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モダンカリキュレーション 白の詠召喚術士  作者: 笹草 熊猫
4章 真実を追い求める者達
18/26

17話「我異端の業を背負いし者也」

 降り積もる真っ白な雪により世界は雪景色に包まれていた。

 今年もあと少しで終わりを告げ、新しい年を迎えようとしている。


「……蛍。風邪ひいちゃうわよ」

「あっ、うん」


 私は自室のベランダから暖房の効いた暖かい部屋に戻ると、机の前に腰を下ろした。

 あれから2カ月。未だに彼からは何の連絡も無い。


「はい、これ。暖まるわよ」

「ありがとう。玲」


 玲は私に温かいホットミルクティーを渡すと、静かに隣へ座った。

 二人は黙ったまま、ホットミルクティーを飲んで体を暖めた。

 室内には時計の秒針の刻む音だけが静かに聞こえている。

 ふと、スマートフォンのバイブ音が部屋の中に響き渡り、自分のスマートフォンを手に取る。


「誰から?」

「来瀬君からみたい。どうしたのかな?」


 来瀬君からは電話が来るのは非常に珍しい事であった。

 スマートフォンの応答をタッチすると、来瀬君に電話が繋がる。


「もしもし?」

「おう、紅! テレビ見たか!?」

「テレビ?」

「良いからテレビを見てみろ!」

「う、うん」


 私はリモコンで液晶テレビの電源を入れると、何か大きな事件でも起きたのか緊急の特番ニュースが流れていた。


<緊急速報です! べリアスの幹部数人がファルシオンの研究施設にゲリラテロを起こしました。現場は大変混乱しており、多数の負傷者が出ている模様です>


「……こ、これって?」

「あいつだ。ファルシオンの拠点を1つ破壊したみたいだぜ。負傷した召喚士もかなり居るようだな」

「う、嘘でしょ? 何で銀志がべリアスと居るの?」

「それは分からねぇ。だが、奴の事だ。何か理由があるに違いねぇ」


 2か月前、突如銀志は私達の前から消え、国に反旗を翻す異端者としてお尋ね者にされた。

 私達は何が起きたのか分からなくて、銀志と親しかった如月先輩の所へ相談に行こうとしたのだけれど、如月先輩の部屋は何者かによって荒らされており、本人の消息は行方不明として事後処理されていた。


「……紫藤君?……」


 そして、何一つ手掛かりが無かった私達は、ただ悪戯に時が過ぎているのを見ている事しか出来ずにいた。

 しかし、いまテレビに映し出されている人物は紛れもなく彼だ。

 召喚獣らしき銀髪の女性も大人びては居るが、リリティアの面影がある。


「ねぇ、来瀬君。ここどこ?」

「あ? あぁ、ここは――」


 私達は合流して事件現場があった場所へ急行した。

 建物は崩壊し、炎の残り火がまだ消化されずに燃え残っている。

 現場は酷く混乱しており、傷だらけの召喚士達がタンカーで運ばれているのが見えた。


「あ、斎藤先生?」

「おや、君達も来たんですか?」


 事件現場には斎藤先生も来ていた。

 やはり先生も今回の事は思う所があるのだろうか?


「斎藤先生。本当にこれを銀志がやったと思いますか?」

「う~ん、どうだろうねぇ……。僕は紫藤君がこんな事をするとは思えないんだけど……」

「なぁ、斎藤は何かしらねぇのかよ?」

「何かとは?」

「お前、仮にも担任だろ? 何かあいつの様子が変だったとか気付かなかったのかよ?」

「う~ん、それは僕よりも君達の方が詳しいと思っていたんだけどね……」

「……残念だけど、私達にもそれは分からないままね」


 変な様子……? 

 確か、居なくなる前の数日間は特訓もせずにすぐに自室に戻ってた。

 そうなる前に何かがあったはず……。


「あっ!」

「ど、どうしたの蛍?」

「玲! 2か月前に3人で遊びに行った日の事覚えてる?」

「えぇ、遊園地に遊びに行った時の事ね」

「あの日、銀志は何か用事があるって言って外泊してたじゃない?」

「そういえば、そうだったかしらね……」

「あれから何だか様子がおかしかったのよ! 妙に昼間は眠たそうな顔してたし……」

「確かに、何時もと様子が違うかったのは覚えているわ」

「君達……。これ以上、紫藤君の事について詮索するのはやめておいた方が良い」


 斎藤先生は突然、表情を強張らせて私達に言い放った。

 それは静かな口調ながら、命令の様にも聞こえる。


「なんでだよ斎藤?」

「紫藤君は今や、異端者としてファルシオンから追われている身だ。分かるだろ? 異端者との接触がタブーだという事を」

「で、でも!」

「それにこれは君等だけの問題では無い。君達の家族も巻き込まれる事になるんだ。来瀬君や碧川さんは、家族が酷い目に合う所なんて見たくないだろ?」

「うっ! それは……」

「………」


 これは1種の脅しだ。

 家族を盾に取られれば、二人は眼を伏せる事しか出来ない。

 しかしこれは私達を思って忠告しているのだろうか?

 それとも――


「今日は大雪だな……あまり遅くならない内に寮へ帰るんだよ」


 斎藤先生はそれだけ言うと、その場から去って行った。

 降り積もる雪の量は多くなるばかりで、何時しか残り火は静かに消えていた。

 それからの私達は、黙ったまま歩いて寮へと帰っていた。

 私は勿論納得していないし、他の二人もそうだろう。

 しかし家族に危害が及ぶ様な事にこの二人は巻き込めない。

 せめて、家族の居ない私だけでも銀志を信じて助けてあげなくちゃいけないのではないだろうか?

 銀志を見つけるには、相手の心の動きを読み取らなくてはならない。

 何の為にべリアスと共に行動をしてファルシオンの施設を襲っているのか?

 そして次はどこを狙っているのか?

 私は、銀志を見つける為にべリアスについて調べる事にした。

 例えそれが、破滅の道へ向かう事だとしても私にはそうする事しか出来ないのだから。

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