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13話「汝災厄の悪魔也」

1000PV突破しました!

拙い文章ですがお読み頂き誠にありがとうございます!

「おい! 聞いたか? 海棠が例の痴漢に襲われたらしいぞ!」

「なに!? あの海棠が!?」


 俺達はファルシオンへ帰ってくると、何やら正門の前に人だかりが出来ていて騒がしかった。


「いってぇ、何事だよ?」

「例の痴漢が出たようだな」


 正門を潜ると、海棠が死んだ様な顔をして倒れていた。

 服は至る所が肌蹴ており、悲惨な姿になっている。


「海棠、大丈夫か? 一体何があったんだ?」

「おぉ……兄弟……お、俺はもうお婿に行けない……ガク」


 そう言うと、海棠は力尽きて気を失った。よほど酷い目に遭わされたのだろう……。

 俺は来瀬に冷蔵庫の召喚書を渡すと、海棠を保健室に運んだ。


「外傷は無いけど、精神的ダメージが深刻だわね……」

「先生、一体海棠は誰にやられたんですか?」

「……毎年、秋になると現れるのよね……」

「例の痴漢ですか?」

「えぇ、しかもかなり頭が切れる痴漢なのよ。未だに捕まえる所か足取りさえ掴めていないわ」

「先生……痴漢に狙われる人の傾向とか分かりますか?」

「え? えぇ、痴漢はどうもヤンチャな子がお好みのようね。逆に大人しそうな男子にはあまり手を出したケースが無いわ」

「そうですか……」


 俺は保健室を出るとホッとした。俺はどう考えても大人しそうな好青年だ。

 間違えても痴漢に襲われる事はないだろう。

 まぁ、海棠は……自業自得という奴だ。俺には全くもって関係無い。

 俺は海棠の事をすっかり忘れると、文化祭までの数日間、屋台の段取りを組む為に、担当や交代時間を決めていた。

 蛍と碧川は俺と一緒に休憩時間が被る様にしたかったようだったが、話しあっても決まらなかったのでクジで決める事に。

 その結果、午前中は俺と来瀬が店番、午後は蛍と碧川が店番をすると言う事で落ち着いた。

 それから、屋台を組み立てる為に俺と来瀬で手分けして簡易の屋台をサクッと設置する。

 あとはお店の名前が書かれたのろしを掛ければ完成だ。


「お店の名前、何にする?」

「うーん」

「……普通にうどん屋じゃ駄目なの?」

「まぁ、分かりやすいし、うどん屋で良いかもな」

「文化祭の出し物だしね」

「……それじゃ私が作っておくわね」


 碧川はそう言うと、のろし作成の為に自室へと戻って行った。

 碧川に裁縫が出来るとは意外だったが、自信ありそうな顔だったしきっと大丈夫だろう。


「それじゃ、私は明日の文化祭に向けて容器の準備をしておくね」

「あぁ、任せた」


 こうしてなんとか文化祭までに段取りを合わす事が出来た。

 後は早朝に届く材料を仕入れて、うどん用のスープを作れば問題なく開店出来るだろう。

 俺も準備が終わると明日に備えて寝る為に自室へと向かった。


「ん、なんだこれ?」


 自分の部屋に入ろうとしたその時、扉の下に何か紙の様な物が挟まっている事に気付いた。

 俺はそれと手に取って、無意識に書かれている文字を流し読みすると、ある文字に目が止まりその場で硬直した。


「な、なんでこいつが俺に手紙を……?」


 声が震えているのが自分でも分かった。


【明日、世界を照らす光の源より明けの明星にて待つ ゴエティアの悪魔 アステロトより】


 アステロト……それは俺が過去に召喚した災厄の悪魔の名であった。

 当事者でこの悪魔の名前を知っているのは理事長と俺しか居ない。

 ということは……本当に奴なのか?

 俺は昂る気持ちを抑えた。本当に奴だったとして何の為に?

 ――俺を始末する為か……? 

 ……ならば、その招待に応えてやろう。

 俺の手で全てのケリをつける為に……。


「おい、落ちこぼれ。なんで1人も客が来ねえんだよ? これじゃまるでサボってるみたいじゃねぇか」

「慌てるな。まだ開園して2時間だろ? 昼頃になれば嫌でもお客は来るさ」

「いや、だがよ。他の屋台には結構買いに来てるみてぇだぞ?」


 来瀬はそんなに俺に言わせたいのだろうか? 

 こんな怖そうな不良が居たらまずみんな近寄ってこない。

 更に、碧川の作ったのろしだ……。店名『エクストリームウンド屋』。

 まさか、屋しか合ってないとは思わなかった。

 エクストリームウンドって何だ。

 最早、うどんでも何でも無いじゃないか!

 そして極めつけは、碧川が持ってきたうどんのレシピ。

 麺は冷凍だから問題ない、スープも煮干しと鰹で取った王道の出汁スープだ。

 では、何が問題なのか?

 事もあろうに奴は最後の仕上げになぜかオリーブオイルを入れやがったのだ。

 うどんにオリーブオイルってお前!! と突っ込みたくなる所だが、朝の当番は俺達しか居ないので文句を言いたくても言えなかった。


「それによ~、このうどん……美味しいのか?」

「さぁな。味見してみれば良いんじゃないのか」

「お、おう……」


 見た目は金色に輝く出汁スープで思ったよりは違和感が無い。

 これがオリーブオイルだと思わなければ美味しそうにも見えるだろう。

 来瀬はそのうどんを凝視したまま、麺を啜った。


「……んんっ!? うめぇ!」

「なにっ!? そんな馬鹿な事があるか!」

「いや、マジだぜ! 食べてみろよ?」


 来瀬はそう言うと俺にうどんを差し出してきた。

 確かに、匂いも悪くは無い。

 俺は意を決してそのうどんを啜った。


「……美味しい!」

「だろう!?」


 スープの味はアッサリとしていながらも、煮干しと鰹の合わせ出汁が良い味を出していた。

 更に、オリーブオイルがうどんの麺と絡み合って、スープと良く馴染むのだ。

 意外な組み合わせだが、オリーブオイルがここまでやれる奴だとは思っていなかった。


「特にこのスープに天ぷらを浸して食べると格別だぜ」


 来瀬は美味しそうに天ぷらを頬張っている。

 俺も一つ味見してみたが、その味は想像以上に美味しかった。


「お、オリーブオイルって実は万能調味料なのか?」

「値段は決して安くないが、これ以上の油はねぇな」

「あぁ……そうだな」


 うどんを食べながら俺達の中で初めて意見が合った様な気がした。


(ちゃんと話せばお互いに理解し合えるのかもしれないな)


 俺はそんな風に思っていた。言葉が通じるのだ。理解し合えないはずがない。

 

「って、一つも売れて無いじゃないのよ!」

「……貴方達、覚悟は良いかしら?」


 俺達は美味なうどんに我を忘れて感傷に浸っていると蛍達が目の前に突然現れた。


「うっ! ごほごほ!」


 思わずむせた俺は口に含んでいた麺を喉に詰まらせてしまった。


「もう、何してるのよ。はい、お水」


 蛍からお水を受け取り一気に飲み干す。


「ぶはぁ! 助かった……」

「で? 何で一つも売れて無いのに呑気にうどんなんて食べてるのかな?」

 

 蛍の顔は笑っているが周りから怒りを象徴する様な赤いオーラが見える。

 

「あ、いや……。本当にお客さんに出しても大丈夫か味見してたんだよ! 本当だぞ!」

「ふ~ん、まぁ良いわ。銀志と来瀬君じゃ……接客は絶望的そうだもんね」

「そうだろ? 分かるだろう? 人には向き不向きがあるからな」


 俺は初め、来瀬の人相の事を言っているのだと思っていた。


「……不良とファルシオン一の変態と名高い二人の接客なんて、端っから無理だったようね」

「なに!? 変態って誰の事だよ!」

「……銀志……」

「……紫藤君の呼び出す召喚獣がロリ娘だから、今までの噂に信憑性が増したのでしょうね」

「なっ!? それとこれとは関係ないだろうが!」

「けっ、しらねぇのか。おめぇは全男子生徒から目の敵にされてるんだぜ? あらぬ疑いを掛けられていても不思議じゃねぇよ」

「俺は何時の間にこんなに敵を増やしてしまったんだ……?」

「さぁ?」

「……なんでかしらね」


 きっとこの二人が関係しているに違いない……俺の直感がそう告げていた。


「まぁ、良いじゃないの。それじゃ交代しましょ? 前半の遅れをここで取り戻すわ!」


 蛍と碧川はエプロンを着ると店頭に並んで、販売を始めた。

 すると、どうした事だろうか? 今まで1人も来なかった屋台に急に男達が押し掛ける様に並び始めたのだ。


「来瀬、何か理不尽だと思わないか?」

「あぁ……ムカツクがこれが超えられない壁って奴だろうな」


 俺達は何を悟った様に項垂れてその場を後にした。


「来瀬はこの後どこか行く用事あるのか?」

「あぁ、悪いが俺は別行動させてもらうぜ」


 そう言うと来瀬はそそくさと校内の階段を登って行った。

 付き合いは悪い奴だが、今はそちらの方が好都合か。

 俺は、この暗号文に書かれた場所へと向かう事にした。


【明日、世界を照らす光の源より明けの明星にて待つ】


 これはどこの事を指しているのだろうか?

 世界を照らす光の源……は恐らく太陽を指し示している。

 明けの明星というのは、金星の事だろうか?

 太陽と金星? 考えられる場所と言えば……1~3年の内のK組のクラスだろうか?

 何故かと言うと、組は火星、水星、木星、金星、土星という風に分かれているからだ。

 そして太陽から金星にて待つと言うのは1~3のどれかを指し示す暗号に違いない。

 確か、太陽系から金星の順番は……。


「おや、紫藤君。いらっしゃい」

「え? あれ、ここ如月先輩のクラスですか?」

「そうだとも。ようこそ悪魔喫茶へ」


 その教室の入口には悪魔喫茶と書かれた禍々しい看板が吊ってあった。

 そして如月先輩も何かの悪魔を催した着ぐるみを着ているが、悪魔姿でも如月先輩の美貌は揺るぎない物であった。


「な、なんですか? ここ……」

「紫藤君、もしかして知らずに来たのかい? ここは悪魔達の雰囲気が味わえる喫茶だよ」

「説明してもらっても、今いちイメージできないですね……」

「まぁ、入ってみれば分かるさ」

「あ、いえ。あの、この教室に変わった人は来ませんでしたか?」

「……変わった人?」

「はい、えーと黒髪で目は赤く、黒い翼のコスプレをした様な人……?」

「うーむ、それが紫藤君が指名したい子なのかな? お姉さん妬いちゃうな」

「いえいえ! 違います! 実は昨日、こんな手紙が届いたんです」


 俺は事情を話した方が早いと思い、如月先輩に例の手紙を見せる事にした。


「ふむ、確かに君の推測が正しければ、ここに居るという事なのだろうが……君の言う様な人物はどうもこの中におらぬな」

「そうですか……」

「まぁ、待ちたまえ。何か変わった事が無かったか聞いてこよう」

「あ、はい。すみませんがお願いします」


 如月先輩が聞き込みをしている間、俺は2階の窓から見える校内の景色を眺めていた。

 その時、白い仮面を被った黒いタキシードの男が校内を歩いているのが目に付いた。


「何のコスプレだ? あまり良い趣味とは言えないな……」

「紫藤君」


 俺はハッとして背後に居た如月先輩に向き直った。


「これを見てくれないか?」


 如月先輩が差し出したのは1つの手紙。

 それは俺が最初に見つけた手紙と酷似した物であった。


「人の叡智を結集せし場所へ向かえ。答えは白い書の中に……」

「また何かの暗号の様だね? しかしこの差出人は何者なんだい?」

「えーと……さぁ、何者なんでしょうかね?」


 一瞬、如月先輩の目が細くなった様な気がしたが、目を伏せるとそれ以上は追及してこなかった。


「まぁ、良いだろう。その代わり私もその謎解きに参加しても良いかな?」

「え? でも如月先輩、悪魔喫茶はどうするんですか?」

「大丈夫だ。一人くらい抜けても問題ないよ」

「い、いや。先輩目当てで来る人も大勢いるだろうし、まずいんじゃ……」


 今、追っている悪魔の事が他の人に知られたら間違いない止められるだろう。

 それだけは阻止しなくてはならなかった。


「それじゃ、この手紙を先生に見せちゃおうかな~?」

「なっ!? いや! それは困ります!」

「それでは決まりだ! さぁ行くぞ紫藤君。次は恐らく図書室だ!」

「え? 如月先輩! ちょっと!」


 如月先輩に見つかったのが運の尽きだったのだろう。

 俺は観念して如月先輩の同行を渋々承諾する事になったのであった。

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