宿8
私は、宿のカウンターまで行き、宿の男の前でボタンを押した。すると男がしゃべりだした。
「お客さん、どうやらキリは、まだ晴れないらしいですね。もう少し待ってみるか、それか引き返したほうがいいかもしれませんよ。晴れない日が何日も続くことなんて、よくありますから。」
ここで男の話しが終わった。引き返す?いやいや、ゲームにあきらめて帰るなどの選択肢は初めからないのだ。どうしようかと少し考えたが、いい答えも浮かばない。こういうときは行動あるのみだ。私はまず、宿の外に出てみた。やはり外の森は、あの男が言ってるように、深いキリに包まれている。とにかく前え進まないと始まらない。私はもう一度、宿から先の道を進んでみることにした。しばらく森のなかを歩いていき、周りに前と変わっている所がないかなど、注意深くすすんでみたが、特に変わっている所などみつけることができずに、また同じ宿までたどり着いてしまった。宿に入って、カウンターの男にも話してみるが、時間が過ぎたせいか眠ってしまっている。次に考えたのは、この宿の男の言った通りに、待ってみることだ。もう一度、この宿に泊まれば、日にちを進めることができる。私は宿の泊まっていた部屋まで戻り、べットを調べてみた。すると、やはり『眠りますか?』と聞いてきたので、『はい』を選び、眠ってみた。しかし、起きてみても、キリは晴れておらず、宿の男も同じセリフを言うだけだ。
私は考えるのに少し疲れてしまったこともあり、ここは田中に聞いてみることにした。私はケータイを手にとり田中の番号を押した。
「あっ田中?今少しいい?」。私がそう言うと、田中は、待っていたという感じで、 「ゲームのこと?」と聞いてきた。
私は、今までの経過と、宿の先にどうしても行けないことを田中に話した。私が話し終えた後、田中は少し黙ったあと、私に質問をしてきた。「宿を出て、先の道に行っても、同じ宿に着いてしまってループしてるってことでしょ?」
「うん、そうだよ」
「それは、宿に泊まって日にちが進んでも変わらないんだよね?」
「うん、変わらないよ。それで困ってるんだよ。」
田中は状況をハアクしてるのだろうか?さすがに田中でも難しいのだろうか?さすがにゲーム画面も見らずに推理するのには限界がある、困るのは当然だ。
「宿の部屋で見つけた日記に、宿の男がおかしいと書いてあったよね?他に、鈴木が男がおかしと思ったところとかはあった?」
「宿の男?なにか知っているような感じはするけど、特に変わってるとこはないかな…。普通の人と同じだよ。普通に会話したり、ときどき眠ったりしてるかな。」
「寝る?宿の男がときどき寝るの?」
「うん、そうだよ。」
「どういったときに、男が寝てるか覚えてる?」
「え?どういったときに?」
よくわからない。私は道の先に進みたいのに、正直、男の眠りが先に進める鍵だとは思えない。
「どぉって、うーん、一泊したときとか、宿の外にでた後とかに、ランダムで起きてたり、眠ってるかな…」
私がそう答えると、田中は少し笑って「なるほど、やっとわかったよ。先に進めない理由が。」と言った。私には何がなんなのか、さっぱりわからない。




