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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
王都クレアレス編

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34/55

作戦

王都学園・寮の共同棟。


暖炉の火がぱちぱちと音を立てている。


外は冷えるが、室内は静かに温かい。


テーブルを囲む四人。


ソラ、クレア、ユイ、ルカ。


レオンはいない。


呼んでも来ないのは分かっている。


部屋にこもったまま、ほとんど口をきいていない。


ルカが腕を組む。


「このままじゃダメだよ……あいつ、絶対一人で抱え込んでる」


ユイが頷く。


「うん。表情、空っぽだった」


クレアは静かに紅茶を置く。


「力を失ったという事実以上に、“利用された”ことが効いているわね」


ソラは壁にもたれ、腕を組んでいる。


「放っておけば、腐る」


単刀直入。


だが、否定はしない。


「で、どうする?」


ルカが身を乗り出す。


「楽しいことしよう!」


即答。


ユイが苦笑する。


「具体的には?」


「えーっと……えーっと……」


詰まる。


クレアがふっと息を吐く。


「ちょうど来週、クレアレス建国記念日よ」


三人が顔を上げる。


「祭りがあるわ。王都中央広場で大規模な式典と夜市」


ソラが思い出す。


「花火も上がるな」


「ええ。魔導花火ね」


ルカの目が輝く。


「それだ!!」


ユイも少し笑う。


「確かに、あいつ祭りとかあんまり行かなそうだよね」


「だからこそ」


クレアが静かに言う。


「強制連行」


ソラが短く頷く。


「異論なし」


クレアが一瞬だけ迷い、言葉を続ける。


「……ただし」


三人の視線が集まる。


「昼間は、私は一緒にいられないわ」


ルカが首を傾げる。


「なんで?」


クレアは淡々と告げる。


「凱旋パレードに参加するからよ」


一瞬、空気が止まる。


ユイが目を見開く。


「え、あの王族席のやつ?」


「ええ」


クレアは表情を変えない。


「第二王女として、式典に出席する義務があるの」


ルカがぽかんとする。


「そうだった……お姫様だった……」


ソラは当然のように頷く。


「警護は?」


「騎士団が付くわ。問題ない」


クレアの声は落ち着いているが、どこか遠い。


王族としての顔。


学園での顔とは違う。


ユイがそっと言う。


「じゃあ、昼はクレア抜きで屋台巡り?」


「そうなるわね」


クレアは小さく笑う。


「夜の花火には間に合わせるわ。式典は日没前に終わるから」


ソラが短く言う。


「遅れるなよ」


「ええ、」


ルカが拳を握る。


「じゃあ決まり!昼は俺たちでレオンを引っ張り出す!夜は全員集合!」


ユイが紙に書く。



作戦名:レオン強制外出計画。


① 口実を作る

② 拒否権を与えない

③ 当日は全力で巻き込む


ルカが紙に雑に書き出す。


「屋台巡り!射的!食べ歩き!」


ユイが付け足す。


「あと、式典のパレード」


クレアが微笑む。


「建国演説は退屈だけど、夜は悪くないわ」


ソラは小さく言う。


「花火があるな」


短いが、意味は伝わる。


クレアが柔らかく頷く。


「……そうね」


レオンは、空を見上げるのが好きだった。


世界式を感じると言って。


ならば。


今はただ、光を見るだけでいい。



しばらくして。


扉が開く音。


全員が一瞬固まる。


レオンだった。


共同棟に来たのは久しぶりだ。


「……何してる」


ルカが即座に立つ。


「秘密会議!」


ユイが慌てて紙を隠す。


クレアは平然としている。


ソラはそのまま。


レオンはため息をつく。


「くだらなそうだな」


「くだらないよ」


ルカが即答する。


一瞬、沈黙。


だが――


ほんのわずかに。


レオンの口元が、動いた。


それを、誰も見逃さない。


クレアが何気なく言う。


「来週、空けておきなさい」


「は?」


「予定が入ったわ」


「勝手に決めるな」


ユイが肩をすくめる。


「拒否権なし」


ソラが付け足す。


「命令だ」


レオンは呆れた顔をする。


「なんの」


四人が同時に言う。


「「「「祭り」」」」


沈黙。


そして――


「……ガキかよ」


小さな呟き。


だが、完全拒否ではない。


それだけで十分だった。


暖炉の火が揺れる。


重かった空気が、少しだけ軽くなる。


世界式は不安定。


敵は動き出している。


だが今は。


仲間がいる。


来週、クレアレス建国記念日。


王都最大の祭り。


それが――


束の間の平穏になるのか。


それとも。


嵐の前触れになるのか。

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