父をやっている。
子供たちを寝かしつけた後に、毎日するこの一服は本当に身に染みる。
信徒の方たちや、子供たちにはあまり見せたくないので、いつもこの時間にこの場所。
この森の付近にはあまり人が近づかないからね。
ふと森の奥の方で白い布が揺れるのが見えた気がした。
見間違いだろうか?
目を凝らしてその布が何であるか確認するが、うまく視認できない。
そのため森に入ることに。
普通の村人は森の中には入ってはいけないという法律があるが
このあたりにはまだ結界も張られ
ているため、安全である。
魔獣が姿を現すことはないだろう。
それに私自身、普通とは言い切れないから、とんだ杞憂である。
夜の森の中に足を踏み入れる。
進むにつれて、段々と白い布の正体がはっきりと認識できる。
白いワンピースに、長い黒髪の女性が倒れていたのだ。
黒い髪
こんな珍しい髪色は…
「ミモザ、様……」
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▽
ジリリリリリリリ
早いリズムによって奏でられる大きなベル音。頭がいまいち覚醒してないため、この音量は不快を感じる。
信子はいつもの習慣で定位置にある頭上の目覚まし時計を手探りで止めた。
薄眼を開け、窓の外を見ると、明るい光が目に刺さる。
もう朝か。と、ベッドの中で軽く伸びをする。
時計を確認すると6時00分。
寝起きでまだボーッとしながら、さっきあった出来事を思い出す。思い出すと言っても、さっきまでは寝ていたので出来事といってもそれはただの睡眠となるが、そういうことではなくて。見ていた夢の話だ。
…今日の夢は、ただひたすら森の中を歩くという夢だった。
思い出すのは緑が彩る森の風景。
ついさっきの出来事だから鮮明に覚えている。
つまらない夢だったな。
だってただひたすら歩いては休み歩いては休みの繰り返しなんだもの。
どうせ見るならアニメキャラが出てくる夢が良かったな。なんて。
そんな夢なんて思い出している場合じゃない。
今日は土曜日。学校がある。
重い腰を起こして制服であるセーラー服に着替え、洗面所へ。
なんだか洗面所までの足取りがいつもより重く感じる。
夢だったけど、あんなに歩いたからなんだか疲れてるのかな。
やっぱりまだ寝ぼけているのかも。
顔に水を浴びせると、少し目が覚めてきた。
それからリビングへ行くと、母が朝食を食卓に並べている姿が見えた。
父は出張で昨日から家にいない。
「お母さん、おはよう」
「おはよう信子ちゃん。今日は家庭教師の先生がいらっしゃるから、早く帰るのよ」
「うん」
40代の、ベテラン家庭教師のおじさんは、超難関大卒で全教科教えられる凄い人。当然、それだけ呼ぶのにも相当お金がかかっている。通常の家庭教師の相場の5倍程度である。
他にも習い事として、バレエや日本舞踊、声楽にピアノとバイオリンに琴、華道を習っている。
このように我が家はちょっと裕福で、金に物を言わせて多くの習い事を幼少期から習っていた。
しかし、どの分野も特に目立った才能もないため、コンクールにも出てはおらずその道で生きて行くことは出来そうにない。
けれど、どれもやっていて楽しく、特にやめる理由もないために趣味として続けていた。
これだけ習い事を始めたきっかけは、別に私がお嬢様教育を受けているというわけではない。
たしかに家は裕福な方ではあるが、決して父は経営者などではなく、あくまで大手企業に勤める会社員である。
小さい頃から、アニメが大好きで、そのキャラクターがやっていたバレエやバイオリンなどに憧れてやってみたら、そのまま続いていただけ。
そんなことを考えながら、母の用意した朝ごはんであるサラダと5段のホットケーキとスクランブルエッグを紅茶と一緒に食べる。
「いってきます」
車から出て、運転席に座る母に手を振る。
過保護な母は、いつも私を学校まで車で送ってくれる。私自身、別に電車通学でもいいのだが、正直車の方が楽であるために送ってくれるならまあありがたく送っていただこうという考えである。
最初の頃、中1のころは電車で通っていたのだが、東京特有の満員電車、まわりがおじさんばかりのすし詰め状態の電車内で痴漢にあってから、母が心配して車通学となった。
ひとりっ子で、過保護な親、特に母に蝶よ花よと育てられてきた私だけど、別に中身はそこまで女の子らしく育ってきてはいない。
自分の見た目も、地味で可愛くなくて、彼氏いない歴=年齢の身としては、自惚れるようなことはなく、地味に生きてきました。
私の通っているこの高校はお嬢様校というほどではないが、一応私立の中高一貫の女子校なので、ある程度裕福な家庭が多いがべつに普段からごきげんようという挨拶を使うほどの学校ではない。
今日は土曜日で、授業は四限まで。
だからいつもより楽だ。部活も入っていないから放課後は何もないしね。
四限までの授業は長いようで短いようで、まああっと言う間に帰る時間になったのだが、ひとつ、気になる事があったんだよね。
誰かに言うほどの事じゃないんだけどさ。
二限目にだったかな?たぶん10時くらいだったと思うんだけど。
そのときにフワッと浮いた感じがしたんだよね。
なんか急に体が軽くなったというか、宙に浮かんだ気分というか。
うまく説明は出来ないんだけど
気のせいだったのかな?
実に不思議な体験。幽霊とかの仕業だったら嫌だな。
考えていたら背筋がぞぞっとしてきた。
ひい!こんなこと忘れよう。
きっと気のせいだよね。
さすがに帰りは満員電車でもなく、仕事をしている母も帰りは迎えには来ない。
ということで、友達の真紀とともに駅までの帰路についた。
土曜日ということも相まって、賑わっているこの繁華街は、都心ならでは。
クレープ屋や、今時の女の子が好みそうな可愛らしい洋服屋。
アクセサリー屋など、学校から駅までは寄り道するところがたくさんある。
だけど校則が厳しいから、寄り道は禁止。
とか言いつつも学校から離れた駅とかは寄り道してもバレないからするけどね。
歩くごとに変化する、店から流れる音楽。
よく聞いていないと会話が聞き取りづらい。
あ、この曲人気の恋愛ソングだ。
よく共感できるとか言うけど、恋愛経験とかないから全く共感なんて微塵も出来ない。
いつかできる日が来るのだろうか。
…なんだか一生来ないような気がするな。
いつもの下校道で、他愛のない話を真紀とする。
「信子、私ね、昨日すごい楽しい夢見たんだー」
「真紀、どんな夢見たの?」
「空飛んで、雲の上に行くんだけど、そこがテーマパークになってたの。し、か、も、ね!
推しキャラのマリンちゃんといっしょに遊んだんだよー!もう最高すぎる…
小野ちゃんは何か見た?」
マリンちゃんが夢に!羨ましすぎる!
マリンちゃんは、幼児向けのアニメ『魔法少女マリン』の主人公のことである。
元々真紀は乙女ゲームが好きで、アニメも逆ハーものが好きであるのだが、私は『魔法少女マリン』を布教したら見事にハマってくれた。
「いいなー!羨ましすぎる!
えーっと、私は…」
えーっと、夢か…あれ?何見たっけ?
朝は確かに覚えていたという記憶はあるんだけどな…
んー、大した夢じゃなかったのかな。
「ううん、覚えてない。
たぶんしょうもない夢だったかも」
それからまっすぐ家に帰って、遅めの昼食をとり、家庭教師が来るまでのんびりとスマホでアニメを見る。
家庭教師が帰った後も、引き続きアニメや漫画。
特に見るのは魔法少女のアニメ。
魔法使いとか、妖怪とか、そんな非現実的なものが出てくるアニメが好きだ。
もしも魔法が使えたらとか妄想して、厨二病に陥ることが多々ある。
アニメはいいよね。
主人公が、その勇気と特殊な力を持っている。
自分には到底ないものは、見ていて楽しい。
今日も、味気ない一日だったな。
習い事以外はいつもゴロゴロしながらアニメ見たり漫画読んだり妄想したりしているから、私は、干物女なんだろうか。友達もさほど多くもないし。
こう、何か急に不思議な力が使えたり、異世界に飛ばされたり、宇宙人が攫いに来たりとかしないかな。
そんなあり得ない妄想をいつものようにしながら。
明日は日曜日で休みだからと、少し遅めに布団に入って寝たのだった
時刻は深夜1時だった。