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fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
王都クレアレス編

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22/55

模倣

王都学園・第一訓練場。


冷たい朝。


一年生が整列している。


中央には、シバ・クエス。


「昨日言った通り、今日は実技だ」


淡々とした声で語り始める。


「さっそくだが、全員で、私に向かって魔法を放て」


ざわめきが広がる。


ルカが小声で。


「正気なの!?」


「全力でこい」


「合図で撃て」


空気が張りつめる。


ソラは式を観察する。


(防御式は、展開していない)


レオンも目を細める。


(何をするつもりだ)


「三」


「二」


「一」


「撃て」


炎。

雷。

風刃。

氷槍。


一斉に放たれる。


訓練場が光に包まれる。


爆音、衝撃波が響く。


煙が立ち込める。


数秒後、視界が晴れる。


そこに立っていたのは――


無傷のシバ。


防御障壁はない。


結界も発動していない。


ただ、立っている。


生徒たちが凍りつく。


「……効いて、ない?」


ルカの声が震える。


ソラの目が細くなる。


(違う)


当たっていないのではない。


“成立していない”。


発動はした。


だが――


到達直前で、


式が、書き換えられた。


レオンの呼吸が、わずかに止まる。


(まさか)


シバが静かに言う。


「そうだ、」


その瞬間。


レオンの背筋に冷たいものが走る。


今の現象。


知っている。


いや――


自分しか、使えないはずの。


「……術式変換」


無意識に、レオンの口から漏れる。


クレアが振り向く。


「レオン?」


シバは視線を向ける。


「正解だ」


静かに、淡々と。


その言葉が、場を凍らせる。


レオンの瞳が揺れる。


「それは……俺の」


「固有魔術式、だったな」


“だった”。


その言い方。


生徒たちがざわめく。


ソラは息を呑む。


(世界式への直接干渉)


魔法式を上書きする。


接続点を書き換える。


結果を変える。


それは――


レオンだけが持つ、はずの力。


クレアが低く呟く。


「どういう、こと……」


シバは一歩踏み出す。


地面に展開していた生徒たちの未消去式が、次々と反転する。


炎は冷気に。

風は停止に。

雷は拡散に。


完全な書き換え。


精度。

速度。

規模。


レオンの顔色が変わる。


(消費が……)


術式変換は、魔力を異常に食う。


通常の五倍。


それを、連続で。


しかも無詠唱。


無表情。


シバは平然としている。


「固有、という言葉に甘えるな」


静かな声。


だが重い。


「世界式は誰のものでもない」


ソラの目が鋭くなる。


(触れている)


世界式の深層。


レオンが問う。


「……なぜ、使える」


わずかな動揺。


初めてだ。


レオンが、揺れている。


シバは視線を合わせる。


「それは秘密だ」


それだけ。


「あえて言うなら、世界式を見ることができなくても、世界式に紐づいている空間そのものを操作できれば、なんでもできるんだ。」


あまりに簡単に言う。


それは常識外のことだ。


しかし、シバの固有魔術式は空間支配。


辻褄が合う。


レオンは拳を握る。


自分の優位性。


生まれながらの特権。


それを、超えられた。


しかも、あっさりと。


「……あり得ない」


小さな呟き。


シバは冷静に告げる。


「あり得る」


「世界式に不可能はない」


訓練場の空気が重い。


シバは全員を見渡す。


「お前たちは、まだ浅い」


「力に名を付けただけで、理解した気になるな」


レオンはシバから目を逸らさない。


(この男は――何者だ)


教師ではない。


ただの魔術師でもない。


“異常”。


その確信だけが、残った。


シバが背を向ける。


「それじゃあ、詳しく講義を、」


その時だった。


――――轟音。


「!?」


地面が、揺れる。


訓練場の空気が震えた。


遠く。


だが確実に、学園の中心部から。


次の瞬間。


膨大な魔力。


爆発的に広がる圧。


空気が重くなる。


呼吸が浅くなる。


何人かの生徒がよろめいた。


「な、なに……!?」


ルカの声が震える。


クレアの顔色が変わる。


「これ……訓練じゃない」


ソラの瞳が鋭くなる。


(この質……)


知っている。


忘れられるはずがない。


空間を歪ませる、あの異質な波。


レオンがゆっくりと校舎中央を見据える。


(中心棟……)


魔力は一点から放射状に広がっている。


だが、乱れていない。


むしろ――


“意図”がある。


シバは振り返らない。


ただ、目だけがわずかに細くなる。


(早いな)


予定より。


観測より。


一拍、早い。


第二の轟音。


窓ガラスが震える。


結界が軋む音が、かすかに響く。


生徒たちがざわめく。


「敵襲!?」


「タペストか!?」


教師陣も動揺している。


だがシバは一言。


「全員、その場で待機」


低く、強い声。


一瞬で静まる。


しかし。


魔力は増幅していく。


濃度が上がる。


空気が重い。


ソラの胸がざわつく。


(……いる)


間違いない。


学園の中に。


レオンが呟く。


「偶然、ではないな」


シバは静かに答える。


「当然だ」


その目は、すでに戦場の色。


「始まった」


短い一言。


中心棟の上空。


目には見えないが、


確実に“歪み”が開きつつあった。


王都学園。


結界の内側。


その中心から、


膨大な魔力が噴き上がる。


そして――


その質は、


タペストのものと酷似していた。



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