一人きりの女の子
初めての短編です。
秋から冬にかけて寒くなる季節。
一人の女の子が米の脱穀作業をしていました。
寒いすきま風が吹いてくる古い家に一人ポツンと、そして黙々と籾殻を擦りとる女の子。
背は低く、顔も手も小さな女の子。
時折手に息を吹き掛けて、両手を小擦り合わせています。
寒くて広い土間にて一人きり。
誰か他に居ないのでしょうか?
辺りを見回しても誰も居ません。
こんな幼い女の子一人残して両親は何をしているのでしょうか?
あ、戸が開かれました。
戸口から男の子が入ってきました。
その後ろから男の人と女の人が現れました。
この三人は親子なのでしょうか?
どことなく似ていますね。
だけど三人は女の子を無視して行きました。
女の子も何の反応もしません。
あれ? 親子じゃないの?
それから少しして四人が食事をしています。
先ほどの三人は膳を並べて仲良く食べています。
でも、女の子は土間に蓙を敷いてその上に座り食事をしています。
三人の食事よりも貧相な物を食べています。
椀も少し欠けているみたいです。
なぜ、この子だけ違うのでしょうか?
三人が笑いながら楽しそうに食べているのに、女の子は無表情で黙々と食べています。
三人にはこの子が見えないのかしら?
努めて無視をしているわけではないみたいだけれども、相手をしようともしないなんて?
そして、夜。
三人は固まって寝ていました。
あれ? 女の子は?
あ、居た!
女の子は土間にいて蓙にくるまって寝ていました。
とても寒そうです。
ガタガタと震えています。
いけないわ! このままだと風邪を引いてしまう!
でも、私には何も出来ない。
……ごめんなさい。
それから数日。
三人と女の子は何も変わらない生活を送っていました。
女の子は一人でした。
ああ、私は女の子に何も出来ないのが悔しい。
せめて何か! 何か出来ないかしら?
ある日の事。
何時ものように女の子は米の脱穀をしていました。
一人黙々と作業をする女の子。
時折手に息を吹き掛けて、両手を小擦り合わせています
ああ、誰かこの子を暖めて欲しい。
私には何も出来ないの。
誰かお願い!
あ、戸が開かれた。
あの三人が帰ってきたのね?
え、違う? 誰、誰なの?
見たことのない男の人が入ってきました。
男の人は辺りをキョロキョロと見ていると女の子を見つけたようです。
近寄って女の子に声を掛けました。
女の子は顔を上げました。
すると今まで無表情だった女の子は顔をくしゃくしゃにしています。
え、どうしたの?
そして、男の人が女の子を優しく抱き締めると女の子は大きな声で泣き始めました。
とても大きな声です。
あの小さな女の子がこんなに大きな声を出せたなんて思いもよりません。
ああ、きっとこの人があの子の親なんだわ。
男の人と女の子が抱き合って少しした後に、やはり見た事の無い女の人が入ってきました。
その人は男の人と女の子を見ると駆け寄って二人を抱き締めました。
女の人は声を出して泣いています。
あらあら、大の大人が声を出して泣くなんて?
男の人と女の子、女の人は手を繋いで家を出ていきました。
女の子の顔は、私が見た事の無い笑顔でした。
あの子、あんな顔が出来たのね?
もう、ここには帰って来ないのよ。
私は女の子に向かって祈りました。
思い付くまま書いてみました。