表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/49

合流 2


 気持ちはとてもよくわかる。

 俺だって未だに自分が攻略対象中最低最悪のクソ野郎で、死亡率No. 1の高際(たかぎわ)義樹(よしき)とは信じたくない。

 夢であれ。夢であれよ。

 今でもそう思うよ。

 でも、暗闇に染まった空を映す窓ガラスに映るその姿は、高際(たかぎわ)義樹(よしき)そのもの。

 記憶も、高際(たかぎわ)義樹(よしき)として生きてきたものが簡単に思い出せる。

 だから生き延びるために、行動しなければ。

 ゲーム通りだとしても、ゲーム通りにならないために。

 この二人だって死亡エンドやゾンビ化はあるんだし。

 っていうか、無理にキャンプ場を脱出せず、このビルで一晩過ごすってのはどうだ?

 うん、ダメだな。

 この施設が組織のものだとして、外部に連絡を取れないまま水と食料のない環境で男女四人が立て篭って来るはずのない助けを待つ——。

 真っ先に脱水で死ぬ。


「状況もよくわからないし、無駄に動き回って体力を使うのはまずいと思う。スマホの電池も万が一の時のために無駄遣いしない方がいい。まずは交代で水と食料を探さないか? 二人はここで、他の生存者を待っていてくれ。俺が他の部屋を探してみるよ」


 よし、まずは救急箱を手に入れよう。

 ゲーム内だと救急箱一つしか発見できなかったけど、ゲーム開始前の今なら他にもなにか道具が見つけられるかもしれない。

 墨野(すみや)真嶋(ましま)は顔を見合わせて、「そうだな」とひとまずは納得してくれた。

 ……っていうか、ど素人の俺にこんな指示出させんなや現役消防士!

 お前本当に消防士か!?


「じゃあ行ってくるよ。一時間くらいで戻る。もしビルの周りにゾンビじゃない人間がいたら、よろしくな」

「あ、ああ、任されたぜ」

「気をつけて」


 調理室を出て、スマホの電源を一度落とす。

 窓から差し込む満月のおかげで、スマホの光源を使わずとも十分だ。

 スマホのバッテリーは節約しないといけない。

 なぜなら——


 高際(たかぎわ)義樹(よしき)死亡フラグその1!

 スマホをチラチラチラチラ見まくって、スマホの光に反応したゾンビに襲われゾンビ化または死亡!


 高際(たかぎわ)義樹(よしき)死亡フラグその2!

 スマホを使いすぎて真っ先に電池切れを起こして、助けを呼べずにゾンビに襲われゾンビ化または死亡!


 高際(たかぎわ)義樹(よしき)死亡フラグその3!

 ストーリーの中で「ゾンビに襲われたという証拠を残そう」という話になるが一人だけ電池切れになっていて白い目で見られしれっと見捨てられてゾンビに襲われゾンビ化または死亡!


 高際(たかぎわ)義樹(よしき)死亡フラグその4!

 最初に家族が襲われているのを興味本位で撮影したことがバレて白い目で見られしれっと見捨てられてゾンビに襲われゾンビ化または死亡!


 ハァーーーーー!

 自業自得がすぎるーーーー!

 ……あ、あの家族が襲われている動画、消しておこう。

 これでよし。

 さて、それじゃ救急箱取りに行くとするか。

 確か、救急箱は二階にある一般教室みたいなところにあるんだよな。

 ただ、二階は一般教室みたいなのが並んでるんで迷いやすい。

 階段を下りてとりあえず一つ一つ教室を探していくのだが、やっぱり気味が悪いな。

 教室と表現したが、部屋の構造以外はなにもない。

 机も椅子も黒板も。

 埃ばかりで教室の後ろのロッカーも空っぽ。

 一つ目も二つ目の教室もはずれ。

 三つ目、四つ目……一番端っこの五つ目の教室。


「あった!」


 ロッカーの中に一つだけ、埃を被った救急箱!

 中身を確認してみると、包帯とガーゼが入っている。

 うーん! ゲーム通りか!

 まあいい。

 目的のものは手に入れたし、戻るとするか。


「他のものはやっぱりなさそうだったな。これじゃ三階と一階もゲーム通りだろうな」


 はぁ。

 少しガッカリしつつ三階の調理室へと戻る。

 すると、そこには三人分の人影。

 ま、まさか。


「た、ただいま……」

「あ、戻ってきた」

「ほら、彼が探索に行ってくれた高際(たかぎわ)って人ですよ」


 声をかけると、黒いポニーテールのセーラー服の少女。

 いや、よく見るとセーラー服風の私服か。

 凛々しい顔立ちと小柄でほっそりとした体躯。

 長い髪を靡かせながら、振り返る。


「初めまして、鬼武(おにたけ)千代花(ちよか)と申します。高校生で、ソロキャンに来ていました」

「あ、ああ、今流行りだもんね、女子だけのソロキャン。俺もソロキャン……あ、俺は高際(たかぎわ)義樹(よしき)。よろしく……」

「はい、よろしくお願いします」


 ……揃っちまった。

 この黒髪の美少女が鬼武(おにたけ)千代花(ちよか)

「男前すぎる」「おっぱいのついたイケメン」「ちよちゃん無双」「どうしてちよちゃんと結婚できないんだ」「ちよちゃんが一番イケメンじゃねーか」と評されるほど竹を割ったような性格。

 クソ乙女ゲー『終わらない金曜日』通称『おわきん』のヒロイン。

 違法組織に目をつけられた、普通の女子高生。

 彼女に媚を売らなければ、俺たち三人は生き延びることができない!


「それで高際(たかぎわ)、なにか見つけたか?」

「あ、ああ、見つけられたのは救急箱だけだ。三階じゃなくて二階の部屋を一通り見てみたんで、三階と一階はまだだけど」

「そうか。なにもないよりはいいだろうな。よし、次はおれが三階を探してくるよ」

「わかった、頼む」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】

4g5a9fe526wsehtkgbrpk416aw51_vdb_c4_hs_3ekb.jpg
『転生大聖女の強くてニューゲーム ~私だけがレベルカンストしていたので、自由気ままな異世界旅を満喫します~』
詳しくはホームページへ。

ml4i5ot67d3mbxtk41qirpk5j5a_18lu_62_8w_15mn.jpg
『竜の聖女の刻印が現れたので、浮気性の殿下とは婚約破棄させていただきます!』発売中!
詳しくはホームページへ。

gjgmcpjmd12z7ignh8p1f541lwo0_f33_65_8w_12b0.jpg
8ld6cbz5da1l32s3kldlf1cjin4u_40g_65_8w_11p2.jpg
エンジェライト文庫様より電子書籍配信中!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ