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第4話 あのユーリー先輩にいきなり告白とは、やるねー

 教師のようにわかりやすく説明するエマをブレアがサポートしたり実演したりする形で、授業は滞りなく進んだ。

 隙あらばブレアにアピールしようとするルークだったが、その度に冷たくあしらわれてしまった。

 もう慣れてきたらしいクラスメイト達がその度に笑ってくれたからよかったが、振られ芸として定着しかけているのは納得できない。


 授業が終わってすぐに布団の中に入ろうとするブレアに話しかけたが、「煩い。」と言って布団に篭ってしまった。


(どうすれば先輩と仲良くできるんだ?)


 授業後のSHRも終わり、クラスメイト達が続々と教室を出ていくが、ルークは自分の席に座ったままそんなことを考えている。

 うんうんと唸っているルークの肩を何者かがぽんと叩いた。


「あのユーリー先輩にいきなり告白とは、やるねールークくん。」


 ニヤニヤと笑いながら言うのは、恐らくクラスメイトであろう男子生徒だ。

 黒に近い茶髪とペリドットのような緑色の瞳。フレームの細い眼鏡をかけている。

 誰?とルークが首を傾げると男子生徒は「あれ、覚えてもらえてない?隣の席なのに。」と少し残念そうに笑った。


「結構面白い自己紹介したつもりだったんだけどなぁ。ヘンリー・ラングトリーっていうんだ。趣味と特技は料理!変わってるってよく言われっけど、仲良くしてほしいな。よろしく!」


「よろしく。俺はルーク……って、覚えてくれてたよな。ありがと!」


 ごめん寝てた。とは言えずにヘンリーの存在を頭に叩き込む。


「そりゃあクラスメイトの名前を覚えるなんて当然だよ〜って言いたいとこだけど、流石に全員はまだ覚えてないよ?あれだけ目立ったんだからルークくんのことはみんな覚えてると思うな。」


「そんなに目立ってた!?俺、なんか変なことしたか?」


 今日のことを思い出しているのか笑いながら言うヘンリーに、ルークは驚きつつも不安そうに聞く。

 その反応は予想外だったようで、ヘンリーは「変も何も……?」と少し戸惑っている。


「だって授業中に初対面の人に告白する奴なんていないから。しかも相手はユーリー先輩って……ね?」


「駄目だった?だって美人で可愛くて綺麗で、『この人しかいない!』って思ったんだぜ?もう告白するしかないだろ。」


「駄目じゃあないけど……オレの兄貴3年生なんだけどさ、ユーリー先輩はやばいらしいよ。」


「やばい?何が?」


 ヘンリーはルークに顔を近づけるように手招きで指示する。

 従って少し顔を近づけると、内緒話のように声を顰めた。


「勿論競争率もやばいでしょ?他にも色々……絶対誰とも付き合わないだとか、性別不詳だとか?」


「競争率やばくて当然だろ!可愛いんだもん。それより性別不詳ってどう言うことだ?完全に女性に見えたけどなー。あんなに華奢で美人な男いないだろ。」


 折角ヘンリーが小声で話したのに、ルークは普通に大きな声を出す。

 ヘンリーは「別に聞かれて困る話でもないかー。」と笑ってルークから顔を遠ざけた。


「それがただモテるだけじゃなくて、老若男女問わずから告られるらしいんだよね。だからかわかんないけど性別不詳だって言われてるらしい。」


 ヘンリーが言うとルークはショックを受けたのか固まってしまう。

 流石に言いすぎただろうか。と不安になってきたヘンリーがフォローしようとすると、ルークは突然机を拳で叩いた。


「先輩の魅力は性別の壁を越えるってことか!流石すぎる!!」


「うん……そうだね。」


 キラキラと目を輝かせて言うルークにヘンリーは若干引いているが、ルークは気がついていないようだ。

 競争率が高いことを不安がるか、あるいは性別不詳という言葉に警戒するかと思っていたが、ルークは想像以上にポジティブだった。


「それよりヘンリーの兄さんって、先輩と仲良かったりしない!?」


 もし仲が良かったらブレアとの仲介をしてくれないだろうか?と小さな期待のこもった眼差しを向ける。

 ヘンリーは申し訳なさそうに首を横に振った。


「仲良かったら噂話なんてしないでしょ。ユーリー先輩、いつも1人でいるらしいよ。一匹狼ってやつ?」


 がっかりされるかな。とヘンリーは思っていたが、ルークは特に落ち込んだ様子もない。


「1人なら廊下であった時に声かけやすいな……先輩、次はいつ会えるんだろう。」


 うっとりとブレアに思いを馳せるルークに、ヘンリーはあからさますぎる愛想笑いで「普通に来週の授業じゃない?」と返す。


「え、そうなの!?来週も先輩の授業あるんだ!?」


「リアム先生が毎週あるって言ってたよね。もしかして聞いてなかった?」


 ルークはあははと適当に笑って誤魔化している。図星だ。

 だがブレアに毎週会えることがわかったのは素直に嬉しい。

 教師の話はちゃんと聞くべきだと改めて実感した。


「ごめん、眠くて聞いてなかったんだ。」


「あはは。ちゃんと聞かないとだよ?……って、ああ!兄貴待たせてるんだった!やばい怒られちゃう!」


 何気なく時計を見たヘンリーが慌てたように席を立つ。

 机の足につまづきかけながらドアまで走って行ったヘンリーは突然くるりと振り返った。


「ごめんオレ帰るね!また明日も絡んでいい?」


「うん!ありがとう。また明日!」


 ルークが大きく手を振ると、ヘンリーは嬉しそうに笑いながら教室を走ってでていった。

 俺も帰ろうかな。とルークも席を立つ。


 何も解決していないが、ルークの心は晴れやかになっていた。

 来週の授業が楽しみで仕方ない。


 (来週はちゃんと寝て、一回も瞬きせずブレア先輩の授業を受けるんだ……!)


 ほとんど不可能であろう誓いを立てて、ルークは意気揚々と帰路についた。

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