予定の話し合い 2
「よし、じゃあ午前中に食材探し。昼過ぎから駐車場側で俺のマネージャー待ちをやろう。墨野と真嶋には、その間駐車場から近いアスレチックエリアを探索してくれ」
「アスレチックエリアを? なんでそんなところ調べなきゃならないんだ?」
墨野の疑問はもっともなんだがこいつに質問されるの腹立つのはなんでだろうなぁ?
「隠れて生き延びている人が他にもいるかもしれないだろ? それと、俺たちが会ったあの玄関のないビル……あれはアスレチックエリアにあったものだと思う。玄関がない時点で、なにかしら俺たちが巻き込まれていることと関係あるんじゃないか、って思うんだ。ゾンビも多かったから、無理はしなくていいけど、改めてもう一度、明るい時間に調べておいた方がいいんじゃないかと思ってさ」
実際ゲーム内でもあのビルが、ラスボスステージへの『入り口』となっていた。
千代花の覚醒が早まっている以上、物語の核心へ関係する部分にも少し突っ込んで触れておくべきではないだろうか?
ゲーマーの勘がそう告げている。
千代花の精神を安定させるためにも、シナリオと関係ない新ルートで脱出ももちろん同時進行でチャレンジするけど。
「ゾ、ゾンビが中をうろうろしているんだぞ? 本気かよ?」
「交渉に使えるカードは多いほどいいだろ。自分たちの身を守るためだ」
「それはそうですけど……」
「だから無理はしなくていいって。でも絶対になにかあるだろ。玄関がないのに、最初から中にゾンビがいたんだからさ。あそこでゾンビの研究をしていて、そこから逃げたゾンビがキャンプ場でバイオハザードを起こしたのかもしれない。もしなにか手掛かりがあれば、俺と千代花ちゃんで改めて調べに行く。どうかな、千代花ちゃん」
勝手に巻き込んで申し訳ないが、千代花がいないと俺は死ぬので。
でも千代花にとっても自分の出自と向き合うきっかけになる。
適当な設定の多い『おわきん』だが、DLCに払ってない俺としては無課金で千代花がちゃんと幸せになるルートでクリアしたいんだ。
このクソゲーを無事に乗り越えられたら、俺は元の世界に戻れる……かもしれんし?
「はい、私もあのビルの中は気になっていました」
「待ってくれ、千代花がいなかったら、誰が俺を守ってくれるんだよ」
墨野〜〜〜〜。
いっそ清々しいクソ自己中野郎全開で草ァ!
「調べに行くのなら、四人で行った方がいいと思います」
お前もか真嶋。
俺の説明は聞いていだはずだよな、お前たち。
「だ、だからさ。俺と千代花ちゃんは駐車場でマネージャーを待ってなきゃいけなくてだな」
「もしかしたらそのまま外に出られるかもしれないだろ!」
「そうですよ! わざわざ危険なところを調べに行くなんて嫌です! しかも、僕たちは千代花さんみたいに戦えないんですよ!」
「お前たちだけで外に出ることになったら困るしな!」
「む、むう」
「そうだ、やってみましょう! 高際さん!」
「え?」
ここでまさかの千代花参戦。
な、なにが?
やってみるって、なにを?
「この新しく手に入れたレックパーツ、すごく高く跳べました。一人一人を担いで、フェンスをジャンプしたら外に出られるかもしれませんよ!」
「なるほど!」
確かに、ハーピーを叩き落とすほどのジャンプ力を誇る。
レックパーツを使えば俺たちを一人一人抱えて三回ジャンプして外へ運ぶこともできるかもしれない。
「でもマジでマネージャーがどんな車で来るのかわからないからな!」
「ぐうっ!」
「そ、そうでした……」
「うおおぉ……! そうだったぁ!」
どちらにしても全員同じ車で一気に脱出は不可能だと思え。
千代花の考えには賛成だけどな。
たとえキャンプ場から無事に脱出しても、待っているのはうちのマネージャーが迎えに来るまでの数時間——少なく見積もっても三時間をなにもない森に囲まれた駐車場で待つとてつもない不安な時間だぞ。
まあ、三時間でも安全なキャンプ場外で待つのはマシかもしれない。
でも俺の記憶だと、なんか無理だったんだよなぁ。
ゲームの中でフェンスに近づくと、パワードスーツが機能停止する仕様だったんだわ。
もし現実でも同じ仕様だとしたら、絶望では?
「でも、まあ、試してみるのはアリだな」
「そ、そうですよね!」
「うん、明日試してみよう。でもダメだった時は潔く諦めてうちのマネージャーに救助をお願いしよう」
「そ、そうですね」
千代花も簡単にいくとは思ってないんだろう。
そうそう。
あまり高望みはしない方がいい。
その方が精神的ダメージも低い。
助かる、という希望があまりにも眩しいのだ。
助からなかった時の絶望感が大きくなりすぎないためにも、ほどよくダメだった時のことを考えておくのは、精神衛生的に必要だ。
「お腹もいっぱいになったし、コテージに行くとするか」
「そうですね」
「くっそー……いつになったらこのヤベェ状況から助かるんだよ!」
「せっかくお腹いっぱいになったのに、先が遠く感じますね……はぁ」








