表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
王都クレアレス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/58

第一章最終話:深淵

氷槍の雨が止み、静寂が落ちる。


その中心に立つのは――アバン。


無傷。


シバが細く目を開く。


だがアバンは、楽しそうに笑った。


「いやあ……本当にすごいね」


軽く拍手する。


「君みたいなのがまだいるとは思わなかった」


シバを見て言う。


「最終種級をここまで自然に扱うなんて」


「最高だよ」


その時だった。


アバンの背後。


暗闇が、揺れる。


影の中から、もう一人の人物が現れた。


長い髪を揺らし、静かに歩く少女。


アイネ。


騎士団がざわつく。


「もう一人……?」


アイネは周囲を見渡す。


そして小さく笑った。


「でも残念」


静かに言う。


「これはまだ――序章に過ぎない」


その言葉に、空気が凍る。


レオンが歯を食いしばる。


「何言って……」


アイネは答えない。


ゆっくりと手を上げる。


その先には――


崩壊したタペストの残骸。


アイネが手を翳す。


その瞬間。


タペストの残骸が、ふわりと浮いた。


黒い粒子が再び集まる。


ユイが叫ぶ。


「まさか……!」


だが。


再生ではない。


集まった残骸は、形を失ったまま――


そのまま空へと飛んでいく。


まるで、どこかへ回収されるように。


アイネは軽く笑う。


「これはもう、廃だから」


そのまま視線をレオンへ向ける。


「それと」


少しだけ首を傾ける。


「術式変換」


「もう少し借りるよ」


レオンが目を見開く。


「……は?」


だがその時。


アバンが動いた。


ソラの方へ歩き出す。


コツ。


コツ。


静かな足音。


シバが即座に魔力を高める。


騎士団も武器を構える。


ユイが叫ぶ。


「撃て!」


だが――


動かない。


身体が、止まる。


まるで見えない鎖に縛られたように。


レオンが歯を食いしばる。


「また……!」


シバも魔力を解放するが、動けない。


アバンはそのまま歩く。


レオンに抱えられているソラの前まで。


そして止まる。


ソラを見下ろす。


「……」


静かな視線。


その時。


ソラがゆっくり動いた。


レオンの腕を軽く押す。


「大丈夫」


ふらつきながらも、立ち上がる。


そして。


アバンと向かい合う。


しばらく沈黙が続く。


アバンが笑う。


「行こうか」


ソラは――


小さく頷いた。


レオンが叫ぶ。


「おいソラ!?」


ソラは振り返らない。


そのままアバンの後ろを歩き出す。


「待て!」


レオンが叫ぶ。


「どうしたんだよ!」


その時。


ソラが止まる。


そして少しだけ振り返る。


静かな声で言う。


「……さっき」


「世界が広がった時に見えたんだ」


左目に、かすかに光が宿る。


「少しだけだけど」


「世界の奥底が」


騎士団が黙る。


ソラは続ける。


「だから俺は――」


一歩踏み出す。


「知らないといけない」


その言葉に。


誰も、声を出せなかった。


ただ一人。


シバだけが。


ゆっくりと魔力を下ろす。


そして小さく呟く。


「……そういうことか」


納得したように、手を下ろした。


ソラはもう振り返らない


アバンの背中を追い、ソラはゆっくりと歩き出す。


王都の端。


崩れた街の先には、深い暗闇が広がっていた。


その時。


「……ソラ!」


声が響く。


振り返ると――クレアだった。


目は赤く、今にも涙が溢れそうだった。


それでも必死に言葉を紡ぐ。


「ソラ!」


少し震える声。


「私は……あなたの覚悟を見届けたい」


拳をぎゅっと握る。


「でも……」


声がかすれる。


「絶対、無事でいて」


涙が頬を伝う。


ソラが行ってしまうことを、クレアは納得していない。


本当は止めたい。


引き止めたい。


それでも――


ソラが自分で選んだ道だから。


クレアは、尊重したかった。


ソラは静かにクレアを見る。


何も言わない。


ただ、優しく微笑んだ。


その時。


「ソラ!」


今度はユイ。


「絶対帰ってこいよ!」


「勝手に死ぬとか許さないから!」


その横でルカも言う。


「……無事でいてよ」


短い言葉。


でも、強い想いがこもっていた。


ソラは二人を見る。


そしてゆっくり頷く。


優しい笑みのまま。


その視線が、最後に向かったのは――


シバ。


しばらく目が合う。


沈黙。


やがて。


シバが小さく頷いた。


それだけだった。


言葉はない。


だがそれは――


仲間としての理解だった。


周囲では、何人かの騎士が涙を流している。


レオンは黙ったまま拳を握る。


ソラはもう振り返らない。


前を見る。


アバン。


その隣にはアイネ。


そして――


深い暗闇。


ソラは一歩踏み出す。


そのまま。


二人と共に、闇の中へ歩き出した。


静かに。


ゆっくりと。


だが確かな足取りで。



入り口が閉じ完全に暗闇の中を歩く。


「君がきてくれて嬉しいよ」


相変わらずアバンは笑みを浮かべながら話す。


「ただ、俺は知らないといけないだけだ。」


「世界の本当の姿を」


アバンは嬉しそうにニコニコする。


その少し後ろでアイネは静かに歩く。


「それにしても、ここって何もないんだな。」


「どこに繋がってるんだ?」


アバンの歩みがゆっくり確実に進んでいく。


「世界の果て、この次元の常識が通用しない場所」


アバンとソラの声、3人の足音が少しずつ遠ざかり、暗闇に消えた。



第一章:王都学園編 完

とりあえず第一章を完結まで書けました!

ここまで来れたのは読んでくださった方のおかげです。本当にありがとうございました。

明日から第二章を書かせていただきますので、これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ