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殺せんせーの仕業ではない

丑三つ時、誰も人がいない神社の中、女は何も思わぬ顔で男を見つめる。

男は肩に背負っていた日本刀の鞘を捨て、刃をむき出しにその日本刀を握る。

男の額には汗が見え、刀を握っている手も震えてはいないものの浅い握りであった。


現代日本――それは命のやり取りなど一般的ではなくなった世界。

ただ、その男と女は違った。

目の前にいる好敵手を何のためか戦おうと、命のやりとりをしようと、殺そうとしているのだ。


「いい加減やめよう。俺はお前を殺したくはない。実の妹なのだから――」


女をじっと見つめながらも刀を構えることはやめず男は言った。

男の名前は月成宗士(つきなりそうし)20代後半に入ったといった顔つきである。

身長は高く筋肉質であり、刀を握るために生まれてきたような男でもあった。

実直さ――それだけは他の追随を許すことがなかった男であり、現代でいうつまらない男という分類に入っている男であることは間違いない。


「兄さんじゃ無理。確かに強いけど殺すっていう殺気が感じられないもの。それに私も兄さんを殺したくはない――」


女は腰に持っていた日本刀を抜くことなく男に答えた。


「いろは…悪いが俺は本気だ。これ以上人を殺すというのならば――」

「許さないとでも言うつもり?別に殺したくて殺したわけじゃないの、単純に道端にあった石が邪魔だったから蹴っ飛ばしたら木端微塵になっただけよ」


『いろは』と呼ばれた二十歳にもなったばかりの女は腰を落とし、腰のまだ抜いていない日本刀の持ち手をようやく右手で握った。

女は汗などかいてはおらず、非常に澄んだ目で男を見続けていた。


男は自分に暗示をかけるように言葉を呟き続ける、大丈夫だ、殺せ、殺す、関係ない…俺は……

女はそんな事気にもかけず笑いながらも日本刀の鞘と縁金を小気味よくカチンカチンと鳴らし続ける。


その瞬間男は女に向かい、袖から出した小太刀を投げつけた。

一瞬の出来事であったが、女はそれを悠々と何事もなかったように避け、鞘と縁金をカチンカチンと鳴らし続ける。

だが何が起こったのが理解したころには女の顔に笑みが消えていた。

男の小太刀は女の頬を1㎝ほどではあるが切り裂いていたのである。


「本気だ。俺はこれ以上お前をのさばらせるわけにはいかん。」

「ええ、本気みたいね。ならちょっとは楽しませて、私に情欲を感じさせて…」

「これが最後だ……もうやめてくれ。」

「なんでやめないといけないの?私はようやく愛する兄さんと殺しあえるっていうのに」


女は惚けた顔でありながらも、腰を下ろした居合の構えをやめない。

それは兄妹であろうともこの自分の間合いに入れば切るという事の他ならない。

男は刀の切っ先を地面スレスレにつけ、一撃必殺、捨て身の構えに入る。

これも兄妹であろうとも今から殺すという事の他ならない。


「いろは、お前の師はこの兄だ。確かにお前が師を超えたのは事実…だがお前の手の内なら全てわかる。」

「そう……ならやってみれば?地擦り正眼。ま、無駄だけど」


男のやろうとしている事は単純明快、肉を切らせて骨を断つ。

地面スレスレに刀の切っ先を置き、相手が振りかぶってきたところをあえて相手の中へと入ることで、最も切れるといわれる切っ先三寸をよりも柄のほうで体を切らせ、その隙に心臓なり内臓を突き刺すというものである。

しかし女は居合の名手。男は悪手と知っていながらもこれ以外に自分より実力があるものに対する戦い方を知らなかった。

この男は生まれてから自らの師範である父とこの妹以外には敗北したことなどはなかったからだ。


男の体が前へと進み、女を一刻一刻と狙い定めていく。

女の首をかっ割きたいと、心臓を突きたいと。


男と女の間合いが触れ合う一瞬であった。

男が心臓を狙い地面スレスレからの下段突きを行う寸前、女は刀を抜かずに跳躍。

男の手が伸びきった後に男の利き腕であった右腕を軽く血があふれる程度に切りなぞった。


「くっ……なぜ腕を持っていかない?」

「その価値がないから」


男は既に刀を握れる状況ではないものの、尋常ではない気迫と精神力で右手のみで刀を握っていた。

血があふれ、刀にも自らの血が流れおちていく。


「殺せ、俺は死合に敗れたも同然だ。今まで殺した人間たちのように俺も殺せ」

「兄さんにはもともと殺気がない。だから殺す価値もない。」


女は連続殺人犯と呼ばれるような一種のサイコパスであった。

理由はその女にしかわからない――が、ただ誰も彼女を捕まえる事も出来ず、殺すことも出来なかった。


「今の兄さんには全く殺す価値なんてない。あるのはただの兄妹愛を超えた何かだけよ」


男の唇に犬歯が突き刺さり、血があふれ出す。それだけではない男は今にも全身の血管がちぎれそうなほどに憤怒している。


「ふざけるな……武人として育った以上、これ以上生き恥を晒せというのか!?」


女は兄を切った刀に少々乗った血を舐め、恍惚として表情でこう言った。


「先生ならそんな命を粗末にしちゃいけないでしょう?」


男の手から血が流れおち続け、右腕からついに刀が落ちる。


「関係あるか…!これは人の存在意義の問題だ!!」


女は振り向かずに何も言うことなく、その場を去るのだった。


「クソが……!!チクショウ……!!」


と、ふと男は今までしてきた様を思い出し、口から嘔吐物を吐きだした。

真剣同士の他流試合であっても、死合と呼ばれる命の駆け引きであっても、男は人の命を奪う事はしなかった。

それがいかにその命を懸けて、男と闘った人間に対する侮辱であるかを。

生き恥を晒し、生き続けるということの辛さがようやく男に身に染みたのだった。


「無理だな俺には……悪いが……楽にならせてもらう、俺はそこまで頑丈ではない」


男は女に唯一傷をつけることができた小太刀を拾い、左手で持った。


「みんなすまないな……俺みたいな死に方は絶対にしてはならねえ。最後の授業だ。」


男の目には涙すらなく、誰も存在しない虚空を見つめているが、その目は非情に安らかであった。

次の瞬間男は自らの腹を掻っ捌いた。


数分後――

そこにはタコの頭をし、スーツを着た人間のような何かが立っていた。


「まさかこんなに早くに機会が訪れるとは……」


その何かは男の臓物と男を引きずり円盤型の宇宙船に乗せてどこかへと消えた。











『~~』『~~~~~~』『?!~~~~』


俺は目を覚ます。いや、それが正しい表現のしかたかはわからない。

というかなんで生きている?俺は切腹して自分の人生に終止符を打ったはずでは…?

斬られた右腕を見る。そこには傷などなく自らの右腕そのままそのものであった。


「夢…か?いや……おかしい、夢ならば俺の愛刀はどこにある」


周りを見渡しても、ほとんど何もないアパートのせんべい布団で寝ていたという事実以外は上がってこない。


目覚まし時計を見るとそこには仕事がギリギリ間に合うかといった電車に乗り遅れる時間である……ひどくまずいな……。


すぐにスーツに着替え、身だしなみをしっかりとし、出かける。

がおかしい事に気づく。

なんだこのへんなキーホルダー付きのカギは…?

カギにはゆるキャラというのだろうかそのような変なキャラクターのキーホルダーがついていた。

もちろん俺はそんな変なキャラを付けるような趣味はしていないし、このようなもの持っていないはずだ。


「まぁそんなことはどうでもいい!早くでないと遅刻だな…!」


俺は駅へと走るにつれ何かおかしい事にだんだんと気づいていった。

何がおかしいのかと言うと、女の人ばかり駅へと向かっているという事だ。

男もいるにはいるが少数、割合で言うと8対2といったところか。

たくさんのお父さんが同時に休んでる日もあるのか……。


そして電車に乗りその異変は確信に変わっていく。

男性専用車両とはなんだ…?

もちろんそんなものは奇妙なものは無視し、普通の車両に乗る。

そして気づく。圧倒的女率…!!

なんだ?今日俺はドッキリにでもあってるのか…?

そして尻を触られ…


「ってなんだそりゃ!普通逆だろうが!!」


なんだ……俺はどうなってしまったのか……?

俺の明日はどっちだ!!

次からは終盤の緩い文で書いていきます。

え?序盤も十分緩いって?勘弁してください。ぼくのマジメな文の限界があれです。

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