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モダンカリキュレーション 白の詠召喚術士  作者: 笹草 熊猫
5章 それぞれのアカシックレコード
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23話「汝等魔王の称号を持つ者也」

 激しい地上での戦いが続く最中、蛍達は魔王プルトンとの交戦に入った。 

 魔王プルトンの強靭な肉体はまるで百獣の王だ。

 睨まれただけで怯みそうになる程の覇気を感じる。


「……紅蓮を纏いし紅き咆哮よ。汝、我との契約によりてその力を示せ……いでよ! ファブニール!!」

「……神々に仕えし天空の支配者よ。汝、契約によりて我が目の前にその姿を現さん……いでよ、ヒュビリード」

「……偉大なるガイアより生まれし力の化身よ。汝、契約によりて我が拳となれ! いでよ! クロノアジール!」


 ファブニールは蛍の成長により、竜人から翼竜へと進化を遂げていた。

 そのドラゴンとしての力は古来より人々に怖れの象徴とされており戦闘面においては他の種族の追随を許さない。

 そしてヒュビリードやクロノアジールも二人の成長によって大きく姿を変貌させていた。


「ほう、小娘。ドラゴンを使役しているのか。面白そうだな」

「連携攻撃で行きましょ!」

「おう!」

「分かったわ」


 紫藤が抜けた後も3人でチームを組んでずっと戦ってきた。

 私達ならやれる!

 ファブニールは口からマグマにも匹敵する程の熱量で獄炎の息を吐いた。


「ふんっ!!」


 魔王プルトンは風の力を使って、息がこちらに当たらない様に軌道をずらして避けた。


「もらったぁあ!!」


 クロノアジールはその隙を突いて後方から魔王プルトンを地面に叩き潰した。


「なにっ!?」


 しかし、魔王プルトンは片手でそれを受け止めると、回し蹴りでクロノアジールを蹴り飛ばした。


「一々、驚かないでくれる? 相手は魔王なんだからそれくらい予想しなさいよね」


 碧川はこんな状況でも相変わらず来瀬に毒を吐いている。


「そんな事言ったってよ!」

「来瀬君は元々当てにしてないから、気にしないで」


 さすがの来瀬も傷ついたのだろう。項垂れたまま黙ってしまった。


「おいおい、随分余裕そうだな? 舐めてるのか?」

「……蛍。あれをやりましょう」

「分かったわ!」

「ん? あれだと?」


 二人は目配せをすると、ファブニールは再び獄炎の息を魔王プルトンに向けて吐いた。


「それは通用せん!」

「それはどうかしらね」

「なに?」


 魔王プルトンは先程と同じように風で軌道を変えて避け様とした。

 しかし風を送り込んでも次は軌道を変える事が出来なかった。


「ぐっ!? 一体何が起きたというんだ!」


 魔王プルトンは予想外の出来事にそのまま獄炎の息に飲み込まれる事になった。


「ファブニールの息を私のヒュビリードの風で軌道を固定させたのよ。風を操る力ならヒュビリードの方が上だわ」

「碧川、もうあいつには聞こえてねぇよ。あの息を食らって生きていられる奴なんていねぇ」


 獄炎の息は鋼鉄を意図も容易く溶かしてしまう。

 この息を防ぐにはドラゴンの鱗でも無ければ無理だろう。


「ふはははは! さっきのは危なかった……面白いぞ、小娘たちよ!」

「なんだと!?」

「やっぱりこれくらいじゃ倒れてくれないか……」

「まぁ、来瀬君以外はみんな分かってた事だけどね」

「碧川おめぇ!!」

 

 魔王プルトンは紅い竜の鱗でこしらえた竜の盾で息を防いでいた。

 あれも恐らくアーティファクトの類なのだろう。


「では、次はこちらから行くぞ、娘たちよ!」


 魔王プルトンは既に来瀬を除け者にし、蛍と碧川しか目に入っていない。

 ファブニールとヒュビリードは距離を取る為に上空へ退避しようとしたが、高位の悪魔は皆、テレポートが使えると言う事は魔王も例外ではない。

 魔王プルトンはテレポートで先回りをすると、ファブニールとヒュビリードは地面に叩き落とした。


「速い!?」

「あのテレポートは厄介ね……」

「制空権は無いと思った方が良いぞ。小娘達」


 一方、如月は1人で魔王アスモデウスと戦いを始めようとしていた。


「……グレイプニルに縛られし氷結地獄の蒼狼せいろうよ。汝、我との契約において今こそ、その鎖を解放せん……来たれ! ヴァナルガンド!!」

「ほう蒼狼か。退屈しなくて済みそうだな」


 ヴァナルガンドは相手を睨みつけたまま唸っている。


「レディーファーストだ。先に攻撃させてやろう」

「ほう、それは有り難い。それでは遠慮なく行かせてもらおう。ヴァナルガンド!」


 如月の声に呼応し、ヴァナルガンドは全てを凍らせるコキュートスの息を吐いた。

 魔王アスモデウスと言えど、コキュートスに抗う事は出来ず、あっと言う間に魔王アスモデウスは氷漬けになった。


「ヴァナルガンド、コキュートスを続けろ!」


 如月は本隊が来るまでの時間を凍らせる事で稼ごうとした。

 だが、相手は仮にも魔王だ。そう簡単に行くはずもなく――


「はあっ!!」


 魔王アスモデウスは覇気で簡単に氷は破壊した。


「涼しい風だな。さぁ、速く攻撃をしてくるが良い」


 まるで効いていないという素振りを見せる魔王アスモデウスだったが、如月もその程度で心が折れる程弱くはない。


「ヴァナルガンド! 切り裂け!」


 ヴァナルガンドは突進すると、鋭利な爪で切り裂いた。


「むず痒いな。いつになったら攻撃を始めてくれるんだ?」

「ふっ、これでも全力で攻撃しているつもりなのだがな……」


 如月もここまで絶望的な力の差があるとは思わなかった。

 果たして本隊が来た所でこの魔王を倒せるのだろうか?

 不安が如月の心を襲った。


「紫藤、気付いているかのう? 1つ強力な魔の気配がこちらに向かって来てる様じゃ」

「あぁ、地上にも5つ程、桁違いの力を持った奴等が居るな」


 俺は研究施設を破壊する為に地下の中枢まで来ていた。

 蛍と如月が先行したはずだが、見当たらないのが気に掛かった。

 まだ稼働を続けているマザーコンピューターの前に来ると、電撃魔法でコンピューターを狂わし暴走する様に仕向けた。


「よし、これでマザーコンピューターはもう大丈夫だろう」

「おっと、間に合いませんでしたか……」


 後方から激しい翼のはためく音と共に強力な力の気配が降りてくるのが分かった。


「お前は何だ?」

「自己紹介が遅れました。私が名は魔王バラム。浅羅魔によって召喚されし魔王の1人に御座います」

「……魔王だと? おい、リリティア聞いたか?」

「あぁ……自分で魔王と名乗る様な恥ずかしい奴が居たとは私も驚きじゃ」

「私からしてみれば、貴方達の方が驚きですがね……」


 魔王バラムと名乗るこの男は確かに別格の強さだとは思うが脅威になる程、強いとは感じない。

 魔王とは名ばかりの階級なのだろうか?


「で、魔王バラムさんが俺達に何の用だ?」

「浅羅魔の命により貴方達を始末します……」

「そうか、じゃあ殺しても良いんだな?」

「随分と自信が御有りですね。しかし残念ながら私にはかて――」


 リリティアは魔王バラムが喋り終わる前に光の剣で首を切り落とした。


「な、何が起きたんだ……がはっ!」

「悪いな。お前の相手をしているほど暇じゃないんだ。行かせてもらうぞ」


 俺はリリティアの肩を掴むと、地上に出る為にエアリアルで上空に向かった。


「お主……やはり魔族のハーフじゃったんじゃな?」

「え? あぁ、そういえばそんな事言ってたな……で、それがどうかしたのか?」

「気づいておらんのか? お主の魔力、まるで別人の様じゃぞ?」

「そ、そうなのか? 自分だとあんまり分からないな……」

「恐らく、記憶の封印が魔族の力も抑え込んでいたんじゃろうな。今のお主ならもしかすれば……」


 自分では自覚が無いが、そんなに記憶が戻っただけで変わる物なのだろうか?

 俺はこの時そう思っていたが、地上に出て自分の力を自覚してしまう事になる。


「来瀬君! 閃いたわ! あの作戦で行きましょ!」

「あぁん? どの作戦だよ?」

「来瀬君。貴方どこまで馬鹿なの? あれと言ったらあれでしょう?」

「なんだと!? ……えーと、どれだ?」

「玲! 行くわよ!」


 ファブニールはクロノアジールの足を掴むとグルグルと回り始めた。


「お、おい!?」

「む、何を始めるつもりだ?」


 ファブニールは十分勢いを付けるとクロノアジールを魔王プルソンに向かって投げつけた。


「ヒュビリード! 風を巻き起こしなさい!」

 

 更にそこへヒュビリードの風を加える事で、巨体のクロノアジールは風の力を得て更に加速した。


「来瀬君! あの盾をどうにかしてあいつから遠ざけて!」

「なるほど! そうゆう事か! よし、クロノアジール!! 全力で行くぞ!!」


 超スピードで魔王プルソンに向かって飛んで行ったクロノアジールは片腕を犠牲に魔王プルソンの盾を上空へ弾き飛ばした。


「ちぃっ!!」


 クロノアジールの片腕はボロボロに崩壊したが、魔王プルソンも完全に体勢を崩している。


「今よ! ファブニール!」


 ファブニールは獄炎の炎を吐きだすと、魔王プルソンを呑み込んだ。

 

「おのれぇえ!! きさまらぁぁああ!!」


 魔王プルソンの断末魔が聞こえたが獄炎の通った炎の跡にはもう何も残っていなかった。


「やったわ!」

「これで終わりね」

「ふぅー……油断していたお陰で助かったな」

「それは来瀬君みたいなのが敵に居たら相手も油断してしまうでしょうね」

「そりゃあどうゆう意味だ!?」

「二人とも、話は後にしましょ! 如月先輩が危ないわ!」


 3人は顔を見合わせて頷くと急いで如月の所へと向かった。


「ヴァナルガンド!!」

「もうこれで終いか? やはり我の相手では無かったか……」


 ヴァナルガンドは魔王アスモデウスに殴り飛ばされると、倒れたまま苦しそうにゼェーゼェーと呼吸をしている。


「貴様ぁ!! ヴァナルガンドにはこれ以上手を出させんぞ!」

「やめておけ。只の召喚士が我に勝てるはずが無かろう?」


 如月はヴァナルガンドが傷つく姿を見て、怒りに震えていた。

 しかし、只の召喚士である自分が幾ら足掻いた所でこの魔王には傷一つ付けられないだろう。


「ちぃ……ここまでか……」

「まだ諦めるのは速いんじゃないですか? 如月先輩」

「なに!?」

「何者だ。その気配……只者では無いな」

「俺か? 俺も只の召喚士だ」

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