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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
王都クレアレス編

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45/55

覚醒

黒鋼が再び陣を組む。


学生が散開する。


タペストが脈打つ。


ソラはその前で、静かに目を閉じた。


その瞬間――


左目が光る。


淡い緑。


深い森の奥のような、静かな色。


「……『式眼』」


小さく呟く。


視界が崩れる。


空がほどける。


地面が解ける。


瓦礫も、城壁も、人の身体も。


すべてが――数式になる。


魔力の流れ。


術式の構造。


世界式の巨大な流れ。


そして。


タペスト。


巨大な演算体。


外殻を覆う術式。


内部で回り続ける学習回路。


更新される演算構造。


(見える)


ソラの呼吸が浅くなる。


(全部見える)


だが――


それだけだ。


これまでと同じ。


「……」


歯を食いしばる。


(見るだけじゃ足りない)


意識を広げる。


式眼の認識範囲。


普段は「読む」だけの領域。


だが今回は違う。


(触れる)


(干渉する)


(その範囲まで――広げろ)


視界の奥。


世界式の川が流れている。


巨大な構造。


触れてはいけない領域。


だが。


ソラはそこへ意識を伸ばす。


「ぐっ……」


脳が軋む。


視界が揺れる。


世界式は重い。


触れようとした瞬間、弾かれる。


(まだ足りない)


(もっと深く)



その頃。


「来るぞ!」


ガウスが吼える。


タペストが膨張する。


外殻が裂け、複数の術式が展開。


炎。


位相衝撃。


速度補正。


複合攻撃。


「防御線維持!」


騎士団が盾を構える。


衝撃。


地面が揺れる。


結界が砕ける。


「クレア!」


「分かってる!」


クレアが魔術式を展開。


光の壁が広がる。


衝撃がぶつかる。


だが。


完全には防げない。


「くっ……!」


結界が軋む。


その横を。


ルカが駆ける。


「私が散らす!」


高速移動。


残像が三つ。


斬撃。


タペストの外殻を削る。


だが。


「学習してる……!」


ルカの動きに合わせて、外殻の反応が速くなる。


遅延残像が発生。


カウンター衝撃。


「っ!」


吹き飛ばされる。


だが。


レオンが割り込む。


「前見て走れ!」


炎を纏った剣。


爆炎斬。


衝撃がタペストを押し返す。


「今のうちだソラ!」



ソラは動かない。


左目だけが光る。


(広がらない)


認識はできる。


だが。


干渉領域まで届かない。


世界式が拒絶する。


(くそ……)


意識をさらに押し込む。


脳が焼けるように痛む。


視界が白くなる。


(まだ)


(まだ足りない)



ユイが後方で演算している。


「攻撃パターン更新!」


「次、三秒後に衝撃!」


ガウスが前に出る。


「受ける!」


筋増大。


筋肉が膨張する。


「断界!」


大剣が振り下ろされる。


空間が裂ける。


タペストが揺れる。


だが。


外殻が再構築される。


「早すぎる……!」


ユイが叫ぶ。


「更新速度が上がってる!」


レオンが歯を食いしばる。


「ソラまだか!」


その瞬間、


タペストの外殻が裂け、巨大な衝撃波が放たれる。


騎士団の防御線が崩れる。


「防げない!」


ユイの声が響く。


レオンが歯を食いしばる。


「ソラァ!!」


だが。


ソラは動かない。


左目だけが――緑に光っている。


意識はまだ、現実の奥に沈んでいた。



世界が静まる。


音が消える。


色がほどける。


数式だけが残る。


流れている。


世界式。


巨大な構造。


無限に続く演算。


タペストの学習回路。


更新される構造。


すべてが見える。


だが。


触れられない。


ソラはさらに意識を押し込む。


その瞬間。


視界が変わった。


数式の世界の奥。


そこに――人影が立っていた。


「……」


ソラは目を細める。


見覚えがある。


それは。


転生前の自分。


古部天だった。


黒い髪。


静かな目。


かつての姿のまま、ただそこに立っている。


「……なんで」


ソラの声は届かない。


だが。


天は振り返らない。


ただ前を見ている。


その時。


ソラは気づく。


天の隣に――


もう一つの影がある。


人影。


……のように見える。


だが違う。


輪郭が曖昧だ。


人なのか。


生き物なのか。


そもそも形があるのか。


認識が定まらない。


見ようとすると、形が崩れる。


目を離すと、そこに立っている。


言葉では説明できない存在。


ただ。


不思議と、恐怖はない。


その“何か”が。


ゆっくりと天の隣に立つ。


そして。


天が、口を開く。


静かな声。


短い言葉。


「解け」


その瞬間。



意識が引き戻される。


世界が戻る。


夜空。


王都。


騎士団。


仲間たち。


そして。


タペスト。


だが。


違う。


見える世界が、まるで違う。


世界式が広がっている。


今までとは比較にならない規模で。


空気。


石。


光。


魔力。


すべてが術式として流れている。


まるで――


世界そのものが一つの魔術式のように。


ソラはゆっくり顔を上げる。


衝撃波が迫る。


巨大な圧力。


騎士団が吹き飛ばされる寸前。


「ソラ!!」


クレアの叫び。


ソラは――


ただ手をかざした。


掌を前に出す。


その瞬間。


世界式が動く。


衝撃波を構成していた術式。


演算構造。


魔力流。


すべてがほどける。


音もなく。


跡形もなく。


衝撃波が――消えた。


「……は?」


レオンの声が漏れる。


騎士団が固まる。


タペストの動きが止まる。


そして。


ソラが目を開く。


左目。


緑の光。


その瞳の中。


魔法陣が浮かんでいる。


複雑な幾何学模様。


回転する演算円。


世界式と同じ構造。


緑色の光が、静かに輝いていた。


ソラはゆっくりと呟く。


「……見える」


その声は小さい。


だが。


確信があった。


「全部」


世界式。


魔術式。


演算構造。


そして。


タペストの核。


すべてが、手の届く場所にあった。


タペストが再び脈動する。


学習回路が回る。


だが。


ソラの目が、それを見つめる。


緑の魔法陣が静かに回転する。


彼の覚醒が世界を大きく動かすことを今は知らない

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