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【第4章完結】学校1の天才美少女な先輩に即告白・即失恋!だけど諦めきれません!  作者: 天井 萌花
第5章 先輩の悩み事編

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第183話 ちょっとゆりゆり借りてくねぇ?

 ブレアが嫌がることは絶対にしない、だの。

 普段からブレアにはなるべく触らないようにしている、だの。

 アリサのちょっとした冗談に、ルークはあれこれと否定を続ける。


「……ルークくん、そんなに言わなくても、リサもわかってるから大丈夫よ。」


「そうですか……?って、エマ先輩は楽しそうですね!」


 ふっと息を吐いたルークが、今度はエマの方を向く。

 アリサとルークが話している間、ブレアと何やらひそひそと話していたのだ。


「楽しいわよ。ブレアってば可愛すぎるもの~!」


 にこにこと笑って答えるエマは、言葉の通り本当に楽しそうだ。

 やはり子供の相手をするのがかなり好きなのだろう。


「ありがと。」


「やーん可愛い!昔は髪短かったのねー。あ、じゃなくて今男の子?お目々くりくりで女の子みたーい!」


 エマはきゃっきゃとはしゃいでいるが、ブレアも特に困ってはいなさそうだ。

 こういう時、普段なら大抵困った顔をしているのに。


「ほんとだ、ゆりゆり目ぱっちりじゃーん!いっつも目つき悪いのにねぇ。」


 ルークの相手が面倒になったのか、アリサも興味津々、といったようにブレアを見る。

 ルークまで目を向けたからか、ブレアは少し眉を下げた。


「えと……あんまり見られると、緊張する……。」


「すみません、目潰してきます。」


「早まらないで!?」


 本気なのか冗談なのかはわからないが、ルークはどこかへ走っていきそうな勢いだ。

 アリサが強く腕を掴むと、ルークはその場に崩れ落ちた。


「先輩……何でこんなに可愛いんでしょうね……。」


「本当にねー!こんな弟ほしくなっちゃう!」


 エマが髪を撫でたり頬に触れたりすると、ブレアは嬉しそうに目を細めた。

 普段なら触ったら怒るのに、この頃はよかったのだろうか。


「ブレア、私はエマ!よろしくね!」


「エマ、よろしく!」


「きゃあぁぁ、可愛い大好き!」


 まさか本当に呼んで貰えるとは思っておらず、感激したエマはぎゅっとブレアを抱きしめた。

 流石に嫌がられるかと思ったが、ブレアは少し照れたように笑った。


「えへへ、僕もエマ好きだよ!」


「やだ照れちゃうー!」


 ぎゅううっとエマが腕に力を込めると、ブレアは「ちょっと苦しい。」なんて言いつつも笑ってる。


「エマ先輩……軽々と俺超えるじゃないですか!俺より好かれません!?」


「エマち、小さい子の相手上手だもんねぇ。」


 勝手に悔しがってるルークを見て、アリサは楽しそうに笑っている。

 アリサ的には、ブレアに絡むよりルークを見ている方が面白いようだ。


「俺だって自身ありますよ、近所の子とよく遊んでましたし!先輩、エマ先輩と俺、どっちが好きなんですか!」


 ばっと顔を上げたルークに、アリサはげっと顔を歪める。


「うわぁ、面倒くさーい。やめてあげなよ、そんなんだから好かれないんだって。」


「好かれてはいますが!?」


 小さな子相手に、何をむきになっているのか。

 ブレアからしてもルークは真剣に見えるようで、ブレアはうーんと考え込んだ。


「……どっちも好きだよ?」


「可愛いけどそうじゃないんですよー!!」


 ルークが悲しそうにするからか、ブレアは困ったように眉を下げてしまった。

 ブレアの1番になりたいのはわかるが、困らせては意味がないだろう。


「じゃーあ、ゆりゆりが1番好きな人は誰なの?」


「ゆりゆりって僕のこと?」


 アリサが横からちょんちょん、と頬を突くと、ブレアはこてんと首を傾げる。

 ルークが気軽に先輩に触れてズルい、などと思っていそうな目を向けてくるが見なかったことにしよう。


「そうだよぉ、いる?1番好きな人。」


「お母さん!」


 アリサが優しく問いかけると、ブレアは殆ど考えもせずに即答する。

 子供らしい答えにアリサはくすっと笑った。


「えー可愛いぃ。そんなにお母さん好きなの?」


「あ、リサせんぱ――」


「うん!大好きだよ!」


 母親の話はするなと言われているのに、止める間もなく話が進んでいく。


「なんでぇ?」


「僕のこと好きだから。それに優しくてあったかくて、ずっと一緒にいてくれるの。」


「いいお母さんね。」


 エマが優しく笑って言うと、ブレアは嬉しそうにこくりと頷いた。

 小さくなってしまったブレアは殆どずっと楽しそうに笑っているが――母親の話をしている時は、一層嬉しそうに見える。


「お母さんもブレアがこんなにいい子で嬉しいでしょうねー!ルークくん、残念だけどブレアは諦めるしかなさそうね。」


「大丈夫です。先輩が18になる直前くらいには俺と付き合ってるので……!」


 ぎゅっと唇を引き結んだルークは、あまり大丈夫ではなさそうだ。

 ブレアがそう簡単に靡くわけがないとわかっているが、やっぱり振られるのは悲しいらしい。


「ルーくん、そんな顔してたら可愛いゆりゆりが心配するよぉー?」


「はい、すみません。」


 アリサに指摘され、ルークはぱっと顔を手で覆った。

 急な動きにブレアが驚いていることには気づいていないようだ。


「ブレア、今からは忙しいの?予定なかったら一緒に遊びたいなー!」


「……僕、魔法見せてほしい!」


「いいわよ、いくらでも!」


 エマが快く了承すると、ブレアはわかりやすく顔を輝かせる。

 確かにエマはルークより魔法が上手いし、ブレアも喜ぶかもしれない。


「でも、エマ達は楽しくないんじゃない?」


「いいよー、リサおねーさんだし。でもゆりゆりがいいなら、ウチらがしたい遊びもしてほしーかもぉ。」


 ふふん。と胸を張ったアリサだが、にやりと笑ってお姉さんらしからぬ言葉を続ける。

 普段のブレアなら、何かよからぬことを考えているんじゃないか、なんて思いそうなところだが――。


「うん、いいよ!」


「やったぁー!」


 純粋無垢で可愛らしいブレアは、素直に頷いた。

 嬉しそうに笑ったアリサがひょいとブレアを抱きかかえる。

 小柄なアリサは少々非力そうな印象があったが、軽々と持ち上げてしまった。


「ってわけでルーくん、ちょっとゆりゆり借りてくねぇ?」


「えぇぇ、先輩が他の人に見られたら大変で――」


「だいじょーぶ!遊び終わったらルーくんの部屋送ってくし、おねーさんに任して。」


 全然任せられないのだが、アリサはエマを引っ張るように連れて行こうする。

 アリサのしたいことを察したのか、エマも「そうねぇー」なんてにこにこと笑っているようだ。


「え、どこ行くんですか?俺も一緒に――」


「ざーんねん、女子寮は男子立ち入り禁止でーす!」


 ちらりと舌を見せて言ったアリサは、ブレアを抱っこしたまま駆けて行ってしまった。

 エマもごめんね、なんて一言謝ってから、アリサを追いかけて行く。


「……え……俺は一体どうすれば……?」


 1人取りのこされたルークは、ぽかんとしたまま呟きを漏らす。

 色々と不安しかないのだが、大丈夫だろうか……。

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