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モダンカリキュレーション 白の詠召喚術士  作者: 笹草 熊猫
5章 それぞれのアカシックレコード
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22話「我記憶を取り戻し者也」

 地上は真っ赤な炎が立ち昇り、夜だと言うのに辺りは紅く照られている。

 そして6人の魔王により地上が蹂躙されていく中、1人の男が立ち上がった。


「ファルシオンの召喚士よ聞け! これが奴の本性だ! このままでは我々は1人残らず食い殺されるだろう!」

「……父上!」


 邪神べリアスの召喚士にしてべリアスの頭である如月甲采は先陣を切って魔王に立ち向おうとしている。


「今こそ我々は手を取り合って団結しなくてはならない! さぁ、立て!」


 始めは困惑していたファルシオンの召喚士も決意すると仲間の目を見て頷いた。


「私が1人の魔王を受け持つ! 私の同志達はもう1人の魔王を討伐せよ!」

「我々も行くぞ! ファルシオンの召喚士は私に続けー!」


 ファルシオンの召喚士も立ち上がると、集結して1人の魔王の討伐へと向かった。


「あと3体か……。どうにかして我々で食い止めるぞ 紅君!」

「はい!」


 蛍と如月も戦う為に、天空の大召喚の間から飛び降りて戦場に合流する事にした。


「あれは……蛍だわ!」

「なに!?」


 唖然としていた来瀬と碧川は上から飛び降りてくる人影に気付いて、今彼女達が何をしようとしているのかを悟った。


「行くわよ、来瀬君」

「行くってあそこにか!?」

「戦わなければ死ぬだけよ」


 碧川はそう言うと蛍の所へと走って行った。


「ちぃ! どうにでもなりやがれ!」


 来瀬も観念すると、碧川の後を追う事にした。


「紅君、無理はするな! 本隊が合流するまで足止めできればそれで良い!」

「分かりました! 如月先輩も気を付けて!」


 二人は別れるとそれぞれ1人ずつの魔王の所へと向かった。


「……面白くなってきたな……バラムよ、相手が居なくては退屈だろう? 地下にもう1人まだ居るようだ。息の根を止めて来い」


 魔王バラムは浅羅魔の命を受けると、進路を地下に変えて飛行した。

 こうして人類と魔王との死闘がいま幕を開ける。


「バエルか……古き友よ。まさか我々が戦う事になろうとはな」


 邪神べリアスは旧友にして序列一番の実力を誇る魔王バエルに語りかけた。


「べリアスよ、この世界はもうじき終わる。大人しくするなら楽にあっちの世界に送り返してやろう」

「おいおい、馬鹿言っちゃいけねぇな。こんなチャンス滅多にねぇんだ。お互い楽しくやろうや」


 べリアスは胸の高鳴りが最高潮に達していた。

 魔王バエルとの戦いはこれまで長い月日を生きてきたべリアスにとっても初めての事だったからだ。


「行くぜバエル!」


 べリアスは荒々しい動きで魔王バエルに接近すると獄炎を纏いし拳で魔王バエルを殴りつけた。

 対して魔王バエルは片手でその拳を受け止めると強烈な衝撃波が辺りを襲った。


「良い拳だ。だが、我を脅かす程の力では無いな」


 魔王バエルは受け止めた拳を掴むと片手でべリアスを放り投げた。

 べリアスはその力に抗う事が出来ずに街の中の放り出される。


「言ってくれるじゃねぇか! おもしれぇ!」


 その頃、魔王パイモンにべリアスのレジスタンスが結集して戦っていた。


「怯むな! 魔王と言えどこの数ならば押し切れる!」

「ふぉふぉふぉ。何故、我々が魔王と呼ばれるか今一度人間達に教えてやらねばなるまいか」


 魔王パイモンは手に持っていたトランペットを吹くと、超高音量による音の衝撃が彼らを襲った。


「ううっ! 頭が割れる!」


 召喚獣だけでなく、召喚士までに影響を与えるその攻撃は厄介極まり無い物であった。

 

「ふぉふぉふぉ。人間達の苦しむ姿はいつ見ても愉快じゃのう」


 そして、ファルシオンの召喚達は魔王ベレトと対峙していた。


「王の中の王……魔王ベレトか」

「余の手に掛かって死ねる事を光栄に思え。愚民共よ」

「防御隊は敵の攻撃に備えてシールドを張れ! 攻撃隊、前へ!!」


 ファルシオンの指揮官は的確に指示を出して、魔王ベレトを追いつめて行く。しかし――


「そんな紙きれの様な壁で余の攻撃を防げるとでも? 身の程をしれぇい!!」


 魔王ベレトは魔力で作り出した大きな手を構えると、防御隊を薙ぎ倒した。


「あ、ありえん! こんなのに勝てるのか?」


 魔王ベレトはファルシオンの召喚士達を畏縮させる程の力を見せつけた。


「やっと追いついた!」


 蛍は1人で魔王プルソンの所へ向かっていた。

 ライオンの様な也をしたその姿は獣の王に相応しい。


「小娘がたった一人だけとはな……来い。片手だけで相手をしてやろう」

「馬鹿にした事……後悔させてあげるわ!」


 蛍は構えた。

 今や蛍は秘められていた才能が開花し、1年生にしてファルシオンの訓練生の中でも最強の召喚士の使い手へと成長していた。


「蛍!」

「え? 玲に来瀬君!? どうしてこんな所に……」

「助っ人が必要だろ? 俺達も一緒に戦うぜ!」


 来瀬は両手でパシンッと手を叩くと魔王プルソンに構えた。


「ありがとう、二人とも!」

「二人増えた所で、何も変わりはせん。さぁ、さっさと来い」

「へっ! 魔王だかなんだかしらねぇが、その余裕ぶった顔に一泡吹かしてやらぁ!」

「……あの魔王、顔がブサイクね……」


 両者は睨み合いを続けたまま相手の出方を窺っていた。


「来たか、勇敢なる戦士よ」

「待たせたな、色欲の王アスモデウスよ」


 如月はアスモデウスに接触すると両腕を組んだまま、相手を睨みつけた。


「まだ小娘だと言うのに、我を見ても怖気付かないとは見上げたものだな」

「あぁ、貴様は強い。だが、これだけの数を使役するとなると、あの浅羅魔と言えど魔力が分散するだろう? 私はそこに勝機を見出しているのさ」

「……なるほどな。大した物だ。だが、それまでここに立って居られるかな?」

「やってみるさ!」


 大いなる力を持つ王バラムは紫藤の所へと向かっていた。接触まで後数分も無いだろう……。

 だが、紫藤はまだアステロトと精神世界の中に取り残されていた。


「ここは……」

「ここは、私と貴方の精神が繋がった場所」

「……何だかこの感覚……懐かしい感じがするな」

「意識では覚えていなくても深層意識には残っているようですね」


 アステロトは少し微笑むと、あるビジョンを俺に見せてきた。

 そこには男の子と母親らしき人が映りだされている。


「この映像は?」

「これは、貴方がこちらの世界に来る前の記憶です」

「なに? どうゆう事だ?」

「つまり貴方はこの世界の人間では無いと言う事です」


 アステロトが何を言っているのか分からなかった。

 この世界の人間では無い? そんな事がありえるのだろうか。


「貴方は主とこの女性の間に生まれた人間と魔族のハーフなのです」

「俺が人間と魔族のハーフだと?」

「そう、そして私は貴方を守る為に仕わされたシュバリエだった」


 俺の両親を殺して街を壊滅させた悪魔が俺を守るシュバリエだと?

 記憶の中が混乱し、何が本当で嘘だったのか分からなくなってきた。


「でも何故だ! 俺にはそんな記憶が無い……」

「浅羅魔の仕業です。奴は貴方に偽りの記憶を埋め込んだのです」

「偽りの記憶?」

「はい、これを解くには貴方自身で打ち破らなければなりません」

「どうやって……」

「記憶を辿ってください」


 俺はアステロトの言葉に従って記憶を順に辿って行く。


「貴方の居た世界では主のお陰で平穏が保たれていました。しかし浅羅魔と紅博士の作りだした高位の悪魔を無理やり呼び寄せる召喚術式によって貴方は召喚されそうになった」

「何でこの俺が?」

「本来、普通の人間は召喚される事はありません。しかし貴方は魔族のハーフだった。故に召喚対象に選ばれたのでしょう。そしてそれを止めようと貴方に近づいた私もそれに巻き込まれたわけです」


 昔の記憶に掛かっていた黒い靄が少しずつ晴れて行くのを感じた。


「そう……そうだ。そして俺はこの世界に飛ばされた。しかし浅羅魔は魔族のハーフである俺を攫って何をするつもりだったんだ?」

「簡単です。溢れ出る魔力を有した貴方を戦争の道具に使おうと思ったのです」

「その時から既に戦争の計画を練っていたのか……」

「はい……私も貴方を人質に取られては何も出来ませんでした」

「それで、契約を無理やり結ばされたってわけか……。浅羅魔め!」


 俺はずっと浅羅魔の手の平で踊らされていたのか?

 そしてずっと仇だと思っていたアステロトは俺を見守ってくれていた。

 大切なシュバリエの気持ちを長年踏みにじってきたと思うと自分自身に対して怒りが吹き出そうになった。


「……これで言い残すとは何もありません。私も安心してあちらの世界に帰れます……」


 アステロトの身体が光の粒子の様になって少しずつ消え始めた。


「アステロト! ……すまなかった。そしてありがとう」

「いえ、勿体無きお言葉です……坊ちゃま」

「……必ずそちらの世界に帰る、父上と母上を宜しく伝えてくれ」

「はい、坊ちゃまもどうかお気を付けて……」


 アステロトはそう言い残すと、光の粒子になって元の世界へと消えて行った。


「リリティア……俺は全てを思い出した」

「そうか。良くやったな」

 

 リリティアは珍しく微笑むと、俺を初めて褒めてくれた。


「浅羅魔……お前だけは許さん!」


 俺は決意を新たにすると研究施設を破壊する為に奥へと進んだ。

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