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【第4章完結】学校1の天才美少女な先輩に即告白・即失恋!だけど諦めきれません!  作者: 天井 萌花
第4章 先輩が好きな人

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第141話 君――今時間ある?

 ブレアが行きたいと言った建物は、図書館だった。

 中々大きめの施設で、背の高い本棚がいくつも並んでいる。


「わざわざ修学旅行で図書館って……お前らしいな。」


「嫌なら断ってよ。」


 本の量に圧倒されたアーロンとは対照的に、ブレアは迷いなく進んでいく。

 どうせ魔法関連のコーナーに行くのだろう。

 予想が付きすぎて笑えてくる。


「嫌ではねぇが、そこまで面白ぇモンなくね?」


「ここだと商業系の本が多いだろうけど、魔法の本だって0じゃないから。ここは国境寄りだし、隣国との交易も盛んだから、見たことない本があるかも。」


 棚横の表示を見ながら、目当ての場所に辿り着く。

 壁一面に分厚い魔導書や本が並んでいて、アーロンからすれば、あまり見る気は起きない。


「ほら、異国の本が結構あるよ。言葉が違う。」


「うわぁ、微妙に読めねぇな。」


 アーロンは適当に取った1冊に目を通して、怪訝そうに眉を寄せた。

 恐らく隣国の言葉なのだろう。

 文字自体は似ているようだが、微妙に違っていて全然わからない。


「んで、どうだ?いいのあったか?」


 諦めて本を棚に戻したアーロンは、ブレアの方に目を向ける。

 ざっと背表紙を眺めたブレアは、迷うようにゆっくりと指を差した。


「例えば……あれとか。」


 ブレアが指を差したのは、かなり高いところにある魔導書だった。

 アーロンならギリギリ届くが、ブレアでは届かないだろう。


「違いがわかんねぇな……。」


 取ってあげようと手を伸ばすと、その手を押さえられる。

 白い、けれどもアーロンより少し小さいくらいの骨張った手だった。


「自分で取れるよ。」


 ブレアは少し背伸びをして本を取ると、少し得意気に胸を張った。

 かなり見下ろしていたのに、目線の高さがあまり変わらなくなっている。


「……しょうもないことで性別切り替えんな。」


「いいでしょ別に。」


 ブレアはアーロンから手を離して、短くなった髪を耳に掛ける。

 そのままパラパラと本を捲って読み始めた。


「読めてんの?」


 男体になっても、白い肌や長い睫毛は変わらず、整った容姿をしている。

 やっぱりイケメンでムカつくな、等と思いながら聞いてみた。


「うん。近隣国の言葉は、大体わかるよ。」


 真剣な顔で内容を流し読みしながら、ブレアはなんてことのないように答える。


「スゲーな……。」


「子供の時に習わされたの。みんなわかるんだと思ってた。」


 さらりと言うブレアだが、普通そんなもの習わない。

 普通に生きていたら、他言語を使うことなどまずないだろう。


「学校でか?」


「ううん。僕学校行ってなかったから。」


 通ってなかったからわからないが、初等学校の教育課程はどこも同じだと思う。

 対して実用性があるわけでもないのに、わざわざ習ったりはしないだろう。


「習い事?カテキョ的な?お前でもできんだな……。」


「できなかったよ。だって興味ないんだもん。」


 アーロンの想像通り、全く駄目だった。

 魔法のことならいくらでも学べるのだが、言語は一切興味がない。


「そのわりには読めてんじゃん。」


過保護な兄(先生)に心配かけたくなかったから。途中からは頑張ってたの。」


 あの頃のリアムは、学校から帰ってくるなり、ちゃんとできたかと、心配そうに聞いてきた。

 ブレアを説得しながら、その日習ったことを代わりに教えてくれていた。


「へぇ、偉いな。」


「でしょ。頑張ってみれば、内容自体は簡単だったしね。」


 いざちゃんとやってみると、ブレアの頭ならすぐに理解できた。


『色々な言葉がわかると、他の国で使われている魔法もわかるかもしれませんよ。』


 ブレアをなんとかやる気にさせようと、リアムが優しく笑って言ったのをよく覚えている。

 半信半疑だったが、まさか本当だとは。


 暫く読んでいたブレアは、本を閉じて棚に戻す。

 すぐ近くから別の本を取り出し、また開いた。


「面白ぇの?」


「期待以上。というより、不思議かな。」


 アーロンはちらりと、ブレアの見ているページを覗き見た。

 言語もさることながら、内容も難しそうな雰囲気の論文だ。


「よくわかんねえな……どんな感じなの?」


「さっきの魔導書、内容的にはそんなに難しくないんだ。多分初級?……でも、僕にはさっぱりわからないんだ。」


「はぁ?」


 ブレアが全くわからない魔導書など、あるわけがないだろう。

 あったとすれば、それは初級ではないのではないか。

 アーロンが眉を寄せると、ブレアは小さく首を振った。


「そもそも従えないんだ。何か、根本的なものが違う気がする。聞いたことない固有名詞は……魔導具かな。」


「へぇ。お前でも知らないことあんだな。」


 感心したように言われ、ブレアは「当たり前でしょ。」と返す。

 魔法が好きで、人より得意なだけで、ブレアだってただの高校生だ。

 知らないことだっていくらでもある。


「なんだろうねこれ……。(マナ)の流れに影響がありそう。魔の媒介……?」


「――おおー。少年、賢いね。」


 横から声をかけられ、驚いたように肩が跳ねた。

 アーロンではない。女の人の声。

 ブレアはすぐに顔をあげて、声のした方を見る。


 いつの間にか、すぐ隣に女性が立っていた。


 大人っぽい印象の、アクアマリンのような水色の瞳。

 カールした赤い長髪を、後ろで1つに纏めている。

 タイトスカートのスーツを着ていて、大きく開いた胸元に眼鏡を引っ掛けている。


 ブレアの頭に浮かんだのは、背高いな、というどうでもいい感想だった。

 女の人なのに、男体時のブレアと殆ど目が合う。

 ヒールを履いているからだろうが、それ抜きでもかなり背が高そうだ。


 かなり美人な、大人っぽい雰囲気の人だった。


「何……?」


 戸惑ったブレアが聞くと、女性はブレアの首筋に手を触れた。

 動揺が魔力に表れたのか、アメシストの奥で光の粒子が揺らぐ。

 じっとブレアを見ていた女性は、一瞬驚いたように目を見開き――それから、満足そうにうなずいた。


「君――今時間ある?ちょっと話さない?」


 ブレアが目を丸くしているのを見て、女性は水色の目を細め、含みのある笑みを浮かべた。

さて、ここで137話のルークくんの心配事を思い出してください


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