表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
fORmulArS decipher(フォーミュラーズディサイファー)  作者: 澄田 葵伊
王都クレアレス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/57

実力

模擬実技は続行された。


ソラとドランの試合が終わってから、訓練場の空気は明らかに変わっている。

さっきまでの「見世物」から、「本気で見るべきもの」へ。


「次」


教官が名簿を確認し、淡々と告げた。


「レオン・ヴァルグ。対するは――クレア・クレアレス」


一瞬、時間が止まったように静まり返る。


次の瞬間。


「……は?」

「今の名前……」

「一位と二位じゃね?」


ざわめきが爆発的に広がった。


入学生ランク一位、レオン・ヴァルグ。

入学生ランク二位、クレア・クレアレス。


能力測定で、明確に他を引き離した二人。

王族と、化け物じみた魔力量を持つ少年。


(……そりゃ、盛り上がる)


観客席で、ソラは無意識に背筋を伸ばしていた。


「本気でやるのかな」

ユイが小声で言う。


「多分……やる」


理由は分からない。

でも、二人とも「手加減」という概念を持ち合わせていない気がした。


訓練場中央。


レオンは、いつも通り穏やかな表情で立っている。

対するクレアは、軽くスカートを整え、楽しそうに微笑んでいた。


「よろしく、レオン」


「こちらこそ。全力で来て」


その言葉だけで、周囲が息を呑む。


開始の合図。


その瞬間、空気が震えた。


(……魔力量が、違う)


ソラは即座に理解した。


レオンの魔力は「多い」というレベルじゃない。

流れている量も、密度も、まるで一段階上の存在。


クレアも同じだ。


王族の血統による、世界式への書き込みの効率化。

魔法式を書き込むことが、世界に拒まれていない。


「先手は譲るよ」


レオンがそう言った直後。


クレアが一歩、踏み出す。


詠唱はない。


魔法式の高速書き込みが、直接走る。


(……速い)


空間が歪み、光が収束する。

圧縮された魔力弾が、ほぼ不可視の速度で放たれた。


だが。


レオンは、避けなかった。


「――変換」


短い一言。


次の瞬間、魔法が“書き換えられた”。


飛来していたはずの魔力弾が、途中で形を失い、

無害な光の粒子へと分解されて霧散する。


「……え?」


誰かが、間の抜けた声を出した。


(今の……無効化じゃない)


ソラの目には、はっきり見えていた。


クレアの魔法式が、世界式に書き込まれた直後――

その構文自体が、別の内容に上書きされた。


(術式を……直接、書き換えてる?)


背中に、ぞくりとしたものが走る。


「なるほど、そうゆうこと」


クレアは楽しそうに笑った。


「それが、あなたの固有魔術式ね」


「ああ」


レオンは頷く。


「術式変換。

 世界式に書かれた魔法式を、別の式として再定義する」


周囲は、ほぼ理解できていない。


だが、ソラだけは分かってしまった。


(世界式への“書き込み結果”を、後から上書き……)


それは、人間の魔法としては――異常だ。


「欠点もあるけどね」


レオンは、少しだけ肩をすくめる。


「自分が認識できた魔法でのみ上書き可能だし、魔力消費は、通常の五倍くらい」


(五倍……!?)


普通なら、それだけで自滅しかねない。


だが。


(この魔力量で、それを言うか……)


レオンの魔力総量は、そもそも規格外だ。

五倍消費しても、まだまだ余裕がある。


クレアは一度、息を整える。


「じゃあ、次は防げないのを行くね」


「どこからでも」


次の瞬間。


訓練場全体に、複数の魔法式が同時に走った。


重力操作、2種級火属性、1種級風属性。


一つ一つが確実に丁寧に構築されている。


(……同時展開)


ユイが、思わず呟く。


「……レベル、違いすぎ」


レオンの表情が、わずかに引き締まる。


「変換、展開――」


だが、今度は完全には消せない。


世界式への書き込みが、重なりすぎている。


結果。


魔法同士がぶつかり合い、訓練場の中央で光が爆ぜた。


結界が大きく軋む。


「そこまで!!」


教官の声が響き、強制終了。


光が収まる。


二人は、少し荒い息をつきながら向かい合っていた。


勝敗は――つかない。


だが。


誰もが理解していた。


(……同じ“新入生”じゃない)


ソラは、無言で二人を見る。


(レオンは、上書きする側)


(クレアは、認められている側)


そして――


(俺は、読む側)


世界式を巡る三つの立場が、

この学園に、静かに揃い始めている。


クレアが、ふっと微笑って言った。


「ね、ソラ」


視線が、こちらに向く。


「学園生活、退屈しないでしょ?」


ソラは、ゆっくり息を吐いた。


「……ああ」


それだけは、間違いなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ