まず、ルームメートが末っ子属性だったんだ
処女作です。
数年前の夏に思い付いたキャラを元にして、ファンタジーにしようかとかいろいろ悩んだのですが、結局学園物に落ち着きました。
自分が楽しいと思うものを詰め込みました。
なんでやねん。
僕は関西出身ってわけじゃないけども。
「よよよよりょ、よろしくたのっ、たのむ...っ」
ルームメートとなる一年相手にガクガク震えながらよろしくの言葉を言った生徒会長を目の前にすると、このセリフしか頭に浮かばなかった。
どうしてこうなったんだろう...。
時はざっと数時間前まで遡る。
このたび名門私立である中高一貫校、陽澄宮学園高等部に入学した僕こと夏風撫子は、歴史を感じさせる気高い校舎に感動を覚えながら桜舞い散る校門をくぐった。おいそこ勘違いするな、僕はこんな名前だけど男だ。父さんが産まれた子供の性別もろくに確認せずに一人お役所に突っ走った結果だから。
閑話休題。
とにかく、僕はこれから始まる高校生ライフに胸をワクワクさせながら校門をくぐった訳だ。ちなみに隣には一緒に入学した幼なじみの荒野明もいたこともここに記しておく。
全寮制のこの学園では、中等部からの持ち上がりではない新入生は、大きな荷物は入学式の前に寮の玄関に置いておくというので、明と並べて荷物を置いた。入学式の間に寮の部屋に運び込まれるらしい。
「やったね明...僕たち、あの名門、陽澄宮学園の制服着てる...っ」
「ああ...頑張ったよな、受験勉強...っ」
陽澄宮学園は歴史のある私立校で、これまでに輩出してきた著名人は数知れず。卒業生とかからの莫大な寄付により、一般庶民でも通える、良心的な学校だ。まあその分偏差値も高ければ倍率も高いわけだけど。
そんな名門校の寮から講堂までの道もとても綺麗で、流石名門私立、お金持ち~としか思えない僕はやっぱり一般庶民です。
そして着いた講堂で行われた入学式も滞りなく進み、新入生挨拶とかしちゃう明さっすがかっこいい!とか考えてたら在校生からの挨拶となった。
「在校生代表、生徒会会長、木通秋」
「はい」
在校生代表として、生徒会長が壇上に上がる。その第一印象は、とにかく綺麗な人だな、ということだった。少し茶色のかかった髪は癖っ毛なのだろうか、所々はねていたけどさらさらと揺れて、すらりとした体型は日本人離れしていた。顔立ちもかなりの美形。これまで女顔だとか童顔だとか散々言われてきた僕は美形に対してイケメン爆ぜろ!とか思っていたけども、この時ばかりはそんなことも思い浮かばなかった。え、こんな美形でおまけに生徒会長ですか、天は二物を与えるんですか、ええそうですか、与えるんですね。
僕は静かに荒ぶりながらそっと周りを見回すと、新入生の女子は勿論、男子まで見惚れている人もいるし、在校生の列の方ではファンらしき人達が恍惚とした表情で眺めている。明は、世の不平等にうちひしがれていた。
「暖かな春の陽射しに_____」
そんな反応も生徒会長は意に介さず挨拶を始める。わあい声も美声なんですね僕(と明)のライフはもうゼロですよ!ちくしょう世界は残酷だ!
やっと入学式が終わった。僕と明はリアルにorzポーズをしそうになりながら這々の体で講堂から出た。
「撫子...眩し過ぎた...灰になる...燃える...」
「い、生きろそなたは美しい...っ、ぐはっ」
「な、撫子おおおおお!」
そんな茶番をしながら歩いていると、なにやら人だかりが見えた。
「ん?なんだろ、あれ」
「本当だ、なんかやってるのか?」
「ああ!撫子!明!お久しぶりです!」
「「十六夜先輩!」」
急に名前を呼ばれたから振り返ってみると、そこには懐かしい中学時代のひとつ上の先輩、十六夜とと先輩がいた。先輩は大きなトンボ眼鏡を押し上げながら言葉を続ける。
「驚いたでしょう、あの人だかり」
「はい、何なんですか、あれ?」
「何か殺気立ってるんですけど...」
先輩はにこやかにええ、と言った
「部活の仮入部受付なんですよ」
新入生の獲得は戦争です、と先輩は笑う。それが直接死活問題になるような少人数部もたくさんあるからだそうだ。
「それなんて二次元...」
「事実は小説よりも奇なり、ですよ」
とろろで、と先輩は小首をかしげる。
「撫子は我らが理学部に入ってくれるのでしょう?」
「はい!」
十六夜先輩は中学時代、僕と同じ科学部だったのだ。明は帰宅部だったけどしょっちゅう科学部に遊びに来てたから十六夜先輩も可愛がっていた。彼は高校でも帰宅部を貫くらしい。それを先輩に伝えると、残念です、と言いながらもらしいですね、と笑った。
そして僕が先輩と仮入部に行く、と言えば、明はじゃあ俺は寮にもどって同室になる人に挨拶する、と言って寮の方へ歩いていった。
「二人とも元気そうで何よりです」
「はい、すこぶる元気にしてました。科学部もちゃんと後輩たちに引導を渡しましたよ」
「それはよかった」
そんな話をしながら、僕は先輩に生徒会長さんについて聞いてみた。
「そういえば先輩、在校生挨拶の、」
「ああ、木通生徒会長ですね。凄い人ですよ、あの人は」
「すごい」
「ええ、容姿端麗で文武両道、おまけに人望もあります」
「わあチート。二次元から飛び出して来たんじゃないんですかその人」
「実はそうかも知れないとわりと本気で考えてます」
「考えちゃってるんですかw」
会話をしているうちに仮入部の申し込みも終わり、僕は先輩と別れて寮へ向かった。
寮へ着くと、明が待ってくれていた。
「あ、明、どうだった?同室の人」
「ああ、三年の先輩だった。いい人っぽかったぞ」
明はそう言うとそれから、と続けた。
「俺、古典研究会とか言う部に入部することになった」
「ファ!?」
「なんか...いつの間にか本入部の紙にサインしてた。てかさせられた」
「ねえほんとにその人大丈夫!?いい人!?」
「いい人だぞ、多分」
「多分って!?」
...明がそう言うんだからいい人なんだろう。多分。きっと。信じたい。
二人で寮に入って階段を上り、目指すは三階の角部屋。明はその向かいらしい。部屋の前にたどり着いて、ネームプレートを見たって、ちょっと待て。
「木通秋って書かれたプレートがあるんだけど...。僕は夢を見てるのかな?ねえ明、夢って言ってよ」
「ごめん、これが夢なら俺らは同じ夢を見てることになるぞ」
「嘘でしょ...?」
何回目をこすってみてもそのプレートはでーんとそこにある。え、僕生徒会長と同室?無理ですSAN値直葬です。現実から逃避していると、扉がガチャ!と音を立てて開いた。
「知るかもう高3だろう!そんなんじゃこの資本主義社会で生きていけないぞ!」
あれ?
「生徒会長、じゃない...?」
怒鳴りながら出てきたのは生徒会長ではなく、肩口で髪を切り揃えた、眉毛が立派な人だった。
「朝桜先輩?」
明が不思議そうな顔をして尋ねる。今だ状況を把握しきれていない僕に、俺の同室の先輩、と教えてくれた。成る程雰囲気はいい人。その朝桜先輩は僕たちに気付いたかと思うと、眉を思いっきりひそめた。
「あぁあ、お前がそんな風に諦めが悪いから新入生に見られただろう」
自業自得だ、と朝桜先輩はよく見たら腰に引っ付いてる誰かをばしばしと叩きながら言う。ねえその人まさかだけど...
「無理ぃ、知らない人無理ぃ。生徒会長権限をフルに活用してまたお前と同室になるううううう」
まさかの生徒会長だったよ。どういうことだってばよ。壇上の威厳どこ行った。泣いてんじゃん。めっちゃ泣いてんじゃん。泣いてても美形とか世の中不平等だ。僕が戸惑っていると朝桜先輩はアホか!とその生徒会長を腰からべりっと引き剥がす。
「あぁぁぁぁぁ...」
「とっとと部屋戻って新入生に挨拶しろこのヘタレが!」
そのまま朝桜先輩はげしっと生徒会長を部屋に蹴り入れて僕に向いた。わあやっぱり眉毛が立派だ。
「朝桜春助だ。お前は、荒野の友人か?」
「あ、はい。夏風撫子といいます。」
僕がそう言ってよろしくお願いします、と頭を下げると、先輩はふむ、と言った。
「おかしいな、ここは男子寮だが」
「誰が女子だぁっ!」
思わず腰に蹴りを入れてしまった僕は悪くないとあくまで言い張る。
そして今この状況だ。回想が長くなってしまった。
生徒会長はフローリングの上に正座していて、その視線はあっちこっちにうろちょろしている。
「お、おれ、人見知り、で...っ」
ぼろぼろと涙を流すその姿は、とてもあの生徒会長とは思えない。小動物か。あ、しっくりきた、まんま小動物っぽい、この人。てかなんだろうこの末っ子オーラは。妹がいる身としてはポイント高いです。そして僕は決めた。
「あ、あの、お願いだから他の人には言わ」
「言いませんし笑いません。だから取り敢えず抱き締めさせろください」
「え、」
返事を待たずに抱き締めた。
この子は僕が守る!
「あの、え、お、女の子にはちょっとおれ耐性な」
「誰が女子だぁっ!」
「ひぃっ」