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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
王都クレアレス編

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23/55

異形

「全員、避難だ!」


教師の怒号が飛ぶ。


訓練場の結界が緊急モードへ移行する。


生徒たちは半ば押し出されるように移動を始める。


「走れ! 第二講堂へ!」


ソラは振り返る。


「ソラ!」


クレアが腕を引く。


「今は従って!」


レオンは一瞬だけ中心棟を見た。


膨れ上がる魔力。


異常なほどに濃い。


(A級……いや、それ以上?)


だが教師に遮られる。


「レオン、動け!」


歯を食いしばり、列に加わる。


ソラも歩き出す。


だが、その視線は――


一人だけ動かない背中を見ていた。


シバ・クエス。


「先生!」


誰かが呼ぶ。


シバは振り向かない。


「教師の仕事だ」


短く言い残し、逆方向へ歩き出す。


中心棟へ。


歩幅は一定。


速くも遅くもない。


だが一歩ごとに、空気が変わる。


廊下を抜ける。


壁の結界式がひび割れている。


魔力の流れが逆流している。


(内部からの圧)


第三の轟音。


中心棟の大扉が吹き飛ぶ。


破片が散乱する。


シバは足を止めない。


瓦礫を越え、


黒煙の向こうへ踏み込む。


そして――


見た。


広間いっぱいに、蠢く影。


一体。


二体。


十体。


いや――


数十。


人型。


獣型。


歪んだ外殻。


紫黒の魔力をまとった存在。


A級タペスト。


ワイバーンだ。


通常なら、王国騎士団が手こずるほどの脅威。


それが群れている。


学園の中心で。


「……なるほど」


シバの声は静か。


恐れはない。


怒りもない。


ただ確認をした。


タペストたちが一斉に顔を上げる。


外敵を認識。


殺意が膨れ上がり、床が砕ける。


最前列の一体が足元に魔法式を展開し跳躍、突進。


常人なら視認すら困難。


だが、


シバの指が、わずかに動く。


術式変換。


加速魔法式を反転。


速度を遅くする術式に変換する。


ワイバーンの動きが止まり、


シバが手をかざす。


空中で直角に逸れ、


壁へ叩きつけられる。


轟音、粉塵。


残りの群れが唸る。


魔力が膨張する。


圧が増す。


(自然発生ではない)


配置が不自然。


統制がある。


中心部に――


核。


シバの瞳が奥を見る。


群れの奥。


階段上。


黒い歪み。


空間が裂けている。


そこから絶え間なく魔力が供給されている。


「発生源はそこか」


低く呟く。


次の瞬間、十体以上が同時に襲いかかる。


炎弾。

衝撃波。

爪撃。


だが。


全てが届かない。


式が、到達直前で崩れる。


変換。


逆流。


空間の支配。


A級が一体、また一体と吹き飛ぶ。


それでも。


数が多すぎる。


通常の戦場ではあり得ない量。


シバは静かに息を吐く。


「学生が近づく前に、削る」


その目が、冷たく細まる。




一方その頃、第二講堂へ向かう避難経路。


生徒たちは教師に誘導されながら走っていた。


だが――


空気が、重い。


魔力の圧が、後ろではなく。


前から来る。


レオンが足を止める。


「……待て」


その瞬間。


廊下の奥の空間が、歪んだ。


ぐしゃり、と。


空気が折れ曲がる。


黒い霧。


そこから現れた異形。


三体分の外殻。


六本の腕。


胸部に重なった魔石。


顔は、いくつも重なり合っている。


叫びとも呻きともつかない振動音。


「なに、あれ……」


ルカの声が震える。


クレアが前に出る。


「下がって」


ソラは目を見開く。


(融合……?)


通常、タペストは個体。


群れることはあっても、


“重ならない”。


だが目の前のそれは、


明らかに――


複数体が無理やり一つに繋がれている。


魔力の波形が乱れている。


不安定。


だが。


濃度はA級を超えている。


レオンが低く言う。


「Sに近い……いや、未完成の上位種か」


教師が叫ぶ。


「戦闘班、前へ! 他は退避!」


だが。


融合体が動いた。


一歩。


それだけで床が砕ける。


六本の腕が同時に振るわれる。


衝撃波。


廊下の壁が爆ぜる。


数人が吹き飛ぶ。


「まずい!」


クレアが即座に防御壁を展開。


半透明の防壁が生徒を包む。


衝撃がぶつかる。


二撃目で亀裂がはいる。


「重い……!」


ソラの視界が高速で動く。


(接続が三重。核が三つある)


胸部。


背部。


腹部。


魔石が干渉し合い、出力を増幅している。


「レオン!」


「分かってる!」


術式変換。


放たれた衝撃波を斜め上へ逸らす。


天井が吹き飛ぶ。


だが。


融合体は止まらない。


むしろ、笑ったように魔力が膨れる。


「増幅してる……!」


ルカが叫ぶ。


吸っている。


周囲の残留魔力を。


中心棟から溢れる膨大な魔力を餌にしている。


ソラの背筋が冷えた。


(これ、放置したら)


やばい。


クレアが歯を食いしばる。


「時間を稼ぐしかない……!」


教師が応援を呼ぶ。


だが結界は乱れている。


シバは中心棟。


ここにはいない。


融合体が、ゆっくりと腕を広げる。


六つの掌に、黒い魔力が集束する。


三つの核が同時に脈動。


空間が軋む。


おそらく3種級魔法に近い。


レオンが呟く。


「まずい、3種級より上は変換できない!」


その瞬間。


融合体が咆哮。


三方向へ、同時に魔力砲。


廊下が、白く染まる。


「これ、やばい!」


クレアが恐怖する。


王都学園。


中心ではA級の群れ。


外縁では、未知の融合体。


戦場は、完全に分断された。

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