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最終話 変化することとしないこと

 次の日、僕は清水寺に訪れ、清水の舞台でカメラ片手に佇んでいた。もう二十分近く、カメラの構図を探すという目的を掲げ景色を堪能している。


 同時に頭には自然と沙織との思い出が蘇ってきて切ない気分になった。


 結局、今もCAREによる規制は解けていないし、解ける予定もない。もう、話題にも挙がっていないようでこの先ずっと解けないままだろう。


 高校の卒業式もお互い参加していたはずだが最後までどこにいるのか分かるわけもなく……。もしかすると目の前を通ったのかもしれない……。それすらも分からなかった。


 そして月日は流れ、あの日から五年半、僕は一度も沙織と会えていない。


 でも、思いは断ち切れるわけもなく……。あの一文のおかげで前に進む決意はできたが、あんな一文だけで足りるわけがない……もっと言いたいことがあって……。


 機会があれば清水寺に来ていた。もしかしたら沙織が夢をかなえて、会える機会があるかもしれないと……。同時に沙織にも何もできていないままで、罪滅ぼしというわけでもないが、せめてこれくらいしないといけない。そう思って。


 まぁ、自己満足なのかもしれない。


 そこから更に十数分時間を要し、ようやく自分の納得できる構図を見つけた僕はシャッターを切った。


 その時だった。隣に僕と同じくらいの年齢の女性が来て、カメラを構えた。そのかばんには見覚えがある人形が吊り下げられていた。


 その姿は高校の時の沙織の姿と被って……。


ドクンッ


 胸がぎゅぅっと締め付けられた。


 長らく味わってなかった感覚、思わず声が出そうになって……。腕が動いて……。


カシャッ


 だがそれは、女性のカメラからなったシャッター音で止まる。


カシャッ、カシャッ、カシャッ


 その後も女性はいろんな方向にカメラを向け、シャッターを切った。


 伸ばしかけた腕を引く。締め付けられた胸が一気に緩くなって、胸の内に残ったのは軽い疲労感と失望で……。


 そんな自分が馬鹿らしくなって……、息をフゥッと吐き頬を緩めた。


 その後も何度もシャッターを切る女性を傍目に僕は清水の舞台を後にした。


 そしてぽつりとつぶやく。


「嫌いだな……やっぱり」


 僕は軽やかな足取りで本殿を通り抜けた。





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