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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
王都クレアレス編

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24/55

協力

第二講堂前、退避通路。


異形の融合体タペストは、ゆっくりと腕を広げた。


六本の腕、三つの核、濁流のような魔力。


「来る!」


次の瞬間。


黒い魔弾が雨のように降る。


威力自体は、3種級ほどではない。


だが――


数が異常。


連射。


廊下が爆ぜる。


教師が前へて防御壁を展開する。


だが。


一撃、二撃、三撃――


休みなく叩き込まれる魔弾。


結界が軋む。


「ぐっ……!」


教師の一人が膝をつく。


直撃ではない。


だが、魔力が削られる。


圧倒的な供給量。


融合体は“止まらない”。


「このままじゃ、削り負ける……!」


ルカが叫ぶ。


ソラは冷静に観察していた。


(攻撃力は高くない)


だが、


(魔力量が異常)


中心棟から溢れる魔力を吸い上げている。


実質、弾切れなし。


教師がまた一人、弾き飛ばされる。


致命傷ではない。


だが、戦線が下がる。


そのとき、


「俺たちがやる」


レオンが前に出た。


静かに、迷いなく。


その隣にクレアが立つ。


「作戦は?」


レオンの目は融合体を捉えたまま。


「俺が弾を消す」


「一瞬でいい。隙を作る」


「その間に、お前の2種級を叩き込め」


クレアが頷く。


「わかったわ」


ソラが付け加える。


「胸部中央が主軸だから、あそこが崩れれば出力が落ちる」


融合体が再び腕を振り上げる。


三つの核が脈動。


一斉射。


廊下を埋め尽くす黒い魔弾。


「今だ」


レオンの指が動く。


術式変換。


魔弾の接続式を書き換える。


供給路を遮断。


位相を反転。


黒い魔弾が、空中で歪む。


次々と消え、やがて消滅。


融合体の動きが、一瞬止まる。


核の流れが乱れた。


「クレア!」


クレアはすでに詠唱に入っている。


四節。


二種級。


「――グレイス・アクレシア!」


空間に六本の巨大氷槍が展開。


回転。


加速。


一直線に胸部核へ。


融合体が腕を振るう。


だが、魔弾が出ない。


氷槍が、直撃する。


轟音。


胸部が凍結。


亀裂。


魔石にヒビ。


融合体が咆哮。


魔力が乱れ、出力が一段落ちる。


廊下の圧が軽くなった。


ルカが息を呑む。


「通った……!」


だが。


砕けない。


核はまだ生きている。


三つのうち、一つ。


残り二つが脈動を強める。


融合体が後退しながら魔力を再収束。


三核が同時に脈動する。


魔力が収束。


先ほどとは比べ物にならない密度。


「来るぞ……!」


教師の声。


六本の腕が一斉に前へ突き出される。


黒い奔流。


今度は“面”だった。


弾ではない。


廊下全体を呑み込む魔力の津波。


逃げ場はない。


クレアが歯を食いしばる。


「防御じゃ、足りない……!」


ソラの脳内で式が高速展開する。


(範囲が広すぎる。核を狙う隙がない)


その時。


レオンが一歩、前に出る。


「俺が全部消す」


クレアが振り向く。


「全部って――」


レオンは静かに答える。


「全部だ」


両手を広げる。


術式変換。


通常は“干渉して逸らす”技。


だが今回は違う。


供給路を辿る。


中心棟から流れ込む魔力。


融合体内部の循環。


それらを一括で書き換える。


魔力を“無属性の霧”へ分解。


「ぐっ……!」


血が滲む。


処理量が限界を超えている。


奔流が目前まで迫る。


「くっ……!」


視界が白くなる。


その時、


黒い奔流が――


消え、霧散。


廊下を満たしていた圧が、一瞬で空白になる。


融合体の核が大きく揺らぐ。


供給が断たれた。


魔力が流れない。


初めての、完全な“無”。


レオンの膝が崩れる。


「レオン!」


ソラが支える。


レオンはかすかに笑う。


「今だ……」


クレアの目が鋭くなる。


「いくぞ!」


教師も、生徒も、迷わない。


初級魔法。


1種級。


2種級。


無数の光が同時に走る。


ルカの風刃。


教師の雷撃。


クレアの二種級魔法。


ソラは両手を前へ。


詠唱はない。


全員の魔法が一直線に収束。


融合体の三核へ。


一斉着弾。


轟音。


胸部が砕け、背部は粉砕。腹部は亀裂。


三つの核が同時に砕け散る。


融合体が絶叫し、外殻が崩壊。


魔力が逆流。


光が爆ぜる。


そして――


静寂。


生徒たちは息を切らす。


ルカが震えながら言う。


「……勝った?」


クレアが振り返る。


レオンは意識を失いかけている。


魔力は空。


完全枯渇。


ソラが静かに呟く。


「無茶しすぎだ」


だが、その目は誇らしい。


生徒たちの目の前には巨大な漆黒のタペストが転がっていた。




その頃、生徒が誰もいない薄暗い教室に人影があった。


「あれー?もうやられちゃった?早いなー」


その少年は、椅子に座りながら、遠くのソラたちを眺めていた。


「あっ、そうか、まだ”前”だったね」


不敵な笑みを浮かべ、教室を後にした。

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