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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
王都クレアレス編

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42/55

幼体

城下は半壊状態だった。


瓦礫。


逃げ惑う市民。


蒼い防壁の内側で、魔道騎士団が陣形を組む。


中央に立つのは――


団長ガウス。


巨躯。


全身を覆う黒鋼の鎧。


その背に担ぐ大剣は、人一人分ほどある。


「学生部隊、右翼につけ」


低く響く声。


「騎士団は中央突破を試みる」


ソラは頷く。


レオンが横に並ぶ。


「正面は任せろって顔してるな、あれ」


「任せられる人だ」


ソラは静かに言う。



タペストが脈動する。


魔力を吸い込み、膨張。


地面がひび割れる。


「来るぞ!」


次の瞬間。


黒い衝撃波が放たれる。


ガウスが前へ出る。


「第一隊、衝撃受け流し!」


騎士たちが盾を重ねる。


ガウスは大剣を地面に突き立てた。


「――固有魔術式」


空気が震える。


鎧の隙間から赤い光が滲む。


筋肉が、膨張する。


鎧が軋む。


「筋増大」


地面が陥没する。


踏み込み。


爆発的加速。


衝撃波を正面から叩き割る。


ズドォォン!!


空気が裂ける。


瓦礫が吹き飛ぶ。


学生たちが目を見張る。


「化け物かよ……」


ルカが呟く。


ガウスは止まらない。


大剣を振り上げる。


構えは独特。


重心が低い。


刃は水平。


「――アサハト流」


踏み込み。


回転。


重心移動。


筋増大によって強化された肉体が、流派の動きを最大効率で解放する。


「断界」


振り下ろし。


斬撃が空間を裂く。


空気が圧縮され、白い線となって走る。


直撃。


タペスト中央に巨大な衝撃。


轟音。


地面が割れる。


瓦礫が跳ね上がる。


煙。


沈黙。


「……入ったか?」


煙が晴れる。


タペスト。


揺れている。


だが。


傷は、ない。


「……」


ガウスの目が細くなる。


タペストの表面が歪む。


斬撃を“解析”するかのように。


そして。


ガウスと同じ軌道の衝撃が返ってくる。


「団長!」


ガウスが大剣で受ける。


だが吹き飛ぶ。


地面を滑り、止まる。


鎧に亀裂。


だが立つ。


「……技を、模倣しただと」


ソラの目が鋭くなる。


「違う」


「再現だ」


タペストは脈動する。


今の一撃を学習した。



「騎士団は牽制を続けろ!」


ガウスが吼える。


「学生、動け!」


ソラが前に出る。


「核は中心部。だが外殻が自動防衛してる」


ユイが目を閉じる。


「波形が変わった……さっきより速い」


レオンが剣を握る。


「時間をかけるほど不利か」


ルカが笑う。


「面白くなってきたな」


クレアは震える手を握りしめる。


それでも前を見る。



ガウスが再び構える。


「次は全力だ」


鎧が軋む。


筋増大がさらに膨張する。


血管が浮き上がる。


「若造ども」


低く言う。


「道は、俺が作る」


踏み込み。


地面が爆ぜる。


騎士団が同時に突撃。


黒鋼と学生が並ぶ。


巨大な人工構造体に向かって。


夜が、震える。




その頃学園内、


戦闘の轟音が、遠くから響いている。


視線は空の亀裂と、城下の魔力の揺らぎ。


アバンはフードの奥で、楽しげに目を細めている。


「今のあれ」


顎で城下を指す。


「例えるなら“成長期”かな」


シバは無言。


「外部刺激を取り込んで、自分の構造に反映させる段階」


遠くでガウスの斬撃が炸裂する。


空気が震える。


アバンはくすりと笑う。


「ほら、今の」


「強かったね」


一拍。


「でも次は、同じやり方じゃ通らない」


シバが低く問う。


「何故そう断じる」


アバンは肩をすくめる。


「観測」


「周囲の術式、物理衝撃、魔力波形」


「全部、吸収して“形式化”してる」


遠くで黒い衝撃が返る。


ガウスが吹き飛ばされる気配。


「ね?」


軽い声。


「今はまだ未完成」


「だけど“学ぼうとしている”」


シバの目が細くなる。


「目的は」


「自己拡張」


即答。


「取り込めるものは全部取り込む」


「理解できるものは構造化する」


「再現できるものは再利用する」


アバンは空を見る。


亀裂が脈打つ。


「赤子が言葉を覚えるみたいに」


「周囲を真似して、自分の世界を広げていく」


一拍。


「成長期だよ」


静寂。


「だが暴走している」


シバの声は低い。


「制御がない」


アバンは首を傾げる。


「うん。だから危ない」


「でもさ」


少しだけ真面目な声になる。


「成長って、本来“許容された環境”で起こるものだよね?」


視線がシバに向く。


「普通は、壊れる前に止まる」


「枠がある」


「限界がある」


遠くで地面が砕ける。


騎士団の魔力が揺れる。


「でも今のあれ」


アバンは微笑む。


「限界値を知らない」


「上限設定が、見当たらない」


シバが止まる。


「……世界式が許していると?」


「少なくとも、拒絶はしてない」


あっさり言う。


「異物なら弾くはず」


「でもあれは“存在できている”」


沈黙。


夜風が吹く。


「つまり」


シバが低く言う。


「排除対象ではない可能性」


アバンはくすくす笑う。


「あるいは」


一歩後ろへ下がる。


「想定内」


空の亀裂が脈打つ。


「成長段階の挙動」


「観測対象として、許可されている」


シバの魔力が、わずかに揺らぐ。


「言いたいことは何だ」


アバンは首を傾げる。


「単純だよ」


にこり。


「今はまだ“幼体”」


「でも放置すれば、王都じゃ足りなくなる」


一拍。


「世界規模になる」


遠くでソラの魔力が膨らむ。


アバンはそちらを見る。


「さて」


「彼らはどこまで削れるかな」


「成長前に」


静かな笑み。


シバは目を細める。


「貴様は止めないのか」


アバンは即答する。


「観測者は基本、中立」


一瞬だけ、目の奥が深くなる。


「……今はね」


風が強く吹く。


亀裂が揺らぐ。


城下の戦いは、さらに激しくなる。

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