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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

少しの事実を混ぜて、怪談は生まれる

作者: 若元彌々

 どこの学校でもあると言うか。

 誰も本当のことは知らないし、証拠も証言も発信者も不明な怪談話なんてものはありふれている。


 音楽室や体育準備室、放送室、美術室etc.

 普段は立ち入ることの出来ない場所が定番スポットで、大抵は自殺者がセット。


 フィクションならオカルト好きな奴が幽霊探しを始め、主人公が巻き込まれると本物に出会う―――あるいは全く別の事件に遭遇し、非日常へ――


 そんな定番ネタが使い古されているが、現実なんてものは当然の如く夢がない。


 昼食ついでの馬鹿話。

 ゲームやアニメ感想。テストの話題。時事ネタ。教師のウワサ等々。


 語るに語り、天気の話を持ち出す寸前になるまで取り上げられないのが現実だ。


 片手に世界を持ち歩ける情報社会において、オカルトなんて存在はサンタクロースと同等に成り下がった。


 むしろ恐怖の代わりに夢を配る分。サンタクロースの方が、余程市民権を得ているかも知れない。








 まあそんな訳で、くだらない話と反比例するのが体力と行動力を有り余らせる学生って身分でして…


「なんでワザワザ放課後まで残って幽霊探しなんだよ」


 呆れながら友人に問うと、ばつが悪そうにカメラを向ける。


「仕方ないでしょ。今月号の記事が真っ白なんだから。ここらで一山当てないとと解散の危機なのよ」


「お前がアニメに影響されて作った新聞部なんざ、潰した方が世のためだろ。なんだよ"校内に蔓延る売春"って」


 あれのせいで危うく停学になり掛けたんだぞ。ちくせう(泣)名義貸さなきゃよかった。


「いや、あれは本当にスクープだったの!情報源言えないけど、当事者リークの確かな話を集めて折角100部も刷ったのに」


「んな不祥事、学校側が揉み消すに決まってんだろ」


「だからこそのジャーナリズムじゃない♪まあ、流石にすぐに回収されちゃたけど…」


 けど?

 なんだよ、怖ぇよ。


「取材内容とか証拠写真とか…とにかく一切合切。手に入れた情報を教育委員会とPTA会長に送ったから今頃、上から下まで阿鼻叫喚で大騒ぎになってるわよ」


「何してんの!ホント何してくれてんの!!」


 100%俺巻き込まれるじゃん。

 関係ない関係者で退学じゃん。

 退学なくても内申死ぬじゃん。


「大丈夫よ。情報提供者を晒すほど委員会も馬鹿じゃないだろうし、知らぬ存ぜぬで押し通せば私達は吊るされないわ」


 ――まあ、いざとなったら週刊誌と新聞社に情報を送るだけだし。


「俺、絶対にお前とだけは敵対しないわ。ペンは剣より強しってレベルじゃねぇ。なんでデスノートに書き込んでんだよ」


「当★然☆何のために大衆がいると思ってるのよ。原始からの鉄則、囲んで殴れば敵はしぬ★」


「オレ、オマエ、キライ」


「私は貴方が好きよ♪これが終わればキャンディあげちゃう♪」


「そらどうも。ついでに退部の用紙をくれ」







 そんなこんな?

 どんなこんな?


 とりあえず日常会話[要出典]をしている内に到着したるは、これまたアニメでしか存在しないだろう木造の旧校舎。


 御多分に漏れず、本校オカルト話の最大手な建物。当然、大量の与太話があるが、


 焼けて再建した時に骨が見つかった

 放置されたピアノが夜に鳴る

 不気味な叫び声が聞こえる

 半透明の人影が徘徊

 その他色々


 とりあえず一般的な怪談が大抵起きているという皮肉から、77不思議なんて呼ばれ面白がった学生による夏休みの肝試しスポットに提供されたりもしてる。


 なお、毎年肝試し前にどこからか拾ってきたガラクタが持ち込まれ、新たな怪談が生まれるのは公然のヒミツである。


「で?適当に幽霊検証でもして、記事にするのか?」


「そんな下らない記事なんて、誰が読むのよ。幽霊はオマケ、本命は防空壕」


「またどっかの誰が広めた与太話か?」


「これは本当。当時の新聞に実際に避難して無事だったみたいな体験談が載ってたし、市の設計図によれば地下保存庫があったらしいからそれの転用でしょ」


「で?」


 どうせそんな温い取材じゃない。

 その程度なら、この女は1人で突撃する。


「売春取材の中に気になる話があってね。その子校内で拉致されて無理矢理だったんだけど、目隠しされて連れた行かれた先がコンクリートむき出し湿気た部屋なのよ」


「待て、話がとんだぞ。拉致?校内で?」


「そっ。多分教師の誰かなんだけどフルフェイスで顔は分からなかったみたいだし、そんな状態じゃ警察にも言えないって相談されてね」


 おい、まさかコイツが書いた記事って。


「木を隠すなら森の中♪あれだけ一度にぶちまけちゃえば彼女のことは目立たないわ。将来のこともあるしね。ただ問題が1つ」


「確たる証拠がないと逃げられる可能性か。放置された工場現場とか廃墟なんじゃ?」


「それが徒歩10分くらいで運ばれたみたいでね。一応、校内はくまなく調べたけど、その子の話じゃ私物が散乱してたみたいだしね」


「拠点化してるなら校内はないな。かといって野外倉庫は全部使用してるし、……それでか」


 最初に見上げた時よりも不気味に感じる建物は、なるほど嫌なほどに条件を満たしていた。


「分かったかしら?週一程度の持ち回りでの見廻りによって、生徒は近付かない。かといって教師は気にしない。定期的なイベントに使われるから掃除や物の移動も問題ない」


「そして出入りや私物を見られても"イベントで~"で、しらを切れるし、万が一の悲鳴が聞こえても怪談で終わりか……」


「そう言うこと。ただ、流石に私室扱いは咎められるし、隠れるに越したことはない。良くも言えば防音も欲しいって、そこまで考える内に防空壕にたどり着いたって訳」


「なら、後は場所さえ見つければ」


「追加でばらまく情報に混ぜる。警察に調べてもらえれば指紋くらいは見つかるハズだし、見つからないことを前提にしてればゴムに入った体液もそのまま放置かも?」


 なるほど、それはいい。

 シンプルな方が分かりやすい。


「よっしゃあ!気合い入って来た!ととっと白昼にさらして天罰を与えてやろうぜ!」


「ええ!弱い女を食い物にするなんて打ち首獄門。記者をなめんじゃないわよ!」





















 数十年後


 ねぇ知ってる?

 今はもうない旧校舎の話。


 それってあれでしょ、なんか色々やらかして事件になったやつ。

 管理体制とか教育倫理とか、全国で厳しくなったキッカケでしょ?


 そうそれ。

 実はね、そこで亡くなった男の子が今でも化けて出るんだって。


 なwんwでwよw

 建物もうないんでしょw


 それがね、最後の瞬間を一緒に居た子がカメラに撮っちゃったみたいで。

 今でもその場所でカメラを構えると見えるんだって。


 でも今更、心霊写真って珍しくもないし。


 ここからが面白いんだけど、構える人の性別で幽霊の対応が違うの。


 マジで?


 そう!女の子だと「逃げろ!」って叫ぶだけなんだけど、男の子だと襲い掛かって来るんだって!


 ヘェー変わった幽霊もいるんだね。なら男子も連れてやってみない?一斉にやるとどんな反応するか気になるし♪


 いいね!じゃあ、放課後にやろ!





 20XX年

 未成年に対する暴行容疑のあった教師◯◯容疑者は監禁部屋の後始末をしている所。当時、同学校生徒だった男女二人に目撃される。

 女子生徒は庇われたことで無傷で逃げられたものの、男子生徒は腹部に刺傷。そのまま容疑者を押さえ込み時間を稼ぐも致命傷のため、救急車の到着を待たずに死亡。

 難を逃れた女子生徒の通報により、◯◯:◯◯に容疑者逮捕。

 事件後、女子生徒による告発と現場に残されたDNAにより◯◯容疑者の事件が判明。同時に女子生徒による情報提供により、学校内でも風紀悪化や管理体制の劣化が露呈。生徒教師併せて数十名に指導、厳罰が下される大事件へと発展した。

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