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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
深果都市フリッス編

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邂逅

ソラとアイネが向かったのは――


街の中心だった。


そこにそびえ立っていたのは、一際目立つ巨大なビル。


周囲の建物よりも何倍も高く、まるで街の象徴のように立っている。


ソラは思わず見上げた。


「……ここ?」


アイネは頷く。


「この中にいる」


「アバンが」


その一言で、空気が少し変わった気がした。


二人はビルの中へ入る。


中は広いロビーになっていた。


受付があり、人が行き交っている。


アイネは慣れた様子で受付を通り過ぎる。


そしてエレベーターへ向かった。


扉が開く。


二人は中に乗り込む。


ソラが何気なく階数のパネルを見る。


その時だった。


アイネがボタンを押す。


1階を三回。


そして――


99階を三回。


「……?」


ソラが首を傾げる。


すると。


エレベーターが動き出した。


だが――


上には向かわない。


下へ。


静かに、深く。


どんどん地下へ降りていく。


ソラは画面の表示を見る。


階数表示が変わっていく。


B1

B5

B12

B37


まだ下がる。


やがて。


表示が止まった。


B666


チン。


軽い音と共に扉が開いた。


その瞬間。


ソラは言葉を失った。


「……は?」


目の前に広がっていたのは――


街だった。


広い道。


並ぶ建物。


人の姿。


上の街とほとんど変わらない景色。


だが。


ソラの目は、ある一点に釘付けになった。


「……空?」


頭上には――


青い空が広がっていた。


雲まで浮かんでいる。


だがここは地下のはずだ。


ソラはアイネを見る。


「どういうことだ?」


アイネは歩きながら答える。


「特殊な魔法結界」


「擬似的に空を作ってる」


ソラはもう一度空を見る。


確かに、どこか違和感がある。


だが本物と見分けがつかないほど精巧だった。


アイネは続ける。


「ここは」


「アバンが作った場所」


少し振り返る。


「魔法を学ぶ者たちが住む街」


そして言った。


「地下魔法街 ガウマ」


その言葉と同時に。


ソラは一歩、街の中へ踏み込んだ。


その瞬間だった。


――ゾワッ。


身体の奥が震える。


ソラの目が大きく開いた。


(……魔力)


感じる。


空気の中に流れる力。


世界に満ちるエネルギー。


この街には――


魔力がある。


ソラは周囲を見渡す。


アイネが説明する。


「アバンが地下に巨大な魔鉱石を持ち込んだ」


「それを核にして」


「一定範囲に魔力を広げてる」


だからこの場所では魔法が使える。


魔術師たちが生活できる。


まるで――


別の世界のような街だった。


ソラは静かに息を吐く。


(……アバン)


改めて感じる。


あの男の規格外さを。


アイネは歩き続ける。


「こっち」


街の中心へ向かう。


そこには――


ひときわ大きな建物が立っていた。


街の中心にある、巨大な建造物。


アイネはその入口へ向かう。


ソラも後に続く。




その頃――


地下魔法街ガウマ。


街の中心に建つ巨大な建物。


その最上階の部屋では、一人の男が机に向かっていた。


大量の書類。


山積みの資料。


そして。


「いやいやいや、ちょっと待って」


男――アバンは頭を抱えていた。


「また上がってるじゃん」


紙をひらひらさせる。


「なんで魔術触媒の価格が半年で三割も上がるの?」


机の向かいに立つ女性は、涼しい顔をしていた。


黒髪。


整った身なり。


秘書のような雰囲気の女性だった。


「近年の物流価格の上昇が原因です」


淡々と答える。


アバンは天井を見上げる。


「いやさぁ」


「魔術師の育成ってお金かかるんだよ?」


「触媒、魔導具、訓練場の維持費」


指を折りながら数える。


「これ全部値上がりしたら僕どうすればいいの?」


秘書は無表情のまま言った。


「働いてください」


「働いてるよ!」


アバンは即座に反論する。


「最近僕めちゃくちゃ忙しいからね?」


「寝不足なんだよ?」


秘書は静かに言う。


「夜遅くまでゲームをしているからでは?」


沈黙。


アバンの動きが止まった。


「……」


秘書は続ける。


「昨日も深夜三時までプレイしていましたよね」


「いやあれは研究だから」


「何の研究ですか」


「魔王討伐RPG」


秘書はため息をついた。


「ただのゲームです」


アバンは腕を組む。


「いやいや、ゲームから学べることも多いんだよ?」


「例えば?」


「レベル上げの大切さ」


「それは魔術教育ではありません」


アバンは少しむくれた。


その時だった。


コンコン。


部屋の壁が軽くノックされた。


秘書が顔を上げる。


「来客ですね」


そう言って扉へ向かおうとする。


だが。


「待て」


アバンが手を上げた。


秘書が止まる。


アバンは少しだけ笑った。


「僕が出る」


椅子から立ち上がる。


そして扉の方へ向く。


「どうぞ」


静かな声で言った。


扉が開く。


そこに立っていたのは――


ソラ。


そして。


アイネ。


三人の視線が交差する。


少しの沈黙。


アバンは表情を変えなかった。


ただ。


ゆっくりと部屋の中央を指さす。


「座って」


それだけ言った。


ソラとアイネは顔を見合わせる。


そして頷いた。


二人は部屋に入り、目の前の椅子に座る。


部屋の中は静かだった。


秘書も何も言わない。


アバンは机の前に戻る。


そして。


何も言わないまま――


にっこり笑った。


まるで。


最初からこうなることを知っていたかのように。

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