表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/49

ラスボス戦

 

『認証確認』

『コード001、プロトタイプスーツ』

『出撃しますか?』

「しゅ、出撃?」

千代花(ちよか)ちゃん! 『はい』と答えて!」

「は、はい!」

 

 どっちかというと、機械音声ではなく俺に対して『はい』と言ってしまったように見える。

 だが、返事は返事。

 音声は『了解しました』と言って壁を二つに割っていく。

 自動で左右に移動していく壁にあんぐりと口を開けっぴろげにする真嶋(ましま)墨野(すみや)

 気持ちはわかるが、このビルがそもそも地面に生えたり沈んだりしていることをかんがえると、もうこの施設最初からやべーだろう。

 それに壁が左右に割れたところで、まだ外への扉が出現しただけだ。

 今度は十角形の巨大な扉がガタガタ音を立てながらロックを解除させていく。

 ゲームの時は「三つ巴やゾンビが逃げないようにするにしても、ちょっと厳重すぎじゃねぇ?」とか思っていたが、ここでしていた研究を思うとこれでも足りないのだろう。

 だからここでラスボスが出てくる——!

 

『ビーーー! ビーーー! ビーーー!』

『出撃指令未承認を確認。着用者未登録。脱走者、または敵性と判断。排除を推奨します』

『エースタイプ、敵性存在を排除開始』

「っ」

 

 来た。

 扉の前の床が開き、下から出てきた千代花(ちよか)と同じ形、黒い色のパワードスーツ。

 今思えば“中”になにが入っていたのかはわからない。

 

『排除、執行開始』

「負けるわけにはいかない。私は、高際(たかぎわ)さんと……みんなとここを出る!」

 

 ラスボスバトルがついに始まった。

 俺の言ったことを理解している千代花(ちよか)は、一気に距離を詰めて武器を奪い取りにかかる。

 だが、敵も素早く距離を取りながらハンマーを振るう。

 その時、違和感を持った。

 距離を一定間隔以上詰めようとする時の避け方。

 千代花(ちよか)が攻撃を仕掛けた時の避ける角度。

 蹴りで応戦する時など、その戦う姿は——千代花(ちよか)そのもの。

 

「全然当たりませんよ……! 大丈夫なんでしょうかっ」

「な、なあ、千代花(ちよか)が負けたら、次は俺たちなんじゃないか? に、逃げた方が良くないか?」

墨野(すみや)が逃げたいのなら逃げてもいいけど、俺は残るぜ」

「僕も残りますけど」

「マジかよぉ」

 

 俺たちを共犯にしようとするんじゃないよ。

 本当にケツの穴の小さいマッチョだな。

 

「それよりも敵の戦い方、千代花(ちよか)ちゃんにそっくりだな」

「あ、そうか。既視感があったんですけど、それが理由だったんですね。同型機だからでしょうか?」

「同型機っつっても、なんかまるでコピーでもしたみたいじゃないか? ゲームでも思ったけど……」

 

 当時の俺のプレイヤースキルでも倒せたから、あまり深く考えたことはなかったが、実際目にしてみると違和感がすごい。

 千代花(ちよか)千代花(ちよか)と戦っているみたいなのだ。

 なんというか手の動き、足のはらい、身の捻り方、避け方、指先の動き一つ一つまで本人そのものであるかのようで——あ。

 

「そうか! ゲームの中で研究者たちが千代花(ちよか)を戦わせようとしてきたのは、このためか! 千代花(ちよか)の戦闘データを“アイツ”にダウンロードするため!」

「え! そ、それって、あのラスボスは千代花(ちよか)さんの戦い方を学習しているってことですか!? じゃあ、千代花(ちよか)さんは本当に自分自身と戦っているようなものじゃないですか!? ……ほ、本当に勝てるんですか!?」

「っ」

 

 そうか、千代花(ちよか)がパワードスーツのパーツを増やすごとに好戦的になっていったのも、データ収集のために戦わせるためか。

 気づくの遅ぇ〜、俺!

 だが、そうなると千代花(ちよか)が予想しない出来事にはラスボスも弱いはずだな。

 千代花(ちよか)が予想できない事態——。

 

「賭けだな」

高際(たかぎわ)さん? な、なんで剣を持つんですか?」

「あんまり近接はしたくないんだけど」

高際(たかぎわ)さん? ちょっと!?」

 

 先程から、一度も千代花(ちよか)は武器奪取の接近にすら成功していない。

 ここいらでテコ入れする必要がある。

 腹を括れ。

 千代花(ヒロイン)に媚びてこその『おわきん』だろう?

 ゾンビから奪った剣や斧は結構持ってきているし。

 問題は間合い。速度。

 

「——なら、斧かな」

高際(たかぎわ)さん!?」

真嶋(ましま)墨野(すみや)はここにいてくれ」

「た、高際(たかぎわ)さん、本当になにするんですか!?」

「注意を逸らすだけだ。大丈夫」

 

 斧を二本持ち、走り出す。

 二人を巻き込まないように距離を取ってから、千代花(ちよか)が反対側にいる瞬間頷いてみせる。

 俺が“舞台”にいるのに、これで気づいただろう。

 左足を軸足に。右足をやや後ろに。右手の斧を大きく背中に振りかぶる。

 角度は斜め上へ。手首を目一杯後ろへ。

 からの——ぶん! 投げる!

 

「チッ、やはりセンサー付きか」

 

 せっかくぶん投げた斧が緩い円を描きながらラスボスに飛んでいくが、簡単にハンマーでへし折られた。

 けらど、その一瞬がほしかったのだ。

 攻撃を感知して俺を振り返ったラスボスだが、俺みたいな雑魚に構ってる暇、お前にはないだろう?

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】

4g5a9fe526wsehtkgbrpk416aw51_vdb_c4_hs_3ekb.jpg
『転生大聖女の強くてニューゲーム ~私だけがレベルカンストしていたので、自由気ままな異世界旅を満喫します~』
詳しくはホームページへ。

ml4i5ot67d3mbxtk41qirpk5j5a_18lu_62_8w_15mn.jpg
『竜の聖女の刻印が現れたので、浮気性の殿下とは婚約破棄させていただきます!』発売中!
詳しくはホームページへ。

gjgmcpjmd12z7ignh8p1f541lwo0_f33_65_8w_12b0.jpg
8ld6cbz5da1l32s3kldlf1cjin4u_40g_65_8w_11p2.jpg
エンジェライト文庫様より電子書籍配信中!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ