真名
予想以上に学園にいくまでが長くなってます(・ω・`)
シスター・マリアから学園への入学許可がおり、非常に嬉しい最中ではあありますが、やることはまだまだあるようです……
でもたっぷり予習をして入学すれば、フィリオに負けない位の良い成績をとれるのでは?
よーし! 頑張りますか!
【では真名を覚えてもらおうか】
ぐふっ!!
折角やる気をだしたのに……
テンションが下がりましたよ……
そうか。
ついにこの時が来てしまったのか……
【クックック、準備はよいか?】
エエ……
いつかは来ると思っていましたので……
紙と書くものをとってきますね……
準備が整いお勉強の時間である。
最初に言われたのは、大雑把には2種類の用途で覚えるとのこと。
一つ目が転換に用いる物質や現象などを示す真名。
二つ目が構築に用いる動きや方向、形や数字などを示す真名である。
あれ?
でもこれって覚えてしまえば魔法を使えるってことになるのかな?
それなら早く覚えて使ってみたい。
【さあ準備ができたのなら……】
『先に注意しておきますが、不用意に真名を口にしてはいけません』
えっ? ダメなの?
シロに注意されなければ普通に口に出してたな。
【チッ!】
えっ! クロさん、何その舌打ち。
先にばらされた感が満載じゃないですか。
『真名はそれ自体に力を持つ言葉。不用意に言葉に出すとファルナを消費することになります』
おおう、あぶないあぶない……
シロ先生が先に言ってくれて助かった。
クロは反応が見たくて黙っていたんだろうな……
フフン! これからは、そうやすやすと反応しないぜ!
【まあ文字とするにもファルナを消費するがな】
エエエーーーー!?
そしたら覚えるまでにどんだけ使うのさ!?
【クハハハ!! 良い反応だ!】
くっ、ご機嫌ですね!
クロは本当にヒトが悪いと思う……
こればかりは、どうしようもない。
まあ、良く考えてみれば、そんなに簡単に書けるものではないのだろう。
真名を書くのにはファルナが使われるということは、魔法書を書くにもファルナを使うと言うこと。
魔法書はとても高価なものだと聞いている。真名を書くのに一苦労だからこそ、高価な物と考えれば納得できる話である。
【では火の真名を覚えることから始めるか】
おお!
火と言えば当に魔法の代名詞!
はやく覚えて使ってみたいなぁ……
【まず縦に線を書き、そこから曲線を描くように右上に切り返す】
真っ直ぐ縦に線を引いて……
切り返すような曲線はこうでいいのかな?
【そこから真下に……ああ! 違う! それでは曲線の膨らみが逆だぞ!】
ヌウウウウ!
もどかしい!
これは予想以上に困難である。
1つの真名を書くだけで相当な時間が必要だろう。
参考になるものがあれば……
あれ?
シスター・マリアが魔法書をもっているじゃないか。
貸してもらえないか頼んでみようかな?
見るだけでも参考になるだろうし。
『文字の形を想像しやすくなると思います。良い考えだと思いますよ』
ボクにしては素晴らしい思いつきですね!
さっそくとシスター・マリアの所へと向かう。
ちょうどお茶を飲んで休憩中だったので、勉強の為に魔法書を貸してもらえないかとお願いする。
「残念ですが……教会のお務めもあります。それよりも危険なものですから貸し出すことは出来ません」
まあそうですよねー。
ガッカリしたボクを見て申し訳なさそうにしていたのだが、何かを思い出したかのように話始める。
「昔修行中に書いた治癒の魔方陣ならありますが、それでよければ貸すことはできますよ?」
やった! 参考になるものがあれば全然違うものね!
「それ貸してもらえる!?」
「ええ、いいですよ」
パッと明るくなったボクの顔を見て嬉しく思ったのか、微笑みながらと答えてくれた。
「確かあの辺に……少し待ってくださいね」
そう言うと倉庫の方に向かい、ゴソゴソと探し始める。
探すのに少し手まどったのか、10分ほどしてから丸められた紙を持ってきてくれた。
「ハイ、大切な物ですので丁寧に扱ってくださいね」
「あの、ありがとう!」
「私に出来るのはこれくらいのことですから。頑張ってくださいね」
ボクは再度お辞儀をしてから部屋を出る。
シスター・マリアには本当にお世話になりっぱなしである。
大きくなったら絶対に恩返しをしなくちゃいけないね。
自分の部屋へと戻り、机に向かって気合を入れる。
これで真名の勉強もはかどるというもの。
さっそくと中を開いてじっくりと観察する。
円の中に良く分からない文字がびっしりと書かれており、ぱっと見では模様にも思えてしまう。
大きな円の中には小さな円が2つ、円と円の間に真名が書かれている。
真名は一文字ごとに分かれているのではなく、文章の様に繋がって書かれていた。
【中央に書かれているのが転換、外側の2つが構築に関する内容だな。その魔法陣はもっとも基本の形をなしておる】
なるほど……
基本ってことはもっと複雑な物もあるわけだね。
【とりあえず文字を書き写しておくとよいだろう】
確かに。
大切なものだと言っていたし、早めに返しておきたい。
取り敢えず書かれている文字を写した方が良いだろう。
よし! さっそく真ん中の文字から取り掛かろう。
『あ、ポコ……』
【では書いてみると良い!】
ん……?
シロが何か言ったような……?
書き初めてしまったので、取り敢えず終わらせてしまう。
書き終わると文字がボンヤリと光るのと同時に、少しクラッとするような感覚に見舞われる。
これがファルナを使ったって事なのだろうか?
『その通りですが……クロは本当に人が悪いですね。私も先に言おうかとは思ったのですけど……』
【クックック、いやなに体験しとくのが一番だと思ってな】
えっ、なになに?
どう言うこと?
『通常真名を書くときにはファルナを集めてから書くのです。そうすることで使用される量の調節ができます』
なるほど。
でもなんで人が悪いのかな?
『そのまま書いてしまうと内側から直接ファルナが引っ張られてしまいます。そうなると身体部分で吸収されてしまい、無駄に多くのファルナが消費されてしまうのです』
な、なんだって!
クロの野郎!
【クックック】
くっ、なんて楽しそうなんだっ……
『声に出す場合にも同じです。ファルナが不足している場合には気を失うこともありますし、最悪魂の死を迎えることもあります。十分に注意してください』
えー!? それって死ぬってことじゃないの!?
クロの奴……なんて危ない事をさせるんだ……
まあ一文字くらいじゃ問題ないんだろうけど。
今度はちゃんとシロに確認をとることにしよう……
仕切りなおして手のひらに収まる程度のファルナを集中し、その状態で他の文字も書き写しはじめた。
一文字書き終わるごとに次第に小さくなり、5文字ほど書き写した時には、ごく僅かに残る程度である。
ふーむ……文字にするのって結構消費するんだね。
もっと大きく出さないといけないかな?
でもさ、圧縮したファルナでこのくらいって……
普通なら直径1メートルくらい必要なんじゃない?
【何をいっとる。凝縮できないなら一文字ごとに集中を行うに決まっとるだろ】
あ、そりゃそうか。
ボクもまた集中すれば良いだけだね。
その後、何度もファルナを集中しながら黙々と書き写し続ける。
「っと、こんなもんかな?」
文字の繋ぎ目が分かりにくく、何度か間違えながらもどうにか写し終わった。
書き写すだけでも結構な時間とファルナを消耗した気がする。
これを覚えるんだよね……
頭を使いすぎて熱がでるかもしれないな……
【これくらいで熱がでるのなら、明日には頭が爆発しとるぞ】
ぐおおう……
先が思いやられる……
取り敢えず写し終わったので、早々に魔方陣を返しに行いくことにした。
シスター・マリアは机に向かって仕事をしている。
邪魔をしてはいけないとしばらく待っていたが、ボクが来たことに気が付くと、メガネをはずしてこちらを向いてくれた。
「どうかしましたか?」
「これを返しにきました」
ボクは魔方陣を差しだしてお礼をいう。
シスター・マリアは座ったまま魔方陣を受け取ると、ニコリと微笑んでから口を開く。
「あら、もういいのですか? 魔法は使えましたか?」
あ、そうか、勉強って魔法の練習をすると思ったのか。
「ううん、魔法を使った訳じゃないよ。文字を書き写しただけ」
そう答えた瞬間にシスター・マリアは驚いた様に立ち上がる。
「だ、だいじょうぶですか!」
「えっ!?」
シスター・マリアの慌てぶりにボクの方が驚いてしてしまう。
「い、いや、別になんともないけど……」
シスター・マリアはホッとした表情をした後、すこし険しい表情になる。
「危ないことを……私が注意する事を怠ったのも悪いのですが、自分がどれだけ危険な事をしたのかわかっていますか?」
えっ、そんなに危ないことだったの?
ファルナを集中していれば問題ないんじゃないの?
しかしシロに聞いたと答える訳にもいかず、下を向きつつ首を振ることしかできなかった。
「いいですか、真名を書くとファルナが吸いとられます」
あ……それ知ってます……
「不用意に真名を書くと気を失ったり、一生目を覚まさないこともあるのです」
それも知ってます……
シスター・マリアは険しかった表情を緩める。
「とにかく無事で良かったですが、いったいなぜ……いやそれよりもどうやって写したのですか?」
なんて答えてよいのやら……
とりあえずシロとクロのことは内緒にして、魔方陣に書いてある真名を勉強したかったことを伝えた。
そして最初にファルナが使われた感覚があったので、ファルナを集中させて書き写したと。
「なんてことでしょう……」
シスター・マリアは眉を潜めながら、驚きを飛び越えたような反応をみせる。
「ファルナが使われた感覚から自分で思いつくなんて……それにいったいどれくらいの量を……」
心が痛い。
ごめんなさい、人から聞いてやりました……
しばらくシスター・マリアは沈黙していたが、何かを決めたかのように話はじめる。
「ポコ、あなたには本当に才能があるようですね」
イタタタ! 心が痛い!
「魔法書を見たいと言っていましたね。持ち出すことは許可できませんが、空いている時間であれば見てもいいですよ」
「え!? 本当?」
「ここまでの才能を見せられ、埋もれさせる分けにはいきません。あまり多くは書かれていませんが、少しでも勉強の足しにしてください」
「ありがとう! いま見に行ってもいい?」
「ええ、いいですよ。礼拝堂にしまってありますので合鍵を貸してあげましょう」
鍵を受け取りさっそくとばかりに向かおうとする。
「……また驚かせてくださいね」
シスター・マリアの嬉しそうな声が小さく聞こえた気がした。
大急ぎで部屋に戻り、ペンと書くものを取って礼拝堂に向かう。
今は夕方に近く、人はだれもいなかった。
ボクは本棚から魔法書を取り出すと、近くにある椅子に座り、机の上で魔法書を開く。
結構な厚さであるが実際に魔方陣が書かれているのは30ページ程。他は説明や注意事項等が書かれていた。
『ほとどが治癒魔法のようですが、補助系統と自然系統の基礎魔法も書かれているようですね』
まあ教会で使っている魔法書だし、治癒魔法が多いのは当然だよね。
んー、とりあえず全部写しておきたいけど……
人がいない時間となると夕方の少しの時間しかないし……
1日に1つ写しても1ヶ月近くかかっちゃうかぁ……
【読みと文字を覚えるのは、そんなもんじゃすまんだろうな】
グフッ……
確かに写すだけで1ヶ月ですものね……
入学までに覚えられるかなぁ……
とりあえず今日は最初の予定であった、火の真名が書いてある魔方陣を書き写すことで終わりにした。
なんだか辞書を作っている気分になってくる。
【全てを写し終わったなら実際に魔法を使ってみるのもいいだろうな】
えっ!! それは楽しみだ!!
でもクロの言うことだからな。
何か変なことを企んでたりしないだろうか……
シロ先生、大丈夫でしょうか?
【問題ありませんよ、ポコ】
問題ないのかって……違う!
オマエはクロだ!
声色まで変えやがって!
【クハハ! なかなか似ていたであろう?】
『まったく……全然似ていませんよ……』
面白ければなんでもいいって感じだな……
で、本当のところは大丈夫なのだろうか。
『構築の真名をしっかり学んでいれば大丈夫ですよ』
シロさんの御墨付きがでた。
これはやる気も上がってきたぞっ!
それから1ヶ月の間、ボクは魔法書の写しを行うこととなる。
次回はようやく魔法の話になると思います。
思い描くシーンが上手く書けません…
どうにかしたいものです(・ω・`)