9 東の国との戦争
戦争と言えるものではない。はっきり言えば虐殺だ。しかしマリエールには、この非道の国は絶滅させても構わないという気持ちもある。
9 東の国との戦争
東の国にしてみれば、傷の癒えない内に攻め込まれた。軍が機能しない。軍施設や軍事工場が集中的に狙われる。王城や領城が破壊される。食料倉庫や物資の倉庫が狙われる。店舗も狙われるので開店出来ない。飢えた住民が敵兵を襲うが殺されるだけだ。大勢で襲っても結果は同じだ。今回目立つのが牧羊民への襲撃だ。羊も馬も人も収納される。軍の即戦力と期待され、彼らの力があるから東の軍は強いと言われているのに彼らの内どれほど生き残っているか不明だ。私のように晴耕雨読の生活をしていると情報は少ない。国王は存命だろうか。国王が居なくては降伏も出来ない。それとも敵はこの国の国民の皆殺しを狙っているのだろうか。それはありえる。敵国はこの国に長年苦しめられてきた。土地が痩せて牧羊くらいしか出来ないこの国と、豊かな敵国では収穫量が違う。牧羊で鍛えた武力で奪うという図式が出来上がった。敵国にしてみればこの国の国民は皆殺しにした方が気が楽だろう。
しかしこの国にもこの国独自の伝統があり文化がある。今迄のような奪い奪われる関係ではなく、共存していく道もあるのではないか。敵国の指導者にもそう考えている人間もいるのではないか。
その時気配がした。敵国の兵か。美しい少女だ。敵国の兵は皆美しい少女だと聞く。同じ殺されるなら美少女に殺された方がいいか。
「あなたの考えが私に届きました。この国と我々の国が共存出来るなら試す気はあります。しかし国王の気配は無く、あなたがこの国を代表して戦争の敗北を認めるなら認めましょう。急いだ方がいいですよ。既に人口の9割以上が死に今も戦っているのですから。早く止めないと絶滅してしまいますよ。」
考えている時間はないらしい。
「判った。攻撃を止めてくれ。」
少女は何か呟いた。
「攻撃は止まりました。この国に50ヶ所ほど救済センターを設置します。あなたの申し出で攻撃は辞めましたが我が国に反抗的な人物は救済の対象になりませんので処分します。我々にはこの国の民が絶滅しても支障はありません。」
可愛い顔して残酷なことが言えるものだ。
「この国の本部が出来ました。そこでこの国のあり方を確認しましょう。私が納得出来ないあり方なら攻撃を再開します。」
恐ろしい少女だ。何者だろう。
「きみが軍の指揮を取っているのかい。」
少女は怪訝そうな顔をした。
「彼女達は私の心情をさっして、自分の判断で動きます。私は個人的にはこの国が嫌いです。だから私の意に添わない行動を見たら躊躇らわず処分するでしょう。私は取り敢えず積極的な攻撃を辞めるように頼んだだけですから。私は指揮は取っていません。彼女達は軍人ですから国王の命令には従いますが、それは国王として正しい命令だけです。後は私の心情を元に自主的に行動してます。私の分身体ですから。」
彼女が沢山いるということか。
「国王がこの国を攻撃することを決定したのだろうけど、きみも賛成したのだね。」
彼女は頷いた。
「私は国王に相談されました。東の国が私のパートナーである第1王子ではなく第2王子を国王にしろと言ってきたが何とか出来ないかと。だからやってみますと応えました。私は分身体を作ってお願いするだけですから。第2王子が国王になっても私にとっては関係ないことかも知れません。でもこの国の言いなりなる国の国民ではいたくありませんでした。」
少女らしい正義感だと思った。しかし兄も踏んではならない尾踏んでしまったものだ。
両国の共存を願う声をマリエールは耳にする。東の国の王弟殿下だ。マリエールは分身体の攻撃を一旦止めた。