涼しくなったのに、ホラーコメディ書いてみた
※リハビリ作品
作中の法律関係や呪文、お祓い方法は作者の創作です
良い子は真似しないように
カーテンを閉めた部屋のふすまが開く。
姉ちゃんだ。
今日は出勤じゃないのか。
「またカーテン閉めて。せっかく日当たりのいい部屋を譲ったのに、勿体ない。」
「洗濯物は干してるだろ。この広さが気に入ってるんだ。今更交換しないからな。」
眉を下げた姉ちゃんが心配してるのを俺は知っている。けれどダメなんだよ。こればかりは。
「アンタ、まだソレ持ってるの?」
「姉ちゃんは?」
「あたしはフリマアプリで売ろうと思ったけど、胡散臭くなるからばあちゃんに返したわ。弟子の遺品だしね。」
そうか。そうだ。だからダメなんだ。
カーテンを開けちゃ。姉ちゃんにこの部屋を与えちゃ。俺がやられるのもダメだ。
だって、外には。この外にはアイツが。アイツらがいるんだから。
※ ※ ※
両親が病死した。
新居に引越した矢先の、突然の出来事だった。
高校生の俺は何も役に立たず、姉ちゃんが全部やってくれた。
けれど問題が1つあった。
家だ。
姉ちゃんや俺にローンは払えないので、そうぞくほうき?ってのをしたんだけど、不動産屋がかしがどうのって、引き取らないんだ。
両親が病死しただけなのに、かなりおかしい不動産屋の態度に、姉ちゃんが「そういえば新居と言っても中古住宅をリノベしたとかお父さんが言ってた」と思い出した。
更にやたらと近所の人に心配されつつ、思わせぶりな「立て続けにあんな事が続くなんて・・・」とか言われた事。
あとは多少薄暗い事くらいかな。
でもなぁ、一家揃って幽霊とか見えないし信じないからどうすっかとなった時、父方のばあちゃんが訪ねてきた。
かなり派手派手しい怪しいカッコで。
父ちゃんが隠したがってた訳だ。ばあちゃんは霊能者だった。線香をあげたばあちゃんはそれっぽく見えたが
「霊能者は見た目が大事なのさ。」
実は、ばあちゃんの能力はインチキだったのである。
「弟子は優秀なんだよ。人見知りで商売に向かないけど。」
そう言ったばあちゃんは俺達を心配していて、弟子に霊視させたらしい。そしたらこの家は悪霊が住んでいるという!それを聞いて
「なんだよ、先住民居たのかよ!そりゃ後からズカズカ不法侵入されりゃ悪霊も怒るわなって、関係あるかーい!固定資産税も払って無いくせに不法占拠してんじゃねーよ!」
と、姉ちゃんが怒ってた。
とにかく危険な悪霊と戦う為に、ばあちゃんの弟子と打合せしようと俺達は指定された胡散臭い喫茶店にいた。
というか、この時点で俺はおかしいと思わなければいけなかったのである。
予想に反して弟子は文学青年みたいだった。姉ちゃんの完全に好みである。
普通の人はココでモジモジするんだろうが、自称肉食系の姉ちゃんは逞しくなる。
「で、どうすりゃ良い。」
姉ちゃんの第一声である。普通、文学系には最も刺さらない態度である。
しかしこの文学青年、霊能者だからか真っ赤になってモジモジしている。性別が逆だ。
このままだと数時間経ってしまいそうだったので、なんとか宥めすかして文学青年に話を促すと
「霊は、性的な事を嫌います。悪霊も同じです。」
そう言って俯いた。
「あー、なんか聞いたことというか、ネットとかで言われてますよね。」
俺が返事すると文学青年がコクコクと頷いた。いちいち態度がカワイイ人である。そして、手柄を横取りされた姉ちゃんの視線が痛い。
「まず調べたんですけど、あの家の悪霊は両親を事故で亡くした事を知らずに帰りを待っている間に居直り強盗に殺されてしまった女性のようです。」
「ほぉ。で?」
「あの、同情とか。」
「こっちは両親殺されてるかもしれないんで、無いッスね。」
「あ、ハイ。すいません。どうしてもボクは霊よりの考えに」
「で、どうすんのかな。」
ヤベェ、姉ちゃんキレそう。副音声で、どうでもよって聞こえる。
「あのっ、霊を追い詰めます。」
「どうやって?」
あれ、この流れ、やっぱ俺達がやるの?本職じゃなくて?
「玄関を除いて、各部屋をその・・・裸で、セクシーに回って欲しいんです。なるべく」
「おう!やったろうじゃねーか!このセクシーなわがままボディ悪霊に見せつけてやんよ!」
「姉ちゃんのペチャパィ・・・痛っ!」
俺はゲンコツの痛みに苦しんだ。いつだって姉は理不尽な存在だ。
「それと・・・。」
「オン・キルキリバン・ウン・ハッタバッタ・リ・ソワカ」
さっきまでこちらの目を見ることも出来なかった文学青年がキリッと言った。神聖な響きのソレに俺達はつい唸る、が
「おん?」
「きり?」
姉弟揃って首を傾げると、文学青年は咳払いをした。恐らくというか、絶対に覚えられない!という空気を察したのだろう。
「あの、とりあえず神社などでお参りするような拍手をして、各部屋の柱か扉に御札を貼ってください。」
と、パン!と手を鳴らした。その後にもちろんキョロキョロして真っ赤になっていたが。
グッと姉ちゃんがサムズアップした。これなら俺達でも出来る!けど、なんで俺達がやんの???
「玄関まで来た悪霊をボクが封じます。」
あ、そういう事。御札渡して後はよろしくな引きこもりかと思ったわ。
こうして早速家に戻った俺は裸に剥かれた。靴下を残して。
姉ちゃん曰く、変態紳士の方が霊に効きそうとのこと。なんだかなぁ。
年頃の弟の裸見ても顔色一つ変えない姉ちゃんは家族思いだ。両親の死が悪霊のせいか分からないが、俺だけでも守りたいから全裸(靴下を除く)にしたんだろう。きっと、多分。
そして卑怯な姉ちゃんはスカート履いてペチャ、ゲフン。胸を放り出している。表現正しいのか分からんが妙に姿勢と気のせいか劇画調の顔になってるから、姿の割にカッコいい。
「行くわよ!」
「おう!」
悪霊退治、出陣じゃい!
まず、手を洗ってヤカタの塩をお互いにかける。ちょっとお高いヤカタの塩はやっぱ悪霊にも効くらしい。それと時代なのか、御札は貼って剥がせる両面テープが付いていた。神聖なのりとかじゃないんだ。
あと霊が見えない俺達の為に霊の見える数珠を装着。文学青年すげーな。楽しやがってとか思ってゴメン。
「おおおっ、いつもより更に薄暗い!!」
「これが禍々しいってやつかしらね!」
あは〜ん、うふ〜んと俺と姉ちゃんは恥を捨てて各部屋を回った。台所では包丁が飛んでくるアクシデントもあったが、姉ちゃんが叩き落としていた。俺は姉ちゃんに逆らうのはやめようと心に誓った。
トイレでは蓋から髪の毛がはみ出たが、構わず流した。なぜか詰まらなかった。
風呂では血しぶきが付いていたがこれもシャワーで流した。
二階に向かうとより暗くなる。もしかして犯行現場は二階なのか?
「一階の居間よ。」
姉ちゃんに心を読まれた。つうか、もう御札貼り済みじゃん!
なんかちょろっと手だの毛だの後ろ姿だの見かけたが俺は大して怖いと思わず、姉ちゃんに叩かれながら尻穴まで晒した。泣いた。
二階もすべて封印し、後は階段と玄関である。
俺達が階段を降りてると、お出ましだ!
顔を髪の毛で隠した血塗れの女性が浮いている!
どうでもいいけど、ホラーとか女性の霊が多いよね。あとなんで皆顔隠すのかね。顔出してると怖さ半減するから?
まぁそれはそれとして、俺はまた尻穴を見せつけた。相手はグラリとしたが、効果は少なめだ!
「任せろ!」
姉ちゃんが前に出た。そんな貧乳で大丈夫か?
案の定、女はビクともしない!
と、姉ちゃんがスカートに手をかけた。ま、まさか!
「御開帳!!!」
バサーッとスカートを捲った姉ちゃんのプリケツ越しに、女が玄関へ落ちていくのが見えた。
「今よ!」
『ピンポーン』
インターホンと共にゆっくりと玄関が開き、眩しい光の中に俺は見た。両親に抱き着く女性の姿を。
そしてがに股のままの姉ちゃんを見て固まる文学青年を。
「イヤン」
スカートを下ろした姉ちゃんは貧乳を隠すふりをして谷間を作っていた。
どんな方法か知らないが女性は封印されたので、文学青年が供養に向かうと言った。
彼女の両親が眠る寺で供養するという。
俺はご近所さんに見られないよう、早々に隠れて服を着た。
これで普通はめでたしめでたし、のはずなんだけど。
とにかくお祓いをした事実を不動産屋に叩きつけ、ついでに姉ちゃんは二人で住むためのマンションを安くさせた。
ベランダ側の一部屋は仕事で昼間家にいないという理由で俺の部屋になった。
姉ちゃんは窓のない部屋。
でもこれで良かったのかもしれない。
あの後、俺達はばあちゃんから文学青年が自損事故を起こし、封印も全て燃えたと聞いた。
炎が全てを浄化するだろうと。
でも違ったんだ。
文学青年は最後に見た御開帳と貧乳が忘れられず。悪霊を取り込んで、悪霊になっちまった。
俺は数珠も付けてないのに見ちまったんだ。部屋を除く、焼けただれ見る影もない文学青年を。
そしてそれに取り込まれ助けてと呟く女。
叫びは我慢した。
文学青年が姉ちゃんの名前を呼んだからだ。
コイツの狙いは姉ちゃんだ。俺は尻踊りで一時的に追い払った。
洗濯を干す時は数珠とヤカタの塩だ。
ジャングル通販でヤカタの塩を大量買いした時は姉ちゃんに小遣いを無駄にすんなと怒られたが構わない。
姉ちゃんを守るんだ。
今夜も俺は尻踊りをする。場合によっては穴も晒す。姉ちゃんを一人にしないために、俺の命のために
この後、姉弟の住むマンションの前にあるタワマンから、彼のセクシーダンスを目撃したスパダリ超霊能者があっという間に霊を祓ってくれます
タワマンに囲われるハメになる弟に、姉がなぜか尊さを感じていると、いつの間にかタワマン住人のゴリマッチョの胸筋(包容力)に絆され結婚します
成仏した二人はちゃっかり姉の子に生まれます
母が好きすぎる弟を蹴り倒しながら、元悪霊は幸せになるのでした
めでたしめでたし