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Day Of Destruction(改定前)  作者: スピオトフォズ
第二章 反撃の狼煙
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第十四話 仮想訓練

――6月20日夕方、WAP極東本部地下8階、仮想演習システム内――


《じゃあまずは分隊なら軽くひねれるくらいの敵でやってみましょう。様子見だから、支援は一切なし。あ、オペレーターくらいはつけるけどね。白石?》

 と博士が言うとさっきのオペレーターが顔を出した。


《はい》

《サポートたのむわ》


《了解》

 こうして、新装備での初の戦闘が始まった。


《最初に武器庫の位置をHMDに表示。武器を取りに向かえ》


 HMDに白石中尉の冷静な顔が映る。

 なるほどMAPは……コレか。

 武器庫座標はM-21……すぐ近くだ。


《デルタ6了解。各員、行くぞ》

 石田軍曹は短く言う。


 装甲服には少量の人工筋肉が搭載されているが、多少動きやすくなる程度だ。

 間違っても車を持ち上げられるような馬鹿力や、自動車並みの速度で走れたりはしない。


 技術的に不可能ではないのかも知れないが、なにぶん量産するにはコストが高すぎるのだろう。


 武器庫には、突撃銃や散弾砲などいくつかの種類の武器があった。

 ちなみに、武器はそれぞれの兵種ごとに決まっている。


 俺と勇希は突撃兵で、武器は突撃銃と散弾砲。

 春奈と石田軍曹は強襲兵で、突撃銃と榴弾砲。

 涼は狙撃兵で、狙撃銃と突撃銃だ。

 ただし武器は作戦によって臨機応変に変更されるため必ずしもこの装備通りではないが。


 なので俺は突撃銃と散弾砲を装備する。


「すげぇ……ホントに残弾数まで表示されてやがる。まるでゲームだな」

 武器を持っただけで、HMDの表示には残弾数、装備している武器の名前、控え武器が出てくる。


「これだと弾倉が切れそうになってもすぐわかるし、結構便利ね」

 春奈がHMDに感心して言う。


「実物はいつ搬入されるんスかね。前線基地にはもう配備されてるって聞いたッスけど」

 ここWAP極東本部には、まだ実物が届いていない。

 ここは日本国内で言えば後方に位置するので、優先度は若干低かったらしいのだが、それでも明日には届くという話だ。


「おい、いつまでもしゃべってるんじゃない。訓練中だぞ」

 雑談が始まった俺達に軍曹が喝を入れる。


 直後、白石中尉から無線が入る。

《12時方向距離1000、スパイダー100確認》

『100……だと?』

 白石が敵情報を分析して言った言葉に軍曹が眉を動かし思わず声を漏らす。

 普通、五人に対し100機ものスパイダーがいたら、戦いにもならない。

 が……今はどうだろうか。


『ふん……なるほど。そんなにこの装備の性能が高いという事か? よし、軽くひねってやるぞッ! 若田は座標B-6で狙撃体制。他は突っ込む! 付いて来い!』

『『了解!!』』

 俺達は荒れ果てた国道を走る。

 人工筋肉のお陰でスタミナもそう簡単に切れはしない。


 HMDの簡易MAPに敵の赤い光点が映る。

 同時に、見晴らしが良い為肉眼でもとらえる。


『敵機目視確認! 射撃開始ッ!!』

 敵機……スパイダーが見えてから、軍曹の声が聞こえる。

 

 敵は砲撃型以外、射撃能力を持たない。

 砲撃はレーザーロックを感知すると警報が鳴る仕組みなので、基本的に物陰に隠れず、堂々と身を晒して引き金を引く。

  

 新型弾丸、対SERF弾が高速で射出される。

 軽い反動とマズルフラッシュの光を浴びつつ俺は射撃する。

 弾丸がスパイダーに当たる。

 一瞬、本土防衛戦と時のスパイダーが脳裏に映る。


 いくら撃っても不死身の如くひるまない軍団……。

 だが――目の前のスパイダーは、いとも簡単に砕けた。


「いける……これなら……いけるッ!!」

 スパイダーの数は多い。

 数えるのも嫌になる!


 その上移動速度もかなり早いので、弾幕を張って居ても五人じゃあっという間に接近を許してしまう。

 今敵の最前衛は150m程だ!


『石田より各員! 距離を取りつつ射撃で減らせ! あせって突っ込みすぎるなよ! 飲み込まれるぞ!』

「了解ッ!! 勇希ッ、右の集団片付けるぞ!」

 俺は勇希に合図を送る。

 これを放っておくと右側面から奇襲攻撃を喰らう。


 正面ばかり相手にしていても意味がない。

 こういう数で攻めるタイプで、最も怖いのは包囲される事だ。


『了解! 久々に、俺達の突撃コンビの力、見せてやろうぜ!』

「はは、足ひっぱんなよ!!」

 大通りを通り抜け、ガードレールを軽く飛び越す。

 廃ビルの奥からスパイダー!

 近接型、数は15!


「喰らいなッ!」

 突撃銃を放つ。

 2機撃破!


『十一時方向に砲撃型! 抑えておく!』

「助かる!」

 くそ、近接型の数が多いな!

 ビルを乗り越えて次々と出てきやがる!!


「ちっ、回り込まれる! 勇希一旦下がれ! 囲まれるぞ!」

 数に押されてる……支援砲撃が欲しいところだ。


『了解――くそ、じゃまだぁぁッ!!』

 ちっ、勇希の方にも近接型が来やがったな!


『佐川先輩! 支援狙撃します!』

 涼か! 助かる!


『サンキュ、涼!』

『黒崎、佐川、適当に迎撃しつつ下がれ! 包囲網が完成する前に隊全体を下げる! そのまま敵を広げないよう、後退したまま射撃で減らすぞ!』

 石田軍曹の指示が飛ぶ。

 確かに、この場所に粘って居ても数で押し潰されるだけだ。

 ここは下がるか!


「黒崎了解!」

『佐川了解! にしてもホント数が多いですね~、支援砲撃ぐらい欲しい所ですよもう』

 まったくだ、嫌になる。


『はん、何弱気になってるのよ! この程度の敵で支援砲撃使ってたら、陸上支援大隊の砲弾はあっと言う間にカラッポよ』

 春奈の言葉を聞きながら、とりあえずこの場を放棄して後退に入る。

 レーダーを見ると右も左も敵にのまれつつある、潮時だな。

 

『はぁ……その不足分は結局体張って稼ぐしかないんッスよね~』

 俺達二人が下がると同時に、敵も釣られて追ってくる。

 下がりながら接近してくるスパイダーを狙い撃ちする。

 迎撃してないと、移動中でもあっという間に囲まれる危険があるからだ。


「そういう事だ。どうせ俺達は下っ端だよ! 下っ端は下っ端らしくセコセコ働けって事だな! 兵隊もサラリーマンも皆同じだ世の中!」

 突撃銃の弾倉を交換しながら言う。

 対SERF戦では殆ど撃ちっぱなしなので、馬鹿みたいに弾の消費が早い。


 予備弾倉は豊富に持っているので弾切れの心配は薄いが。


『無駄話もいいがしっかり抑えてろよ。よし、エリアA2に部隊展開。白石中尉、残存敵数は?』

 石田軍曹が落ち着いた声で言う。

 エリアA2……あと一分もしないうちに着くな。


『残存32機。かなり減りましたね、驚きました』

 とは言うが、その声に感情的な起伏は無かった。


『よし! 分隊、逃げるのはお終いだ! ここで一気にケリを付ける! 戦力を一か所に集中、遮蔽物の少ない国道に誘いこんで殲滅する!』

『『了解!!』』

 勝負に出たな!

 確かにこのまま下がりつつの迎撃では逆に砲撃型に狙われる危険もあってリスクがでかい!

 なら、乱戦に持っていくのがベストな方法だ!


 国道に辿り着いた俺達は一か所に固まり、真正面から迫るスパイダーを迎撃する。


「いい感じに集まってるじゃねぇか! そぉら喰らえッ!」

 五人で一斉に突撃銃を発射する。

 新型弾丸は凄まじい威力で、またたく間に迫りくるスパイダーが鉄クズになっていった。


「奴ら囲もうとしてる! 春奈、涼、左側を頼む! 勇希、右を抑えるぞ!」

『了解!』

 一か所に陣を構えるのは包囲される危険が上がるが、敵の残り戦力は少ない!


 が、突如視界のHMDヘッドマウントディスプレイに《被弾警報》と表示された。

『まずい! まだ砲撃型が残ってたか! 下がれ、撃たれる!』

 石田軍曹の声に、


『大丈夫ッス軍曹! 狙撃します!!』

 と涼が返し、何発か狙撃銃の重い銃声が響いた時には、もう警報は止まっていた。


『いいぞ若田! その調子で頼む!』

 


――――



 その後、少なくなった敵戦力に突撃をたたみ掛け、何とか敵戦力の殲滅に成功した。

 敵を全滅すると、仮想演習は終了し、現実世界へと戻る。


「はぁい、お疲れ様~、あんたら、なかなかやってくれるじゃない。さすがは最前線で戦い続けてきた隊ってだけのことはあるわね。まさかクリアするとは思っても無かったわ!」


 出てくるや否や、茨城博士は口元を吊り上げながら言った。

 ……やっぱり……どうりで難易度高いと思ったよ……。

 全くこの人は……。


「貴方の隊、なかなか魅力ありそうね」

 面白いものを見つけたような笑顔で石田軍曹に歩み寄る。


「……もしかして、自分らだけ呼び出されたのは、過去の戦歴と何か関係が?」

「あら、鋭いわね。五人なんて最少人数で分隊組んでるから不思議に思ったのよ。知ってると思うけど、SERF襲撃以来一人も死人が出なかった分隊って結構珍しいのよ? 最も、貴方の分隊は一度解散してまた集まったみたいだけど」 

 確かに……、分隊は普通、五から十人ぐらいで組むが、最少人数で分隊を組むのは珍しい。

 もともと、ウクライナ派遣軍で再編の時、あぶれた俺達が組み合っただけなんだが、それが今まで偶然にも続いているというだけだ。

 

 渡伍長率いる第三分隊にしたって、異動で三人抜けて五人になった上に、不運にも俺達第四分隊と小隊を組むという謎編成が採用された為、俺達デルタ6は10人という異例の少人数小隊となってしまったのだ。


「でも、面白い結果残してくれたじゃない。貴方達とこうして出会ったのも、きっと私の天才的頭脳が何かを感じ取ったに違いないわ」

 おいおい……これは……。


「ねえ和真。あたし達……何かとんでもない人に目を付けられたんじゃない……?」

「言うなよ……頭痛い……」

 開発部室長。

 日本一の頭脳を自称する天才科学者。

 同時に、たまに常軌を逸する行動に走る危険すぎる変人……。


 俺達は、後々この日を後悔することになるだろう……。 


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