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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
王都クレアレス編

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30/55

演舞

ヴァルディア王国魔導学園の中央大広間。


天井には巨大な魔導シャンデリア。


無数の光粒子が宙を漂い、星空のように輝いている。


「うわぁ……」


ルカが目を輝かせる。


「すご……お城みたい……!」


クレアはドレスの裾を整えながら言う。


「格式ある学園だもの。当然よ」


ユイは淡い水色のドレス姿で微笑む。


「ちょっと緊張するね」


ソラは正装に身を包みながらも、どこか落ち着かない。


「こういう場は苦手だ……」


レオンは黒を基調とした礼装。


普段よりも静かに見える。


「騒がしいな」


「雰囲気壊さないでよ!」


ルカが小突く。


今夜は後夜祭。


模擬戦を終えた両学園の交流を兼ねた舞踏会。


楽団の音色が流れ、広間は華やかに彩られている。



ソラはみんなと離れ、端でひとりドリンクを飲んでいた。


すると隣から話しかけられた。


「君が式を崩したのか」


声をかけてきたのは、カイン。


昼間の対戦相手だ。


ソラは少しだけ目を逸らす。


「偶然だ」


「偶然であれは無理だ」


カインは真剣だった。


「君は世界式を見ているのか?」


一瞬の沈黙。


ソラは淡々と答える。


「さあな」


「ただ、言うなら理解はしている、とだけ」


カインは息を吐く。


「また戦いたい」


「今度はもっと上手く構築する」


ソラは小さく頷く。


「受けて立つ」


静かな約束だった。



ソラとは少し離れた中央付近で、数人の女子に囲まれ話していたクレア。


「あなた、面白い戦い方をするのね」


エリシアがグラスを持って近づく。


クレアは優雅に微笑む。


「戦場は支配するものよ」


「でもあなたの結界、密度がすごかった」


エリシアは素直に言う。


「どうやってあんな圧縮を?」


「秘密」


クレアは軽く笑う。


だが少しだけ柔らかい声で続ける。


「でも、あなたの制圧力も悪くなかったわ」


互いに一礼。


敵ではなく、競争相手として。


一方ルカは、


すでに他校の生徒たちと盛り上がっている。


「え!?詠唱そんな短くしていいの!?」


「今度教えて!」


完全に友達を作っていた。


ユイがその様子を見てくすっと笑う。


「ルカらしいね」




広間の端。


レオンは外を眺め食事を食べていた。


アルトが歩み寄る。


「今日は完敗だ」


「だが、理解できた」


レオンはグラスを持ったまま答える。


「何を」


「君は魔法を壊しているんじゃない」


「再定義している」


レオンは少しだけ目を細める。


「大げさだ」


アルトは静かに言う。


「その力、いずれ大きな戦場を呼ぶ」


意味深な言葉。


レオンは返さない。


ただ、音楽に視線を向けた。


その少し離れた場所。


アイネは壁際に立っていた。


淡いドレス。


穏やかな笑顔。


誰と話しても自然で、違和感がない。


だがその視線は、常に五人を捉えている。


(精神状態、安定)


(結束、強)


今日一日で確信した。


術式変換を奪うには――


この絆ごと揺らさなければならない。


舞踏曲が変わり中央でペアが組まれ始める。


レオンに声をかけようとする生徒が何人かいるが、その前に。


アイネが歩き出す。


「レオンくん」


柔らかな声。


レオンが振り向く。


「どうした」


「一曲、どう?」


自然な誘い。


周囲も違和感を抱かない。


レオンは少し迷い、


「……ああ」


二人が中央へ向かう。


音楽が流れる。


ステップは滑らか。


視線が交わる。


アイネは微笑む。


「今日は本当にすごかった」


「そうか」


「レオンくんの術式変換、綺麗だったよ」


レオンの瞳がわずかに揺れる。


ほんの、わずかに。


その変化を。


アイネは見逃さなかった。


(揺らぎ確認)


ほんの僅か。


それを、アイネは確かに捉える。


十分ではない。


だが――


(潮時か、、)


次の瞬間。


異変は、外から来た。


窓の外。


一瞬だけ、空気が歪む。


ソラの目が反射的に上を向く。


「――!」


光。


細く、圧縮された魔力線。


一直線。


レオンに向かって――


いや、


その前に立っていたアイネを、撃ち抜いた。


衝撃。


赤い飛沫。


音楽が止まる。


アイネの身体が、ゆっくりと崩れ落ちる。


「……え?」


ルカの声が震える。


レオンが反射的に抱き止める。


アイネの背中。


礼装が焼け焦げ、血が滲む。


「アイネ!」


クレアが叫ぶ。


ユイが駆け寄る。


ソラは窓の外を睨む。


「なんだ……!」


会場内の防御結界は展開されていたはず。


それを正確に撃ち抜く精度。


明らかに、狙撃。


レオンの手に血がつく。


温かい。


現実。


「しっかりしろ」


アイネの呼吸は浅い。


だが、まだある。


彼女は薄く目を開ける。


視線はレオンを捉える。


かすかな声。


「……ごめんね」


その言葉に。


レオンの瞳が揺れる。


はっきりと。


動揺。


怒り。


焦り。


レオンの感情が、微かに軋む。


ソラが気づく。


「レオン、落ち着け!」


しかし、レオンの精神は崩れ続ける。


クレアが叫ぶ。


「医療班を!」


ユイが必死に止血を試みる。


ルカは震えながら立ち尽くす。


広間は混乱。


悲鳴。


ざわめき。


夜は終わらない。


舞踏会は血に染まった。



その会場を窓越しに外からアバンが見ている。


「さあ、始めよう」

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