4 学院に戻る
学院に戻った。王子は魔王討伐の件を吹聴して回る。
4 学院に戻る
数日振りに学院に戻った。私が聖女になったため以後の判定が取り辞めになったそうだ。臨時聖女は一人でかいいらしい。私は早く教室についたつもりだが、既に数人が話し込んでいる。その中心が王子だ。王子は昨日の話しを拡大解釈して更に誇張して話すのでわけの判らない話しになる。摩訶不思議なことが起こったことは判るがそれがどう魔王討伐に繋がるかが見えて来ない。語彙も説明のしかたも理路整然とした話し方も出来ないので理解されない。説明力不足だ。結局何を王子は話しているのかマリエールに聞いてくる学生がいる。学院でもトップのクラスだ。理解力も高い集団に対して理解不能な発言する王子の学習面の問題が露呈する。魔王を討伐したのだもう関わりたくない。
「つまり王子が魔王を討伐したと言う話しでしょう。」
今迄理解出来なかった学生達もことの重大さが判った。これまで愚鈍な第1王子より英明な第2王子を推す勢力が目立っていた。第1王子が魔王を討伐したことで第2王子を推すことが反逆になる可能性がある。第2王子を推してきた勢力も鞍替えするか中立化しないと命に関わる問題かも知れない。
ホームルーム時間だ。教師からも王子によって魔王が討伐されたことが報告された。このクラスの学生が判定されたのは昨日のことだ。判定されたその日に討伐など不可能だ。不可能を可能にする人物マリエールが関わっているなら判るが。
その日王子を称える声が絶えなかった。でも翌日以降は普通に戻った。中間試験も近づく。常に万全でいるマリエールは別にして大抵の学生は不安がある。年2期制取るこの学院でこのクラスだけは年2回大幅な変動がある。3年生まで続けてトップクラスに居るのは王子とマリエールくらいだ。王族の在籍するこのクラスにはメリットがある。食事は王族と同じ。寮もそうだ。このクラスしか入れない図書室や休憩室、休憩室では学生にはそこでしか食べられないお菓子や飲み物がある。持ち出し厳禁で4年前に発覚して退学処分になった男爵子息がいるそうだ。
マリエールは入学試験から今迄満点を取り続けている。万能言語のおかげもあるが、記憶力、理解力、思考力、注意深さが人並み外れている。転生者という事もあるし魔法の力もあるだろう。しかし人に幸せになって欲しいという思いが他人より大きい。前世の医療では限界があった。他国の支援に頼る国境なき医師団は何時も物質不足と隣合わせだ。危険地域に派遣されることが多い。しかし一番辛いのは言葉が通じない人達と接する時だ。理解して上げられない。私は割と外国語に強い方だ。10ヶ国くらいは会話可能だ。身振り手振りで通じることもある。しかしこの姉妹は何の反応も見せない。明らかに妹の方には疾病があるので問診を繰り返すが反応がない。触診に切り替える。あった。盲腸だ。しかし腹膜炎を起こしている可能性が大きい。何とか彼女達に納得させたい。このままでは死ぬ。でも治療すれば50%は助かる。手術をさせて欲しい。ボディランゲージも用いて彼女らの説得を心見た。見かねた国連の事務員さんは、彼女達は無駄ですよ。荒れた地に住む少数民族ですが。他地との交流も無く言葉を使わない文化を持っているそうだ。他には思いつかず日本語で話しかけた。通じた。懸命に話かける私。始めは喜んだが、話しを聞いて失望する。姉はたどたどしい日本語で話す。
「妹が危ないのは判っていました。妹が死んだら私も死ぬつもりで
した。可能性があるなら助けてください。」
手術は成功した。私と彼女達の間に笑顔が浮かぶようになった。そこへ武装した連中が来た。近隣の街の野党だ。贖う手段を持たない集団への非道。矛先が彼女達に向いた時私は立ち塞がった。何人かは私が治療した顔だった。知らない顔の男の槍が私を貫いた。それがこの世界の最後だった。
いろいろあった前世の思い出。裏切られることは多いが私は人のために働きたい。